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植物性乳酸菌「ラブレ菌」発酵物の抗腫瘍作用を動物実験で実証 ~カゴメ総合研究所が日本食品免疫学会 第1回学術大会(11月9日、10日開催)にて発表~

2005年11月9日

 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、植物性乳酸菌である「ラブレ菌」で発酵させたニンジンエキス発酵物に強い抗腫瘍作用があることを、動物実験によって実証しました。本研究内容を日本食品免疫学会 第1回学術大会(平成17年11月9日〈水〉ー10日〈木〉 、昭和女子大学 〈東京都世田谷区〉)において発表いたします。
 
研究の背景
乳酸菌やそれを用いた発酵物(主に発酵乳)の働き(機能性)は広く研究されており、整腸作用や免疫賦活作用をはじめとした多くの有益な働きがあることが報告されています。しかし、乳由来や腸管由来の乳酸菌に比べ、植物性乳酸菌やそれを用いて植物原料を発酵させた発酵物の機能に関する知見は少ないのが現状です。古来より食されてきた伝統的な京漬物「すぐき漬け」から分離された植物性乳酸菌である「ラブレ菌」(Lactobacillus brevis KB290)は、ヒトのナチュラルキラー細胞(NK)活性(細胞傷害活性)やインターフェロン-α(IFN-α)の産生能を高めることが報告されており、その免疫賦活作用による感染症やがんの予防への応用が期待されています。
研究概要
本研究ではラブレ菌発酵物の抗腫瘍作用をあきらかにするために、ストレスを負荷して免疫能を低下させたマウスにがん細胞を移植し、移植した腫瘍の大きさにラブレ菌を用いてニンジンエキスを発酵させた発酵物の投与がどのような影響を与えるか調べました。

◆方法

雄のマウスをHS群(等カロリーブドウ糖液を投与)、NF群(未発酵ニンジンエキスを投与)、FW群(ラブレ菌発酵ニンジンエキスを投与)、SF群(殺菌したラブレ菌発酵ニンジンエキスを投与)の4つの群(10匹/群)に分けました。試験0日(試験開始日)からそれぞれの群に対応した被験物質を経口投与し、試験7日(試験8日目)にがん細胞(Colon‐26)を皮下に移植しました。なお、がん細胞を移植する3日前より3日間、動物を37℃の環境下で飼育することで、高温ストレスを与え、免疫力を低下させました。がん細胞移植後も被験物質の投与を継続し、試験14および21日(試験15および22日目)に移植した場所の腫瘍の大きさを測定しました。試験22日(試験23日目)に腫瘍部を摘出し重量を測定するとともに、脾臓の細胞を取り出しNK活性を測定しました。

◆結果
●腫瘍の大きさの変化と試験終了時の腫瘍の重さ






がん細胞を移植したマウスでは、ラブレ菌を用いてニンジンエキスを発酵させた発酵物を与えると、殺菌の有無にかかわらず対照である等カロリーブドウ糖液および未発酵のニンジンエキスに比較して、腫瘍は大きくならず、試験終了時の腫瘍の重さもより軽いものでした。モデルマウスを用いた動物実験において、ラブレ菌による野菜発酵物の投与が腫瘍の増殖を抑制したことから、ラブレ菌発酵物が優れた抗腫瘍作用を持つことが示唆されました。

●試験終了時のNK活性



 
がん細胞を移植したマウスでは、ラブレ菌を用いてニンジンエキスを発酵させた発酵物を与えると、殺菌の有無にかかわらず対照である等カロリーブドウ糖液および未発酵のニンジンエキスに比較して、試験終了時のNK活性はより高いものでした。モデルマウスを用いた動物実験において、ラブレ菌による野菜発酵物の投与によって腫瘍の増殖が抑制されたのは、がん細胞を攻撃するNK活性が高められるなど免疫機能が向上したためと考えられました。
用語説明
≪植物性乳酸菌≫
主に、植物素材を原料としてよく増殖する乳酸菌。ヨーグルトやチーズの発酵に用いられる酪農乳酸菌や、人や動物の腸に棲息する腸管系乳酸菌と区別して呼ばれる。弊社では、「植物を主原料とする発酵食品から分離され、植物を発酵する能力のある乳酸菌。」

≪乳由来や腸管由来の乳酸菌≫
乳由来の乳酸菌とは、古来よりヨーグルトやチーズの発酵に用いられてきた乳酸菌。酪農乳酸菌と呼ばれる。腸管由来の乳酸菌は、ヒトや動物の腸に棲息する乳酸菌で、近年、プロバイオティクスとして発酵乳製品に利用されるようになってきた。

≪プロバイオティクス≫
生きたまま腸まで届き、ヒトに良い働きをする微生物(またはそれを含む食品)。プロバイオティクスの効果として「整腸作用」、「免疫調節作用」、「生活習慣病予防」などが期待される。

≪ラブレ菌≫
学名 Lactobacillus brevis KB290 (KBはカゴメの菌株ナンバー)
    → 通称Labre (ラブレ)
京都の漬物「すぐき漬け」から分離された植物性乳酸菌、(財)ルイ・パストゥール医学研究センター(京都)で分離され、その免疫賦活作用が研究されてきた。

≪ナチュラルキラー(NK)細胞≫
大型リンパ球の一種。がん細胞やウィルスに感染した細胞を殺し、体内における免疫反応の最前線で活躍する細胞。 免疫力によるがん予防の主役として期待されている。加齢やストレスによってその活性が低下することが知られている。

≪NK活性≫
NK活性とは、NK細胞ががん細胞などを攻撃して殺してしまう働きの強さを表し、免疫力の指標となる。

≪インターフェロン-α(IFN-α)≫
抗ウィルス活性を持つ生体内で作られるたんぱく質。NK細胞を活性化させる働きもある。 抗がん剤やC型肝炎の治療薬として使用されている。 C型慢性肝炎患者へのIFN治療の長期追跡研究では、肝がんに対する一定の予防効果が明らかになってきている。最近の研究では自然免疫やがん抑制遺伝子の活性化に重要な役割を果たしていることが明らかになってきている。

≪IFN-α産生能≫
ウィルスなどの刺激により細胞がIFN-αを作り出す能力。

≪Colon‐26≫
マウスの結腸癌由来の細胞株。今回試験に用いたマウスと同系統のマウス結腸癌より樹立された細胞株であり、癌腫に区分される。ヒトでは肉腫より癌腫の発生頻度が高い。