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トマトジュースとオリーブオイルの同時摂取により リコピンの吸収が高まることを確認-日本女子大学、カゴメの共同研究-

2001年5月2日

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県西那須野町)は、日本女子大学家政学部(丸山千寿子助教授)との共同研究で、トマトジュースとオリーブオイルを同時に摂取することで、トマトジュース単独で摂取するよりも、リコピンの吸収が顕著に高まることを明らかにしました。
本研究内容は、第55回日本栄養・食糧学会大会(2001年5月6日~8日、国立京都国際会館)において発表いたしました。
研究のきっかけ
 近年、日本人の食生活におきまして、ファーストフードで代表されるような食の北米化が進み、従来のスローフードであった日本型食生活が崩壊してきています。このような背景から糖尿病、心疾患といった生活習慣病が急増しています。ところで、ここでいうファーストフードとは、早く消化され、早くエネルギーになる食事のことです。反対にスローフードとは、よく噛んで食べ、ゆっくり消化され、ゆっくりとエネルギーに変わる食事法を指します。また観点を変えると、楽しく家族やみんなで食事をすることにもなります。
私たちは、このような現在の日本人の食事を「スローフード」に戻す手段としまして、「地中海式ダイエット(食事法)」を推奨しています。その理由はトマト、パスタ、オリーブオイルの組み合わせ(ゴールデントライアングルと呼ばれています)の摂取が、世界的に健康増進に役立つ食事といわれているからです。
地中海式ダイエットのゴールデントライアングル
研究の目的
 しかし、「地中海式ダイエット(食事法)」の良さは科学的に立証されているものではありません。そこで、私たちは、栄養成分の吸収性から、トマト、パスタ、オリーブオイルの組み合わせの良さを明らかにすることを研究の目的といたしました。
今回の研究では、これらの組み合わせの一つとしまして、トマトと相性が良く、料理によく用いられますオリーブオイルを用いて、トマトとオリーブオイルの同時摂取による、トマト中のカロチノイドの吸収に及ぼす影響について調べました。
研究の内容
 健康な女子大学生16名を被験者としまして、トマトおよびトマト製品摂取を2週間制限した後、早朝空腹時にトマトジュース200g(リコペン19mg含有)を摂取し、摂取前、2、4時間後にそれぞれ採血を行ないました。さらに2週間後、被験者を無作為に2群にわけ、トマトジュース200gに、オリーブオイル5g、オリーブオイル20gをそれぞれ加えて摂取し、経時的に採血を行ないました。
摂取したカロチノイドは、血液中のリポ蛋白質の一つでありますカイロミクロンに取り込まれて循環血流中に入ることが知られています。よって、カイロミクロン中に存在するカロチノイドは、吸収されたカロチノイドに相当します。そこで、採取しました血液から、カイロミクロン画分を取り出し、カロチノイド濃度の変化を調べました。その結果、トマトジュース200g単独で摂取したのでは、2時間後のカイロミクロン中リコピン濃度は増えませんが、オリーブオイル20gを同時摂取すると空腹時濃度に比べて有意に上昇し、4時間後も高いレベルを維持し続けていることが明らかとなりました。吸収性を比較しますと(下記の図参照)、トマトジュース200g単独で摂取する場合と比べて、オリーブオイル5gの同時摂取ではあまり変化はありませんでしたが、オリーブオイル20gの同時摂取では有意差はないものの、リコピンの吸収が平均で約4倍高まっていました。これより、トマトジュースを摂取する場合、オリーブオイルを同時に摂取することで、効率よくリコピンを吸収できることが判りました。
リコピンなどのカロチノイドは脂溶性物質であるため、脂質との同時摂取によって、その吸収が高まると考えられます。それは、消化管内において、脂質が存在することで植物細胞中のカロチノイドが脂質に溶け出して遊離され易い状態になるためと推定されます。
期待される成果
 今回の研究で、トマトジュースとオリーブオイルの同時摂取によって効率よくリコピンを吸収できることが判りました。一方で、トマトジュースだけでなく、生トマトやトマト加工品を使用して料理する場合にも、オリーブオイルを用いることでリコピンの吸収を高める効果が期待されます。
ある種の疾病の人は健康な人に比べて体内のカロチノイド濃度が顕著に低いことが知られておりますので、体内のカロチノイド濃度をより高めるために、オリーブオイルを用いたトマト料理の摂取が役立つと考えられます。
トマトジュース単独摂取とオリーブオイル同時摂取によるリコピン吸収性の比較
トマトジュース単独摂取とオリーブオイル同時摂取によるリコピン吸収性の比較
図の説明
 図は、トマトジュース単独摂取を1とした場合の、オリーブオイル5gあるいは20gの同時摂取におけるリコピンの吸収を比較したものです(摂取前から4時間後までのカイロミクロン中リコピン濃度と時間を乗ずることによる面積値で比較)。オリーブオイルの同時摂取によって、オリーブオイル5gを同時摂取した群(左)では若干上昇した程度でしたが、オリーブオイル20gを同時摂取した群(右)では、有意差はありませんでしたが平均で約4倍リコピンの吸収が高くなっていました。
丸山助教授からのコメント
 血液中の低密度リポタンパク質が酸化変性をおこすと動脈硬化症の発症につながることが分かっています。これまでに私たちが行った研究で、トマトジュースを継続的に摂取すると、低密度リポタンパク質の酸化変性がおこりにくくなる可能性を認めました。
 トマト中の重要な脂溶性成分であるリコピンは癌の予防にも有効であるという報告もあり、リコピンの種々の生体防御効果に期待が寄せられています。今回の研究により、トマト中のリコピンを効率よく体内に取り込むには、オリーブ油を同時に摂取するとよいことが判りました。地中海地方では昔から日常的にトマトとオリーブ油を使った料理が食べられていますが、これは美味しいばかりでなく体にとって効率の良い、良い食べ方であることが確認できたわけです。しかしオリーブ油もとりすぎると肥満、高脂血症、糖尿病などにとって過剰の弊害が懸念されます。今後は、食品中の生体に有効な成分を、効率よく、適切な組合せで、美味しく食べられる方法についてさらに研究していきたいと思っています。
用語の説明
カロチノイド:
 
主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素。ニンジンにはβ-カロチン(橙色)、トマトにはリコピン(赤色)、赤ピーマンにはカプサンチン(赤色)が特徴的に含まれる。β-カロチンなど、ヒトの体内でビタミンAに変換されるものもあるが、最近は、カロチノイド自身の抗酸化作用による疾病予防作用が注目されている。ある種のがん患者では血液中のカロチノイド濃度が、健康な人に比べて低くなっていることが報告されている。疾病の予防の観点から、カロチノイドを多く含む野菜や果物を多く摂取し、体内のカロチノイド濃度を高めることが重要だと考えられている。

カイロミクロン:
脂質は水に溶けないので、タンパク質と結合した状態で血液中を循環している。食事の摂取後、血液中に見られる脂肪の微粒子がカイロミクロンである。カロチノイドやビタミンEなどの脂溶性物質は、カイロミクロンに結合して吸収される。
【資料】学会発表の要旨(抜粋)
第55回日本栄養・食糧学会大会 発表要旨(抜粋)
トマトジュースと植物油同時摂取が血中リコペン濃度に及ぼす影響
○丸山千寿子, 関口幸恵, 三浦駒子, 大嶋俊二, 稲熊隆博
 日本女子大・食物, カゴメ総研
【目的】
脂溶性カロテノイドであるリコペンの種々の疾患に対する効果が注目され、我々はこれまでにトマトジュース連続飲用により血漿リコペン濃度が増加することを確認した。しかし、LDLに対する抗酸化効果を期待するためには多量のトマトジュース飲用が必要であり、効率的な摂取法が望まれる。ところが、トマトジュース中リコペンの吸収に関する報告は殆どない。そこで、植物油同時摂取がトマトジュース摂取後の血中カロテノイド濃度に及ぼす影響について検討した。

【方法】
月経周期が安定している健常な女子大学生16名を対象とし、トマト及びトマト製品摂取を2週間制限した後、空腹時にトマトジュース200g(リコペン19mg)を経口負荷し、負荷前、2、4時間後に採血した。さらに2週間後に対象を無作為に2群に分け、トマトジュース200gに加えてオリーブ油5g(OIL5g群)、オリーブ油20g(OIL20g群)を経口負荷した。カイロミクロン相当分画(CM)をTerpstraの方法により採取し、血漿及びCM中カロテノイド濃度をHPLC法により測定した。また食習慣調査および生活状況調査を留置法で行った。

【結果】
トマトジュース単独負荷時およびOIL5g群では、負荷による血漿およびCM中リコペン濃度に有意な変化は認められなかった。OIL20g群ではCM中TG濃度が空腹時16.3±9.3mg/dlに比して、4時間後に28.9±17.4mg/dlに、血漿TG濃度が51±15mg/dlから69±24mg/dlに増加した(p<0.05)。CM中リコペン濃度は空腹時7.1±2.3ng/dlに比して負荷2時間後に9.1±2.9ng/ml、4時間後に9.6±2.8ng/mlに増加した(p<0.05)。血漿リコペン濃度は空腹時208.4±54.3ng/mlと比べて2時間後には196.7±55.9ng/ml に減少した(p<0.05)。

【結論】
トマトジュース飲用時にリコペンの吸収を促進するためには、一定量以上の植物油を同時摂取する有効性が示唆された。