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食品加工業や外食産業などへ活用可能パスタのゆで具合測定法(非破壊・連続)を開発~カゴメ・広島大学 共同研究 ~

2001年9月7日

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県西那須野町)は、広島大学生物生産学部の羽倉義雄助教授との共同研究で、誘電特性注1の変化を指標とすることにより、パスタのゆで具合の物性変化を非破壊および連続でモニターすることが可能であることを明らかにしました。
本研究内容は、第48回日本食品科学工学会 (2001年9月11日、香川大学)において発表いたしました。
研究のきっかけ
 パスタ(スパゲティ)のゆで状態は、芯が僅かに残り、歯ごたえのある「アルデンテ」が良いとされています。しかし、ゆで具合の見極めは、随時パスタを取り出して調べるという手間のかかる方法しかありません。 そこで、より簡便にゆで具合をモニターする方法が開発できれば、特に食品加工業や外食産業など大量にパスタをゆでる場合において、大変有用な測定技術となります。
研究の目的
 パスタのゆで具合を定量的に明らかにするための手段として、パスタを加熱容器から取り出さなくても測定可能である、誘電特性測定注1に着目しました。誘電特性は、物質を構成する分子の存在状態(動きやすさ)に伴って変化することが知られています。本研究では、パスタのゆで過程において起こるデンプンや水などの状態変化を、誘電特性の変化として捉えることにより、ゆで具合をモニターできるのではないかと考え、検討を行ないました。
研究の内容
 パスタの加熱過程における誘電特性変化を測定する装置(図1)として、アルミニウム製フライパンとテフロンフィルムで絶縁した蓋を加熱容器兼電極として用い、誘電特性の測定をLCRメータにて行ないました(LCRメータ注2の測定ケーブルを、容器および蓋の金属部分に接続)。容器中で沸騰させた0.5%食塩水1Lに対し、100gの乾燥スパゲティ(直径1.7mm)を入れ、加熱時における誘電特性の経時変化を測定した結果、損失係数(誘電特性の指標の一つ)について、加熱時間8分付近での急激な上昇が認められました(図2)。

 試験に用いたスパゲッティの加熱時間8分でのゆで具合は、好ましい食感であると官能評価で示された、アルデンテの状態であり、損失係数の変化は、ゆで過程のモニタリングに利用できると考えております。
図1 測定装置

図2 パスタのゆで過程の誘電特性(損失係数)変化
期待される結果
 この技術は、パスタを取り出さずに簡便に測定できるという利点があり、アルデンテの状態で誘電特性(損失係数)が変化するという今回の結果から、パスタのゆで過程の時間管理への利用が期待できます。
羽倉助教授のコメント
 本研究の結果より、スパゲティのゆで具合を誘電特性によって判断できる可能性が高まりました。今後は、誘電特性変化と物性変化との関連をさらに詳細に検証するとともに、各種パスタへの汎用性も明らかにしていく予定です。
図の説明
図1  
パスタの加熱過程における誘電特性変化を測定するために用いた装置を模式的に表したものです。市販のアルミニウム製フライ パンと蓋の間に絶縁シート(テフロンフィルム)をはさみ、LCRメータの2本の測定ケーブルを、フライパンと蓋の金属部分に接続した、簡単なものです。
  図2  
 グラフは、沸騰した食塩水にパスタを投入した時間を0分として、測定周波数100kHzで30秒毎に測定した誘電特性(損失係数)の経時変化を表したものです。加熱時間7~8分において、損失係数の上昇が認められます。
メカニズム
 パスタのゆで過程においては、乾燥パスタ中に水分子が徐々に浸透してゆき、パスタが軟化します。このとき、デンプン・タンパク質などの成分の状態も変化し、パスタ中での分子の動きやすさ(自由度)が変化していきます。この変化が、今回観察された誘電特性の変化として現れていると考えられます。
用語の説明
誘電特性(注1):
 物質に電場を与えたときの、分極のしやすさ(電荷の偏りやすさ)をその物質の誘電特性といい指標としては、誘電率、損失係数などがあります。 物質内の分子や電子の動きやすさが変化すると、誘電特性も変化します。 今回の試験では、フライパン、蓋、内容物(パスタ+食塩水)のトータルの誘電特性の変化を測定しています。

LCRメータ(注2):
  誘電特性の測定に一般的に用いられている測定装置で、通常は、コンデンサーや半導体などの測定に用いられています。 2本の測定ケーブルを、電極に接続するだけで、電極間に存在するの物質の誘電特性を簡便に測定することができます
第48回日本食品科学工学会発表要旨
誘電特性を利用したスパゲティの茹で過程の解明
(広島大・生物生産,カゴメ総研*
羽倉義雄・○杉山 久・有本 靖*・稲熊隆博*・鈴木寛一
【背景及び目的】スパゲティの最適茹で状態であるアルデンテは『麺の中心に芯の残る程度』とよく表現されるが、実際その状態は科学的な解明がなされていない。そこで、アルデンテの状態を定量的に明らかにする為の手段として、短時間に、非破壊・非接触測定のできる誘電特性測定に注目した。本研究では、誘電特性を利用してスパゲティの茹で時間に伴う麺の状態変化を連続的に測定する方法について検討を行った。

【実験方法】試料として直径1.7mm、原材料デュラム小麦のセモリナ、標準推奨茹で時間8分の市販のスパゲティを使用した。スパゲティは10倍量の0.5%食塩水で茹で上げた。測定装置は市販の鍋と蓋にHIOKI製のLCRメーター接続した装置を用いた。測定周波数100kHzで30秒毎にその時の誘電特性を測定した。また、麺の力学物性(弾性率、吸水率など)・熱物性の状態変化を1分毎に測定した。

【結果及び考察】スパゲティを茹で始めて、標準推奨茹で時間付近で誘電特性に変化が表れることが明らかとなった。そこで、スパゲティの茹で上げ状態の変化を誘電特性によって測定できる可能性が示唆された。また、スパゲティの茹で上げ操作は大量の食塩水中に少量のスパゲティが分散している状態で行われている。つまり、このような不均一な調理方法による食品の品質を評価することができたことから食品への品質評価の可能性が示唆された。