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妊婦のトマトジュース摂取による 臍帯血・母乳中のカロチノイド濃度上昇を解明-宮崎大学、カゴメの共同研究-

2001年5月2日

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県西那須野町)は、宮崎大学のカロチノイド研究班(富田純史助教授)との共同研究で、妊娠期におけるトマトジュースの継続摂取により、臍帯血・母乳において、カロチノイド(リコピンおよびβ-カロチン)濃度が高まることを解明いたしました。
本研究内容は、第55回日本栄養・食糧学会大会 (2001年5月6日~8日、国立京都国際会館)において発表いたしました。
研究のきっかけ
 私たちの身体は常に活性酸素に曝されており、カロチノイドなどの抗酸化物質はそれらの攻撃から組織を防御する機能を担っています。生まれる前の胎児は母親の胎内で外界からの様々な影響から守られていますが、出生と共に、呼吸により酸素を吸入し、紫外線を浴びることによって、活性酸素に暴露されることになります。また、新生児の免疫機能など生体防御機能の強化には母乳が重要な役割を担っていますが、特に初乳中には抗酸化物質であるカロチノイドが高濃度に含まれており、この役割を大きく担っていると考えられています。活性酸素による様々な障害から新生児を守るために、胎児への栄養を運ぶ臍帯血や母乳、特に初乳中に、より多くのカロチノイドが含まれていることが重要だと考えられます。
研究の目的
 これまでのカゴメの研究で、カロチノイドを豊富に含むトマトジュースの継続摂取によって血清中のリコピン、β-カロチンといったカロチノイドの濃度が顕著に上昇することを明らかにしています。また、血清中以外の体内の組織でもカロチノイドが顕著に蓄積されていることが考えられます。そこで今回、妊婦がトマトジュースを摂取することで、臍帯血や母乳中のカロチノイド濃度にどのように変化するのかを明らかにすべく、宮崎大学のカロチノイド研究班と共同で研究を行ないました。
研究の内容
 本研究に対して協力の同意が得られた妊婦160名のうち、60名の方々にトマトジュースを摂取して頂き(残りの100名は非摂取群としてご参加頂きました)、臍帯血・母乳中へのカロチノイドの移行を調べました。妊娠32~34週よりトマトジュースを毎日1缶あるいは2缶摂取して頂き、分娩前と分娩日に母体血、分娩時に臍帯血、分娩後2、5、15、30日目に母体血と母乳をそれぞれ採取し、それらのカロチノイド濃度を測定しました。
 その結果、個人差もありますが、母体血のみならず、臍帯血と母乳中のリコピン、β-カロチン濃度が、トマトジュースを摂取しなかった妊婦と比較して高くなることが明らかとなりました。
 以上のことから、妊娠後期のトマトジュースの連続飲用が、胎児や新生児により多くのカロチノイドを移行させることに効果的である可能性が示されました。今回の学会発表では、被験者多数のため解析がすべて終わっておらず、現時点での中間報告を行ないます。今後、摂取本数による違いなど、さらに詳しい解析を進めます。
母体血中のリコピン濃度臍帯血中のリコピン濃度
図の説明
 図.トマトジュースを飲んでいない群(非摂取群)の濃度を1とした場合の、トマトジュース摂取群の母体血(分娩後2日目)および臍帯血(分娩時)のリコピン濃度を示しています。このように、トマトジュースを妊娠期間中に摂取することで、母体血中だけでなく、臍帯血中のリコピン濃度も上昇することが判りました(母乳につきましては、現在詳しく解析中です)。
期待される成果
 今回の結果から、妊婦がトマトジュースを継続的に摂取し、より多くのカロチノイドを新生児に与えることで、新生児の活性酸素の悪影響に対する生体防御機能が高まることが期待できます。一方、妊婦の野菜摂取不足などによっては、臍帯血や母乳中のカロチノイド濃度が低下することが懸念されます。
富田助教授のコメント
 疫学的研究並びに実験的研究から、緑黄色野菜の摂取が生活習慣病のみならず、老化、白内障や痴呆などを抑制遅延することが示されて来ている。このことから、厚生労働省の「健康日本21」では成人一日の野菜摂取目標値として350グラムが推奨されている。食生活の多様化もあり、お母様方には緑黄色野菜の摂取において十分な量と質を確保することが困難な場合もあると懸念されるが、今回の結果は、お母様の食生活の内容を具体的に変えることによって、お母様はもちろん、赤ちゃんの健康にも好ましい影響を与える可能性を示したものと考える。
用語の説明
カロチノイド
 主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素で、β-カロチンなど、ヒトの体内でビタミンAに変換されるものもある。ニンジンにはβ-カロチン(橙色)、トマトにはリコピン(赤色)、赤ピーマンにはカプサンチン(赤色)が特徴的に含まれる。最近は、抗酸化作用による疾病予防作用が注目されている。

臍帯血
 臍帯とは、赤ちゃんと母親の胎盤をつなぐへその緒のこと。このへその緒と胎盤に含まれる血液を臍帯血といい、臍帯血を通して母親から赤ちゃんへ栄養成分が供給される。また、臍帯血は赤血球や白血球などの血液成分のもとになる造血幹細胞を豊富に蓄えており、この造血幹細胞を白血病や再生不良性貧血などの血液の難病に苦しむ人たちに移植すると、体内で血球を作りだし、病気に対する治療効果が期待できることから、注目されている。
【資料】学会発表の要旨(抜粋)
第55回日本栄養・食糧学会大会 発表要旨(抜粋)
妊産婦における血、乳、臍帯血中カロチノイド類並びに脂溶性ビタミンレベル(第2報)
宮崎大学 カロチノイド研究班(富田純史 他)
カゴメ株式会社総合研究所(大嶋俊二、稲熊隆博)
【目的】
前報で、妊産婦の母体血から乳、臍帯血へのカロチノイド類並びに脂溶性ビタミンの移行について報告した。本報では、トマトジュースの飲用が妊産婦における母体血、乳中カロチノイド類並びに脂溶性ビタミンレベルに与える影響について検討を行った。

【方法】
本研究に対して協力の同意が得られた妊産婦のうち、トマトジュースを飲用されたグループ(以下、飲用群と表記)と飲用されなかったグループ(以下、対照群と表記)において、分娩前と分娩日に母体血を、分娩後2、5、15、30日目に母体血に加え乳も採取した。分析方法としては、前報と同様に行った。

【結果】
母体血では、トマトジュース飲用によりβ-カロチンとリコピンが上昇したが、脂溶性ビタミンにおいては目立った変動は見られなかった。乳においては、対照群、飲用群ともに、カロチノイド類並びに脂溶性ビタミンとも初乳でレベルが高く、その後減少傾向を示したが、特に飲用群では、リコピンとβ-カロチンが2日目よりも5日目に高かった。

【結論】
トマトジュース飲用により、母体血、臍帯血、乳のいずれにおいてもカロチノイド類が上昇した。また興味深いことに、トマトジュースに含有されているカロチノイド類は大部分がリコピンであり、β-カロチンの含有量はリコピンの約30分の1にもかかわらず、飲用群では両者とも同様に上昇していた。