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香ばしい麦茶は血液をサラサラにする! ―カゴメ総合研究所がヒトで確認―

2004年11月11日

 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県西那須野町)は、麦茶の香ばしい匂いの成分であるアルキルピラジン*1類の多い麦茶の飲用による、血液流動性向上(サラサラ)効果をヒトで確認したことを明らかにしました。本研究内容は、本年10月27日開催の日本清涼飲料研究会第14回研究発表会(日本教育會館 一ツ橋ホール)において発表いたしました。
  血液流動性の低下は、血栓の形成を促進することなどにより、循環器系の疾患を助長すると推測されています。麦茶の継続飲用により、血液が流れやすく(サラサラに)なることが期待されます。
研究の背景
 日本人の死亡率のトップは悪性新生物(がん)ですが、第二位の心疾患と第三位の脳血管疾患を足すと、がんの死亡率に匹敵します。心疾患や脳血管疾患はいずれも循環器系の病気であり、動脈硬化症が進行し、血管中に血栓や塞栓*2が形成されることが原因の一つとなっています。血液の流動性の低下は、末梢の血流を確保するために血圧の上昇を招き、さらに、血液と血管壁との摩擦力(シェア・ストレス)が強くなることなどから、血栓や塞栓の形成を促進してしまうと考えられます。
研究の目的
麦茶の飲用で血液流動性が良くなること、「アルキルピラジン類」を血液に添加すると、その流動性が向上することはこれまで試験管内の実験によって明らかにしてきましたが、本研究においては
 ヒトに対し
 1・麦茶の飲用による血液流動性向上作用が時間的にどの程度継続するのか
 2・アルキルピラジン類の濃度が血液流動性向上に寄与しているのか

について実験し評価しました。
研究概要
研究成果1:麦茶の血液流動性向上作用は約90分間継続する
【研究内容】
  健康な成人ボランティア6名が市販のペットボトル入り麦茶(「六条麦茶」, カゴメ(株)製)を250 mL飲用、飲用前と飲用15, 30, 60, 90, 120分後に血液を採取、その流動性を測定。同様の実験をミネラルウォーターでも実施。(測定にはMCーFAN*3を使用)
⇒飲用前と比較し、飲用30および60分後に採取した血液の流動性が有意に向上、さらに90分後においても流動性向上の傾向にあった。
同一被験者がミネラルウォーターを飲用した場合では血液流動性は向上せず、麦茶の飲用は、水を摂取した場合と比較しても血液流動性を有意に向上させることが判明。
* 図1説明 :
水または麦茶を飲用する前、及び飲用15, 30, 60, 90, 120分後に採取した血液100μLがMC-FANの装置内を流れるのに要する時間を測定し、飲用前の所要時間を0とした時に、その後、所要時間がどのように変化したのかをグラフに示した。「全血通過時間」は人によって異なるため、飲料を飲む前の血液の通過時間を基準(0)にして、飲んだ後の血液の通過時間との差を「全血通過時間の変化量」とした。すなわち、「全血通過時間の変化量」=「飲用後の通過時間」ー「飲用前の通過時間」であり、数値が0よりも小さくなれば流動性が向上したことを、大きくなれば悪化したことを表す。その結果、水(ミネラルウォーター)を飲用した時には、血液流動性の向上は認められず、やや低下する傾向にあった。単に水分を摂取しただけでは血液流動性は向上しない一方、麦茶を飲んだ場合では、飲用後30分から1時間後にかけて、水を摂取した際と比較して、変化量が有意に低値を示し、90分後まで流動性が向上する傾向が認められた。
研究成果2:より香ばしい麦茶が血液流動性を向上させる
【研究内容】
麦茶に含まれ血液流動性を向上する成分として、アルキルピラジン類が考えられる。そこで、研究成果1で血液流動性向上作用が認められたカゴメ「六条麦茶」(麦茶A)と、市販品の中でアルキルピラジン類の濃度が低い麦茶Bとを比較した。
⇒麦茶Bでは血液流動性は向上せず、麦茶の香ばしい匂いの成分であるアルキルピラジン類の血液流動性向上への関与が考えられた。
* 図2説明 :
図1は、飲用後の流動性の経時変化を表したグラフであるが、 飲用後2時間までの変化傾向を表現するために、図1のような グラフの「曲線下面積」(右図斜線部面積)を比較したのが 図2である。マイナスの値はマイナスの面積として考え、この 面積が小さいほど(マイナスになるほど)飲用後の血液流動性がよかったことを表す。
図1で用いた麦茶Aと、Aよりアルキルピラジン類の濃度が低い麦茶Bとを比較。その結果、面積がマイナスになった(=流動性が向上した)のは麦茶A飲用時だけであり、麦茶Bでは水飲用時と違いが認められなかった。以上より、麦茶飲用による血液流動性向上作用には、アルキルピラジン類が関係している可能性が高まったと考えられる。
用語の説明
*1アルキルピラジン
ピラジンとは、二つの窒素を含む、右図のような六員環構造をもった化合物である。このうち、2, 3, 5, 6位の水素が、メチル基やエチル基といった、アルキル基によって置換されたものをアルキルピラジンと呼ぶ。これらの物質は、血小板内へのカルシウム流入を抑制することで、血小板凝集抑制作用を示す。 試験管内の実験で、血小板凝集抑制作用が最も強いのは、2, 3, 5位の3箇所にメチル基が付いた構造のものである。なお、アルキル基を持たないピラジンの活性は弱い。


*2血栓と塞栓
血栓とは、血管内で凝固した血液である。例えば血管が破れて出血が起きると、その部位に血小板が集まって白色の血小板性血栓を形成し、その後、フィビリンと呼ばれる繊維状のものが形成されてかさぶたのような、赤色の血栓になる。血管が修復された後には、この血栓は溶解してなくなるが、いつまでも残ってしまうと、血流を妨げることになり、悪影響を及ぼす。動脈硬化症で血管が内側に盛り上がったような部位には、血栓ができやすい。また、血栓が血流により飛ばされて、別の部位の血管を塞いでしまうのを塞栓という。例えば、大動脈などにできた血栓が脳に飛ばされて脳の血管を塞いでしまい、その先の組織が障害を受けるのが、脳梗塞である。

*3MC-FAN
Micro Channel array Flow ANalyzerの略語である。シリコンチップに、幅7μm、長さ30μm、深さ4.5μmの溝(擬似毛細血管)を並列に8736本作成し、一定差圧下(20cm水柱圧)にて血液100μLが通過するのに要する時間を計測することにより、血液の流動性を測定する装置であり、現在の独立行政法人食品総合研究所において開発された。流路を通過する様子を顕微鏡下でモニターできることから、現象を視覚的に捉えられる。マスメディアにおいて、「血液サラサラ」といった表現がなされるようになったのは、この装置により、血液流動性の測定が容易になるとともに、視覚的に把握できるようになって以降である。
【日本清涼飲料研究会第14回研究発表会 要旨】
麦茶の血液流動性向上作用(第2報)
Amelioratory Effect of Barley Tea on Blood Rheology 2.
菅沼大行,稲熊隆博(カゴメ(株)総合研究所)
Suganuma, H., and Inakuma, T. (Research Institute, Kagome Co., Ltd.)
【目的】末梢血管において、赤血球は、自身の直径よりも狭い毛細血管の中を、変形しながら循環している。そのため血液流動性は、このような毛細血管(微小循環)において特に重要である。すなわち、微小循環における障害は、血栓や塞栓の形成を招きやすく、心筋梗塞や脳梗塞などの循環器系疾患の原因となるとともに、その病態とも密接に関係していると考えられる。これまで我々は、麦茶の飲用により、1時間後に血液流動性が向上することを明らかにし、以前の本研究会においても報告してきたが、作用の継続時間など、経時的な変化については未知であった。そこで、本研究においては、麦茶の血液流動性向上作用の経時変化について検討を行なったので報告する。

【方法】血液流動性の評価は、麦茶または水(250ml)の飲用前と飲用15、30、60、90、120分後に、インフォームドコンセントを得た6名のボランティアから、ヘパリン存在下にて血液を採取し、その流動性をMC-FAN(日立原町電子工業製)により比較することで行なった。すなわち、幅7μm、長さ30μm、深さ4.5μmの流路が8736本並列に並んだシリコンチップ内を、一定差圧下(20cm水柱圧)にて血液を通過させ、100μlの通過時間を計測した。また、これまでの評価において、麦茶の焙煎フレーバーであるアルキルピラジン類が活性発現に寄与することが示唆されていたことから、その濃度が異なる市販の2種類の麦茶(麦茶A:高アルキルピラジン、麦茶B:低アルキルピラジン)での比較も試みた。なお、試験結果は、対応のあるtー検定により相互に比較し、有意水準は危険率5%未満とした。

【結果】麦茶Aを250ml飲用し、その後の血液流動性の変化を測定したところ、水を飲用した30分後及び60分後において、血液流動性が有意に向上した。15分後及び90、120分後においても、対照と比較して、麦茶を飲用した時の方が、MC-FANによる全血通過時間は低値を示したが、統計的な差は認められなかった。以上の結果から、麦茶飲用による血液流動性改善作用は、飲用30分〜60分後にその作用が最も強いことが示唆された。なお、被験者によっては、90分頃にピークを迎える者もおり、作用発現のタイミングには個人差があった。また、アルキルピラジン類が少ない麦茶Bの飲用では、麦茶Aで観察されたような、流動性を向上させる作用は認められなかった。この結果は、以前in vitro試験において認められた、アルキルピラジン類の血液流動性向上作用を支持するものである。