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月桂樹や山椒などに血圧を低下させる効果を究明

2001年3月19日

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県西那須野町)は、130種類の野菜類について評価を行なった結果、月桂樹や山椒、柿(葉)などの中に、血管を拡張する作用を示す物質が含まれていることを明らかにしました。血管を広げることができれば、血圧を下げることができます。すなわち、これらの植物の摂取により、血圧降下作用が期待できます。
本研究内容は、日本農芸化学会2001年度大会(3月24日~26日 立命館大学(京都))において発表いたしました。
研究のきっかけ
 高血圧症は、虚血性心疾患や脳卒中といった、多くの循環器系疾患の重要な危険因子です。平成10年度の国民栄養調査によると、高血圧症(最大血圧160 mmHg以上又は最低血圧95 mmHg以上)の者は、15歳以上の男性19.8%、女性14.5%にものぼります(図1)。21世紀の日本人の健康づくりのために策定された「健康日本21」においても、循環器の目標値として、平均最大血圧値を4.2 mmHg低下させることが挙げられています(表1)。
日本人の高血圧症の現状
図1.日本人の高血圧症の現状

血圧低下に寄与する生活習慣因子
表1.血圧低下に寄与する生活習慣因子
研究の目的
 食品中に含まれる、血圧低下作用を示す物質としては、これまでに、アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチドなどが報告されていますが、蛋白質を多量に含む動物性食品由来のものが多く、植物性食品の血圧低下作用はあまり判っていませんでした。そこで、血管拡張作用を指標として、血圧低下作用が期待できる食品を検索しました。
研究の内容
 研究には、130種類の植物性食品の熱水抽出物をサンプルとして用いました。血管の伸縮は、モルモットから摘出した大動脈標本で評価しました。あらかじめ、血管を収縮させる物質(フェニレフリン)によって血管をある程度収縮させておき、そこに食品由来のサンプルを処置し、収縮が解除されるかどうか、試験を行ないました。その結果、6種類の食品が血管を拡張させる作用を、14種類の食品が収縮させる作用を、2種類の食品が一過性の収縮の後、血管を拡張させる作用を示しました。
 血圧を下げる作用が期待できる血管拡張作用は、月桂樹,山椒,柿(葉)などにおいて認められました。特に作用が強かったのは、月桂樹,山椒でした(図2参照)。
期待される成果
 月桂樹、山椒などには、血管を広げる物質が含まれており、血圧を下げる可能性が明らかになりました。よって、これらを普段の食生活の中に取り入れることができれば、血圧を下げるのにプラスになると考えられます。
植物性食品熱水抽出物の血管拡張作用
図2.植物性食品熱水抽出物の血管拡張作用
図の説明
 血管拡張剤であるパパベリン(10-4M)による拡張作用を100%としたときの、種々の植物性食品熱水抽出物(1%)の作用を比較したところ、山椒や月桂樹からの抽出物が、非常に強い血管拡張作用を示しました。
血管拡張メカニズム
 血管を拡張させるメカニズムとしては、直接血管平滑筋に作用して、筋肉を弛緩させるものと、内皮細胞から内皮由来弛緩因子(EDRF:NO[一酸化窒素]やプロスタグランジンI2など)を放出させることによるものとに大別できます。
今回、強い血管拡張作用が認められた3種類の食品(山椒・月桂樹・柿)抽出物について、薬理学的な手法により、メカニズムの解明を試みました。その結果、これら3種類の抽出物が血管を拡張させるメカニズムは、いずれも血管内皮細胞からNOを放出させることによることが明らかになりました。
内皮細胞から放出されたNOは、平滑筋細胞の中の酵素(可溶性グアニル酸シクラーゼ)に結合して活性化し、細胞内cGMP濃度を上昇させ、カルシウムチャネルからの細胞外カルシウムの流入を抑制することで、血管を拡張することが知られています。
弛緩作用メカニズム
用語の説明
高血圧症:
 最大血圧(収縮期血圧)が160 mmHg以上、又は最低血圧(拡張期血圧)が95 mmHg以上のいずれか、または双方を満たす場合を指す。これに対して正常血圧は、最大血圧が140 mmHg未満かつ最低血圧が90 mmHg未満であり、両者の中間を境界域高血圧という。

内皮細胞:
 血管の内側に一層存在している細胞のことで、血流と直接接 触していることから、血液(またはそこに含まれる成分)からの刺激によって、血管の拡張や収縮、血液の凝固など、様々な作用に関与する。

内皮由来弛緩因子:
 内皮細胞から放出され、血管平滑筋を弛緩(拡張)させる作用を示す物質のことで、一酸化窒素(NO)が代表的な物質であるが、他にプロスタグランジン(PG)類(PGI2やPGE1)なども同様の作用を示す。