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カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター(京都府京都市)とLactobacillus brevis KB290(以下、ラブレ菌)の消化液耐性について共同研究を進めています。今回、ラブレ菌が人工消化液中で生きぬく強さと、ラブレ菌が分泌するネバネバ成分との関係を解明しました。本研究内容を本年3月24ー27日に東京で開催された日本農芸化学会2007年度大会において発表しました。 | |
■研究者のコメント | |
ヒトの健康維持、増進に寄与する乳酸菌がその効果を発揮するためには、生きて腸まで届くことが大切です。生きて腸まで届くためには胃液や腸液といった消化液に対して生きぬくことが重要です。ラブレ菌は人工消化液に対して耐性が高く、生きぬくことがわかっています。また、ラブレ菌は左の写真のようにEPS(Extracellular polysaccharide;ネバネバ成分)を分泌します。本研究により、ラブレ菌のネバネバ成分が消化液に対する耐性を発揮する一つの要因であることが明らかになりました。 写真;電子顕微鏡により観察したラブレ菌白い糸状のものが分泌されたEPS (画像提供 (株)アイカム) | |
■研究の背景 | |
ラブレ菌は自身を覆うように細胞外多糖(以下、EPS)を分泌する乳酸菌です。またin vitroモデル(人工の消化管モデル)での試験において、人工消化液に対する耐性が高く、腸で生きぬく力に優れた乳酸菌であることが示唆されました(日本乳酸菌学会2005年度大会発表)。しかし、生きぬく力のメカニズムについては未だ明確ではありません。よって、ラブレ菌が分泌するEPSに注目し、人工消化液耐性との関係について、研究を行ないました。 | |
■研究概要 | |
本研究ではEPSの有無が人工消化液に対する耐性に影響するかを調べるために、ラブレ菌、EPSを分泌しないラブレ菌変異株(以下、変異株)(図1)、そしてラブレ菌と同種でありEPSを分泌しない基準株について、in vitroモデルを用いて比較しました(実験1)。また、ラブレ菌の人工消化液に対する耐性にはEPSが重要であることが示唆されたので、ラブレ菌および変異株にEPSを除去する機械的な処理を行い、同様にin vitroモデルを用いて人工消化液に対する耐性を比較しました(実験2)。 【実験1】 図2. 基準株、ラブレ菌、変異株のin vitroモデルによる人工消化液に対する耐性 * : 有意差有り (p < 0.05) ラブレ菌はEPSを分泌しない変異株や基準株と比較して人工消化液に対する耐性が高いことがわかりました。 【実験2】 図3. ラブレ菌および変異株のEPS除去処理の有無による人工消化液に対する耐性の違い * : 有意差有り (p < 0.05) ラブレ菌では、EPS除去処理を行なうと生残率が有意に減少しました。一方、変異株ではEPS除去処理の有無で生残率に差が見られませんでした。なお、ラブレ菌では、EPS除去処理によりEPSに由来する性質(菌体当たりの糖含量や凝集性)が失われることを確認しています。 以上のことから、ラブレ菌が消化液に対する耐性を発揮して腸まで生きぬくためには、ラブレ菌に特徴的なEPS(ネバネバ成分)が一つの要因であることが明らかになりました。 | |
■用語説明 | |
≪ラブレ菌≫ | |