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トマトジュースに気管支喘息の症状緩和作用を確認 ーカゴメと順江会江東病院の共同研究ー

2006年5月10日

 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、順江会江東病院(東京都江東区) 田村尚亮先生との共同研究で、気管支喘息患者がトマトジュースを継続的に摂取することで、喘息症状や喘息症状におけるQOLが改善することを確認しました。本研究内容は、第46回日本呼吸器学会学術講演会において、1.トマトジュースの長期飲用による喘息症状緩和効果に関する検討、2.トマトジュース長期飲用による気管支喘息患者の自覚症状改善効果に関する検討 として発表いたします。
共同研究者 江東病院 呼吸器内科 呼吸器内科部長 田村先生のコメント
 トマトジュースを少なくとも6ヶ月以上にわたって継続的に飲用することによって、喘息に伴う自覚症状が緩和されたり、ピークフロー値の改善を示す例が多く認められました。こうした改善例は軽症から重症の全ての喘息患者で認められ、さらに6ヶ月以上飲用を継続することにより、一層改善効果は増大しました。本試験に参加した被験者は、それまで継続してきた通常の薬物療法によってある程度安定した治療効果が得られている患者さんばかりです。今回の試験では、それまでの治療は継続した上でトマトジュースを飲用していただきました。観察されたピークフロー値やその他の所見の改善(上昇)の全てがトマトジュースに起因しているとは断定できませんが、有用性は高いと考えています。トマトジュースを飲用した患者さんでは、ピークフローの最高値、最低値ともに飲用期間中期間の経過に伴い徐々に上昇し、ピークフローの最高値で12%、最低値で21%の上昇が認められました。また、気管支喘息治療では日内変動率を20%未満にすることが目標とされておりますが、今回の試験では日内変動よりも更に大きな目標となる月の変動率を20%まで低下することができました。更に重要なことはトマトジュース飲用者の大多数が、喘息症状が改善していることを自覚されていて、トマトジュースを今後も継続して飲用したいという意志を示されていることです。
  リコピンが運動誘発喘息の症状緩和に有用であることはすでに報告されており、喘息症状の緩和に関してリコピンの有効性を示唆するデータが報告されてきており、リコピンの強い抗酸化活性が喘息の病態に予防的に関与する可能性が推測されています。今回の検討により、リコピンを含有するトマトジュースの長期飲用は喘息症状や自覚症状を緩和に有用であることが示唆されました。
研究の背景
 喘息の患者数は、現在400万人といわれており、患者は小児、成人ともに年々増加傾向にあります。特に最近、1年間に気管支喘息を発症している小中学生の割合が全体の1割を超えているとの調査報告がされています。また、年間4000人近くが「喘息死」しており、アレルギー疾患の関連死の99%を占めています。そのようなことから、厚生労働省では全国規模の疫学調査を実施しており、2006年度から「喘息死ゼロ作戦」に取り組んでいます。
  以前の研究で、入院や治療を要する重症気管支喘息患者の血清カロテノイドを測定したところ、健常人と比較して血清リコピン濃度は顕著な低値を示しておりました(カゴメニュースリリース2003/4/30発表)。こうした背景を元に、軽症から重症までの喘息患者を対象としたトマトジュース長期飲用試験を行いました。
研究概要
≪目的≫
 トマトジュースの長期飲用が、喘息発作の予防、気管支喘息におけるQOLの改善に対する有効性を有するかを明らかにすることを目的として、研究を行いました。

≪内容≫
  臨床試験の形態は、対照のないオープン試験とし、食塩無添加トマトジュース160g缶を1日2缶、1年間にわたり喘息治療中の気管支喘息患者(26例、平均年齢52.5歳)に飲用していただきました。呼吸器系の状況を反映する指標として、ピークフロー値を毎日朝・夕の計2回測定していただきました。更に詳しくは、0、3、6ヶ月および飲用終了時に呼吸機能検査を行い喘息による気流障害の程度を反映すると考えられる%努力肺活量(%FVC)、 1秒量(FEV1)の変動を追跡しました。また、トマトジュース飲用による自覚症状の変化を中心にQOLに関するアンケート調査を行いました。

≪結果≫
  ピークフローの最高値は、飲用開始時と比べて飲用5ヶ月目から有意に上昇することが確認できました。また、ピークフローの最低値も飲用5ヶ月目から有意に上昇しました。さらに、ピークフローの最低値ではアトピー型、非アトピー型や、症状の重症度に関係なく全ての喘息患者において有意な上昇が認められました。
 また、ピークフロー値の月の変動率を求めたところ、飲用開始前においては平均29%でしたが、飲用終了時には平均20%にまで低下しました(図1)。
 喘息によるQOL自覚症状を調査したところ、飲用3ヶ月後には改善傾向を示していることが認められました(図2)。またアンケートにおいて「トマトジュースを飲んで楽になった」という項目のみで検討したところ、「非常に当てはまる」、「かなり当てはまる」と回答された方が飲用3ヶ月後では24%でしたが、飲用終了時には59%まで上昇しました。「全くあてはまらない」と回答された方は終了時には1名のみでした。
 その他、呼吸機能を示す%努力肺活量(%FVC)、 1秒量(FEV1)の改善や救急外来受診日数・救急入院日数の減少も確認されました。なお、QOLアンケートと救急外来受診日数と救急入院日数の調査結果は、薬剤効果判定指標として非常に重要とされています。
 以上の結果より、気管支喘息症状の改善や急性増悪の予防にトマトジュースが有効である可能性が高いと考えられます。
(図1の説明)
   1ヶ月間毎日測定したピークフロー値の中で、最も高い値をその月の「ピークフロー(最高値)」、最も低い値を「ピークフロー(最低値)」としました。そのピークフローの最高値と最低値を用いて図の式により、月の変動率を求めました。
 トマトジュースを一年間飲用していただいた26例の月の変動率の平均値は、飲用開始前において29%でしたが、6ヶ月後には25%にまで低下し、11ヶ月後には20%にまで低下しました。推移を見ると、期間の経過に伴い徐々に低下し、飲用開始時と比較して7ヶ月目から有意な低下を示しました。また、アトピー型、非アトピー型において検討したところ、アトピー型は有意に低下していました。非アトピー型は人数が少なく統計的に有意な低下は認められなかったものの、8ヶ月では危険率5.02%、11ヶ月では危険率5.6%と、低下傾向が見られました。
(図2説明)
  QOL自覚症状を調査するため、喘息症状、発作、睡眠、発作誘発に関するアンケートを記入していただき、ポイント化しました。120点満点で、点数が多いほど生活に支障があったり、症状が強いことを示しますが、飲用3ヶ月の段階で飲用前と比較して有意に改善していることが明らかとなりました。さらに重要なことは、日常生活にかなり支障があると考えられる状態(60点以上)の方の割合が、トマトジュース飲用により顕著に低下している点です。
用語の説明
リコピン:
トマトに豊富に含まれる赤色の色素。生トマトよりもトマトジュースやケチャップに多い。野菜にはリコピン以外に、β-カロテン(ニンジンなどに多い)、カプサンチン(赤ピーマンに含まれる)といったカロテノイド色素が豊富に含まれている。β-カロテンは、ヒトの体内でビタミンAに変換されるが、リコピンやカプサンチンは変換されない。

ピークフロー:
ピークフローとは、十分息を吸い込んで思いっきり早く吐き出したときの息を呼出する最大の速さ(最大呼気流速度 Peak Expiratory Flow Rate, PEFR)を指す。気道の狭窄状態を簡便に知るための数値であり、喘息の重症度の指標となる。患者自身が自宅で簡便な器具を用いて測定することができることから、在宅での日常的な喘息症状管理に適している。性別・年齢・体型によってその標準値が決まっており、喘息患者では、この数値を健常者の80%以上に保つことができれば、病状のコントロールが良好であると考えられている。喘息の発作を起こしているようなときには、この値は顕著に低下することから、最低値は喘息発作の有無の指標に、最高値は発作を起こしていない通常時の気管や気管支の状況の指標になる。

変動率:
通常は1日のうちの変動(日内変動率)が使われるが、今回の変動率は1ヶ月間の喘息の変動(安定性)を求めた。この変動率は1日における変動(日内変動)よりも大きな数値を示す。
喘息の人、特にコントロールが不十分な人では、この日内変動の幅が大きくなり、喘息治療を目標としたガイドラインには、ピークフローの日内変動率が20%未満であるとの喘息治療の目標が掲げられている。

アトピー型喘息、非アトピー型喘息:
ハウスダスト、ダニ、花粉などを吸入することにより起こるアトピー型(アレルギー型、外因性、IgE依存性)と、アスピリン喘息、運動誘発性に代表される非アトピー型(非アレルギー型、内因性、IgE非依存性)に大きく分けられることが知られている。

QOL:
Quality of Life の略で、一般的には「生活の質」「人生の質」を意味する。癌患者では「生命の質」そのものを考慮されることもある。喘息患者では、病気によって日常生活が障害されることなく遂行できることが重要である。すなわち発作による自覚症状の増悪だけではなく、救急外来の受診、日常行動の制限、周 囲の無理解に対する不安、定期的な服薬や吸入などの日常生活における負担から、QOLが低下する。喘息治療の最終目標は、『健康な人と同じ日常生活を不安なく送れること』、つまり喘息のない生活を送ることであり、QOLの改善が治療の大きな指標となっている。
【資料】 学会要旨
 
●第46回日本呼吸器学会学術講演会
トマトジュースの長期飲用による喘息症状緩和効果に関する検討

田村尚亮*、中村真子**、相澤宏一**、稲熊隆博**
*順江会江東病院、 **カゴメ株式会社総合研究所
 
【目的】
気管支喘息(BA)患者では血清リコピン濃度低値例が多く、トマトジュース(TJ)飲用で喘息症状が緩和した例がある、という基礎成績を元にTJの長期飲用による喘息発作予防・自覚症状改善効果を検討するため、BA患者に対するTJ長期飲用試験を行った。

【方法】
対象は46例のBA患者である。一日2本の市販TJ(160g)を6ヶ月以上飲用することを目標とした。ピークフロー(PF)を朝夕、呼吸機能検査3ヶ月ごとに終了時まで行った。原則として飲用期間中は投薬内容は変更しなかった。

【成績】
TJを一年間飲用した26例ではPF最高値は飲用前377から12ヶ月後421へと有意に(p<0.001)上昇した。日内変動の減少も認められた。FVC、FEV1はそれぞれ投与前2.28L、1.65Lから6ヶ月後には2.74L(p<0.01)、2.06L(p<0.01)といずれも改善傾向を認めた。改善例は軽症から重症の全ての喘息患者で認められ、多くは飲用継続により改善効果が増大した。

【結論】
TJの長期飲用によって、PF値の改善を示す例が多く認められた。血清リコピン低下と喘息症状との間の関連性は不明であるが、リコピンを含有するTJの長期飲用が喘息の病態改善に関与する可能性が示唆された。
●第46回日本呼吸器学会学術講演会
トマトジュース長期飲用による気管支喘息患者の自覚症状改善効果に関する検討

中村真子**、田村尚亮*、相澤宏一**、稲熊隆博**
*順江会江東病院、 **カゴメ株式会社総合研究所
 
【目的】
気管支喘息(BA)患者の血清リコピン濃度は健常者に比して著明に低下していることは既に報告した。この低下をトマトジュース(TJ)を長期間飲用して改善することで、BA患者の自覚症状が改善するかを検討した。

【対象・方法】
46名のBA患者を対象とした。TJ(160g/本、リコピン16mg含有)を一日2本ずつ、6ヶ月以上の長期間飲用に供した。その間0、3、6ヶ月および飲用終了時にアンケート調査(日常生活・臨床症状に関する32項目とTJ飲用に関する4項目の計36項目)を行い、5段階評価で回答を得た。TJ飲用期間中は、原則として治療法の変更は行わなかった。

【成績】
36例が6ヶ月以上(うち26名が1年間飲用)のTJ飲用を継続した。自覚症状改善例は26例あり、増悪例は6例だった。飲用開始後3ヶ月で飲用前と比較して有意な改善傾向を示し(p<0.05)、飲用の継続で更に症状の改善を自覚した(p<0.005)。

【結論】
TJを6ヶ月以上にわたって連日飲用することによって、喘息に伴う自覚症状が緩和された症例が多く認められた。血清リコピン低下と喘息症状との関連性は不明であるが、リコピンを含有するTJの長期飲用は喘息症状の緩和に有用である可能性が示唆された。