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カゴメ、宇宙日本食を開発~JAXA、日本食品科学工学会との共同プロジェクト~

2006年12月15日

 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と(社)日本食品科学工学会との共同プロジェクトに参画し、宇宙食の開発を行っています。
現在、野菜飲料ゼリータイプや完熟トマトと魚介のパエリア用ソース、ケチャップなど、数種類の食品の試作試験を行っており、2010年の国際宇宙ステーション(ISS)における長期滞在時に、日本人宇宙飛行士に利用していただけるよう開発を進めております。
なお、本内容は2006年12月5日のJAXAからのプレスリリースでも紹介されています。
■プロジェクトの背景
 2010年の完成を目指し、現在、国際的プロジェクトとしてISS(国際宇宙ステーション)の組み立てが進められています。このISSに、宇宙飛行士は約3〜6ヶ月間滞在し、様々な研究を行う予定になっています。日本も、「きぼう」という実験棟に、日本人宇宙飛行士が滞在し、宇宙空間や無重力の環境を利用した研究を行う予定です。長期間宇宙に滞在するため、宇宙飛行士にとっては健康管理が重要となります。閉鎖空間における精神的な問題のほか、直接的なものとして、放射線や無重力の影響を受けます。すなわち、放射線によって発生する活性酸素や、カルシウムなどのミネラルの吸収率の低下、便秘といったことが問題になるといわれています。健康管理において、食事は重要です。NASAには200種類ほど宇宙食がありますが、その中に日本的なものはほとんど無いのが現状です。
そこで、日本の食品企業12社とJAXA、日本食品科学工学会が共同で、「食品の生理機能を活かした宇宙食」そして「日本らしい宇宙食」の開発を目的とし、プロジェクトを進めてまいりました。
■プロジェクトの目的

 2010年の「きぼう」における長期滞在時に、日本人宇宙飛行士が利用できる「日本的な宇宙食」、「食品の生理機能を活かした宇宙食」を開発すること。

■カゴメの取り組み

 野菜にはビタミン、ミネラルが豊富に含まれており、体の調子を整えるためにも重要であるといわれております。またカゴメでは、野菜に含まれる生体を調節する成分の研究を行っており、特に野菜の持つカロテノイドなどの色素が、強い抗酸化作用を有することを明らかにしてまいりました。そこで今回、野菜に関する今までの知見を考慮した宇宙日本食を提案することにしました。宇宙生活において、放射線によって発生する活性酸素や、ミネラルの吸収率の低下、便秘などの問題が発生することが考えられますが、これらの提案食品がなんらかの解決策に繋がればと思っています。また、宇宙での結果は、地球上のわれわれの健康管理にも利用できると考えられます。 以下に、現在提案している宇宙食の一例をご紹介します(図1)。これらは、2003年10月に行われた第18回「世界宇宙飛行士会議」などで宇宙飛行士の方々に実際に試食していただき、アドバイスを頂きました。


図1.宇宙食用特別フィルムに包まれた宇宙食サンプル

 (図1説明)
宇宙食用に特別に試作されたフィルムパウチを用いて食品を梱包します。左から野菜飲料ゼリータイプ、完熟トマトと魚介のリゾット用ソース、ケチャップ(注:本写真は開発中のものです)

〇野菜飲料(ゼリータイプ)
 野菜に含まれるカロテノイドが放射線により発生する活性酸素の消去に、食物繊維が無重力の課題に答えてくれるのではないか、という点で注目されています。宇宙ステーションの中では、水系の飲料が飛散してしまうと、計器等に問題を起こす可能性があります。ゼリー状の飲料はこの問題へのひとつの解決策であるといえます。今回は、ニンジンタイプとトマトタイプの2種類を提案しています。
〇完熟トマトと魚介のパエリア用ソース、大豆と根菜のまぜごはん用ソース
 宇宙での野菜不足を解消するため、ご飯に混ぜて、手軽に野菜をたっぷり取れる食品を考えました。カゴメデリシリーズにおける『素材のうまみを最大限に活かした本格的なおいしさ』 『化学調味料無添加』の技術を応用し、完熟トマトと魚介のパエリア用ソースと大豆と根菜のまぜごはん用ソースの2種類を提案しています。
〇ケチャップ、とんかつ(野菜)ソース
トマトケチャップは、抗酸化作用を有するリコピンをたっぷり含んだ真っ赤なトマトを利用しています。また、化学調味料、着色料、保存料を一切使っていないため、「自然のおいしさ」である野菜の調味料といえます。とんかつ(野菜)ソースは、独自の「醸熟」製法により、野菜・果実・酢・スパイスからじっくり造った自然な調味料です。ソースには、食欲を増す作用も報告されています。
宇宙食の味が物足りない時に、鮮やかな赤色のケチャップや食欲を増すソースを加えることで、食事がもっと楽しくなるかもしれません。
■用語の説明
JAXA:
2003年10月、ISAS(宇宙科学研究所)、NAL(航空宇宙技術研究所)、NASDA(宇宙開発事業団)が統合し、独立行政法人「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」が誕生した。宇宙開発によって、日本の経済発展、生活の質の向上、安全の確保、人類の持続的発展を目指す機関。
食品科学工学会:
食品科学工学における情報収集、調査、分析、その提供を行うことで、食品科学工学の向上を図り、食生活の向上に寄与する事を目的とした学術団体。
ISS(国際宇宙ステーション):
ISSは、地上約400キロメートル上空に建設が進められている巨大な有人施設で、 1周約90分の早さで地球の軌道上を廻っている。現在アメリカ・ロシアをはじめ欧州・カナダなど世界15カ国が参加しており、各国が最新技術を結集したこの国際プロジェクトに、日本も「きぼう」日本実験棟の開発で参加している。
ISSは1998年11月に最初の打ち上げが始まり、以来構成パーツを合計40数回にわけて打ち上げている。組み立てはロボットアームの操作や宇宙飛行士の船外活動(宇宙空間に出て作業すること)によって行われ、完成予定の2010年にはサッカー場ほどの巨大な「宇宙の研究所」になる予定である。この有人施設で、宇宙だけの特別な環境を利用して、天文学や生命科学、材料科学など、さまざまな研究や実験・観測が行われる。(JAXAホームページより抜粋)
カロテノイド:
主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素で、カロテノイドのうちβ-カロテンなどは体内でビタミンAに変換される。トマトにはリコピン(赤色)、赤ピーマンにはカプサンチン(赤色)、ニンジンにはβ-カロテン(橙色)が特徴的に含まれる。最近は、抗酸化作用による疾病予防作用が注目されている。