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植物性乳酸菌「ラブレ菌」発酵物の抗感染作用を動物実験で確認 ~カゴメ総合研究所が日本農芸化学会 2006年度大会(3月25日‐28日開催)にて発表~

2006年3月13日

 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、植物性乳酸菌である「ラブレ菌」で発酵させたニンジンエキス発酵物に抗感染作用があることを、動物実験によって確認しました。本研究内容を日本農芸化学会 2006年大会(平成18年3月25日〈土〉ー28日〈火〉 、京都女子大学 〈京都市東山区〉)において発表いたします。
 
■研究の背景
 乳酸菌やそれを用いた発酵物(主に発酵乳)の働き(機能性)は広く研究されており、整腸作用や免疫賦活作用をはじめとした多くの有益な働きがあることが報告されています。しかし、乳由来や腸管由来の乳酸菌に比べ、植物性乳酸菌やそれを用いて植物原料を発酵させた発酵物の機能に関する知見は少ないのが現状です。古来より食されてきた伝統的な京漬物「すぐき漬」から分離された植物性乳酸菌である「ラブレ菌」(Lactobacillus brevis KB290)は、ヒトのナチュラルキラー細胞(NK)活性(細胞傷害活性)やインターフェロン-α(IFN-α)の産生能を高めることが報告されており、その免疫賦活作用による感染症やがんの予防への応用が期待されています。
■研究概要
 本研究ではラブレ菌発酵物の抗感染作用をあきらかにするために、ラブレ菌を用いてニンジンエキスを発酵させた発酵物の投与が、食中毒菌であるサルモネラ菌を接種したマウスの健康状態にどのような影響を与えるか調べました。同時に、腸管の感染防御に重要なIgA抗体量を測定しました。
方法
雄のマウスをC群(等カロリーブドウ糖液を投与)、NF群(未発酵ニンジンエキスを投与)、FW群(ラブレ菌発酵ニンジンエキスを投与)、SF群(殺菌したラブレ菌発酵ニンジンエキスを投与)の4つの群(10匹/群)に分けました。試験0日(試験開始日)からそれぞれの群に対応した被験物質を経口投与し、試験7日(試験8日目)にサルモネラ菌を経口接種しました。サルモネラ菌接種後も被験物質の投与を継続し、試験0日から21日(試験開始日から試験22日目)まで毎日、マウスの健康状態を観察し、その程度を5段階のスコアとして記録しました。また、試験21日(試験22日目)に血液を採取するとともに、小腸を摘出し腸管内の洗浄液を調製しました。マウスの免疫機能を評価するために、血中および小腸洗浄液中の抗体量を測定しました。

結果
●マウスの健康状態の変化





マウスに、対照である等カロリーブドウ糖液および未発酵のニンジンエキスを与えると、その健康状態はサルモネラ菌を接種した後から徐々に悪化したのに対して、ラブレ菌を用いてニンジンエキスを発酵させた発酵物を与えると、殺菌の有無にかかわらず、試験期間中を通じて健康な状態でした。モデルマウスを用いた動物実験において、ラブレ菌を用いた発酵物の投与によって健康な状態を保てることから、ラブレ菌発酵物が抗感染作用を持つことが示唆されました。

●小腸洗浄液中の総IgAとサルモネラ菌特異的IgA抗体量


サルモネラ菌を接種したマウスでは、ラブレ菌を用いてニンジンエキスを発酵させた発酵物を与えると、殺菌の有無にかかわらず対照である等カロリーブドウ糖液および未発酵のニンジンエキスに比較して、試験終了時のIgA抗体量はより高いものでした。モデルマウスを用いた動物実験において、ラブレ菌による発酵物の投与によって健康な状態を保つことができたのは、病原菌を排除するIgA抗体産生が高められるなど免疫機能が向上したためと考えられました。
■用語の説明
≪植物性乳酸菌≫
  主に、植物素材を原料としてよく増殖する乳酸菌。ヨーグルトやチーズの発酵に用いられる酪農乳酸菌や、人や動物の腸に棲息する腸管系乳酸菌と区別して呼ばれる。弊社では、「植物を主原料とする発酵食品から分離され、植物を発酵する能力のある乳酸菌。」

≪乳由来や腸管由来の乳酸菌≫
  乳由来の乳酸菌とは、古来よりヨーグルトやチーズの発酵に用いられてきた乳酸菌。酪農乳酸菌と呼ばれる。腸管由来の乳酸菌は、ヒトや動物の腸に棲息する乳酸菌で、近年、プロバイオティクスとして発酵乳製品に利用されるようになってきた。

≪ラブレ菌≫
  学名 Lactobacillus brevis KB290 (KBはカゴメの菌株ナンバー) → 通称Labre (ラブレ) 京都の漬物「すぐき漬」から分離された植物性乳酸菌、(財)ルイ・パストゥール医学研究センター(京都)で分離され、その免疫賦活作用が研究されてきた。

≪ナチュラルキラー(NK)細胞≫
  大型リンパ球の一種。がん細胞やウィルスに感染した細胞を殺し、体内における免疫反応の最前線で活躍する細胞。 免疫力によるがん予防の主役として期待されている。加齢やストレスによってその活性が低下することが知られている。

≪NK活性≫
  NK活性とは、NK細胞ががん細胞などを攻撃して殺してしまう働きの強さを表し、免疫力の指標となる。

≪インターフェロン-α(IFN-α)≫
  抗ウィルス活性を持つ生体内で作られるたんぱく質。NK細胞を活性化させる働きもある。 抗がん剤やC型肝炎の治療薬として使用されている。 C型慢性肝炎患者へのIFN治療の長期追跡研究では、肝がんに対する一定の予防効果が明らかになってきている。最近の研究では自然免疫やがん抑制遺伝子の活性化に重要な役割を果たしていることが明らかになってきている。

≪IFN-α産生能≫
  ウィルスなどの刺激により細胞がIFN-αを作り出す能力。

≪サルモネラ菌≫
  自然界に広く分布している食中毒(腸炎など)の原因となる病原菌で、熱に弱く、60℃、10〜20分の加熱により死滅する。サルモネラ食中毒は、牛・豚・鶏などの食肉、卵などが主な原因食品であり、ペットからの感染も要注意とされている。今回実験に使用したのは、ネズミチフス菌と呼ばれる種。

≪抗体≫
  体の中に異物(抗原)が侵入したとき、それに対応して生成されるたんぱく質(免疫グロブリン)。その抗原に対してのみ反応し、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDの5種類がある。

≪IgA≫
  鼻汁、唾液、涙、胃液、気道、消化管、生殖器などの粘膜に多く含まれ、外界から体内に侵入しようとする病原菌やウィルスに対する一次防衛線で活躍する抗体。また、初乳に豊富に含まれ、抵抗力の弱い赤ちゃんが感染により病気になるのを防ぐことに役立つと考えられている。腸管内においても粘膜中のIgA(分泌型)が、食中毒菌をはじめとした、病原菌の排除に重要な役割を担っている。

≪総IgAとサルモネラ菌特異的IgA≫
  抗原と抗体の反応は1:1の関係にある。腸管内には様々な抗原が存在し、免疫系はそれぞれに対して対応できる様々な抗体を産生する。総IgAとは、さまざまな抗原に対応するすべてのIgAを指し、サルモネラ菌特異的IgAはすべてのIgAの中で、サルモネラ菌に対応する(サルモネラ菌だけに反応できる)IgAを指す。