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リコピンに、骨の健康維持効果が期待 ーカゴメ、(独)国立健康・栄養研究所との共同研究―

2007年7月23日



カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、独立行政法人国立健康・栄養研究所(東京都新宿区)石見佳子先生との研究で、リコピンがマウスの骨密度低下を抑制することを確認しました。
なお、本研究内容は2007年度日本骨代謝学会(7月19日〜21日、大阪国際会議場)において発表いたしました。

■共同研究者 (独)国立健康・栄養研究所 石見佳子先生のコメント
本研究は、老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)を用いて、低代謝回転型の骨代謝に対するリコピンの効果を評価したものです。リコピンの骨代謝調節作用を評価した研究は極めて少なく、細胞を使った評価が数例あるだけです。そのため、今回のように動物を用いてリコピンの骨密度低下抑制作用を確認した報告は、大変意義あるものと考えます。本評価では、リコピンの作用メカニズムを解明することはできていませんので、今後は作用メカニズムを解明し、骨代謝におけるリコピンの有用性を、より明確にしていく必要があります。近年、野菜の摂取と骨量が相関するという疫学研究が報告されていることから、リコピンを含む野菜の様々な成分が骨の健康に寄与している可能性が示唆されます。


■研究の背景
リコピンはトマトに含まれているカロテノイドの一種で、抗酸化作用を有することが知られています。その強い抗酸化作用から、近年、種々の疾病予防を目的とした多くの研究が行われており、骨粗鬆症もそれら疾病の一つとして着目されています。骨粗鬆症は、高齢化社会を迎えた先進国では、その対策が医療のみならず社会的にも重要な課題となっている疾病で、我が国では五十歳以上の女性の三人に一人、男性では九人に一人が発症すると言われています。カゴメでは、トマトに豊富に含まれているリコピンに注目し、リコピンの骨粗鬆症予防効果について研究を行ってきました。

■研究概要
目的
リコピンはトマトに豊富に含まれるカロテノイドの一種で、近年、その抗酸化作用が注目され、疾病予防を目的とした多くの研究が行なわれています。骨粗鬆症もそれら疾病の一つとして着目されており、これまでに、破骨細胞形成の抑制作用や破骨細胞による骨吸収の抑制等が報告されています。また、骨芽細胞様株細胞において、細胞増殖の促進や分化の誘導が報告されていますが、現在のところ骨密度に対する作用については報告されていません。そこで、本研究では老年性骨粗鬆症モデルマウス( SAMP6)を用いて、リコピンの骨密度に与える影響を検討しました。

内容
雄性SAMP6マウスを対照群(SAMPCont群)、0.05%リコピン含有飼料飼育群(SAMPL0.05群)、0.25%リコピン含有飼料飼育群(SAMPL0.25群)の3群に分けました。また、SAMP6は環境により老化の進行が異なることから、老化の進行を確認するため正常な老化を示す、同系のSAMR1マウス(SAMR1群)を対照とした、全4群(n=8)としました。SAMP6マウスの骨密度は18-20週齢をピークに低下することが報告されており、本研究では、加齢に伴う骨密度の低下に対するリコピンの作用を評価するため、動物は骨密度が低下しはじめる18週齢のマウスを用いました。AIN-93Mを基本とする餌で8週間飼育した後、大腿骨と脛骨を摘出し、DXA法にて骨密度を測定しました。また、骨密度の変化を視覚的に捉えるため、摘出骨の軟X線写真を撮影しました。


図1.大腿骨及び脛骨の骨密度
(mean±S.E.ANOVA P<0.05 異符号間に有意差あり)



SAMR1群 SAMPCont群 SAMPL0.05群 SAMPL0.25群
図2.脛骨の軟X線画像

図1はマウスから摘出した大腿骨と脛骨の骨密度をDXA法により計測した結果です。SAMPCont群の大腿骨及び脛骨骨密度はSAMR1群に比べて有意に低値を示したことから、SAMP6の老化が進み、骨粗鬆症を発症していることが確認されました。SAMPL0.25群の脛骨骨密度は、SAMPCont群に比べて、有意に高値を示したことから、リコピンの骨密度低下抑制作用が確認されました。図2は脛骨を軟X線撮影した結果です。この画像では白色の発光が強いほど、骨密度が高いことを示しています。SAMPCont群はSAMR1群と比べて、白色の発光が弱く、SAMPL0.25群はSAMPCont群と比べて、白色の発光が強くなっていることから、図1のDXA法による骨密度と同じ結果が得られました。
このように、リコピンが骨密度の低下を抑制する作用を有することから、リコピンの骨の健康維持効果が示唆されました。

■用語の説明
カロテノイド
主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素で、カロテノイドのうちβ-カロテンなどは体内でビタミンAに変換される。トマトにはリコピン(赤色)、ニンジンにはβ-カロテン(橙色)、赤ピーマンにはカプサンチン(赤色)が特徴的に含まれる。最近は、抗酸化作用による疾病予防作用が注目されている。

リコピン
カロテノイドの1つで、トマトに多く含まれる赤い色素。脂溶性であることから油とともに摂取すると吸収性が高まります。カロテノイドの中で抗酸化作用が最も高く、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病の予防効果が期待されています。疾病の予防の観点から、これらの抗酸化物質を効率よく吸収し、体内のリコピン濃度を高めることが重要だと考えられます。

骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、骨密度が低下して骨がもろくなり、骨折しやすくなる疾病です。骨粗鬆症は、その発症要因から様々な種類がありますが、最も多いのが閉経後骨粗鬆症で、 50歳以上の女性では、三人に一人が骨粗鬆症であるといわれています。骨粗鬆症は原発性と続発性に分類され、閉経後及び老年性骨粗鬆症は前者に分類されます。

骨代謝
破骨細胞が古い骨を溶かして壊していくことを骨吸収、反対に骨芽細胞が新しく骨を作ることを骨形成といい、骨吸収と骨形成からなる骨の新陳代謝を骨代謝といいます。健康な成人では、この骨代謝のバランスがとれていますが、加齢や閉経などによってこのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ると骨粗鬆症になります。

骨代謝回転
骨吸収と骨形成は同一部位で継続して起こっており、吸収・形成・休止の一連のサイクルを骨代謝回転といいます。一般的に、老年性骨粗鬆症は低代謝回転型、閉経後骨粗鬆症は高代謝回転型と言われています。

老年性骨粗鬆症モデルマウス(SMAP6)
SAMとはSenescence(老化)-Accelerated(促進される)Mouse(マウス)の略で、老化が促進される傾向(Prone)があるマウスをSAMP、そして同じ系統でも老化に対して抵抗性(Resistance)があるマウスをSAMRと呼んでいます。SAMPは、自然発症する老年性疾病の種類によって1から11に分けられており、老年性骨粗鬆症を発症するマウスはSAMP6と呼ばれています。

骨密度
骨密度とは、一定の体積あたりの骨量(骨のミネラル成分の量)のことです。男性は 20-40歳代、女性は20-30歳代がピークになり、それ以降は減少していきます。骨密度の減り方には個人差がありますが、骨粗鬆症の指標として用いられています。

DXA法
DXAとは、Dual Energy X-Ray Absoptiometryの略で、2種類のエネルギーレベルのX線の透過率の差を利用して骨密度を測定する精度の高い骨密度検査法です。現在、その簡便さから病院等に広く普及しています。


【資料】学会発表の要旨

老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)におけるリコピンの骨密度への影響
ーEffects of Lycopene onBone Mineral Density in SAMP6 as a senile Osteoprosis Modelー
○山根理学1、稲熊隆博1、石見佳子2(1カゴメ総研、2国立健康・栄養研)

[目的]
リコピンはトマトに豊富に含まれるカロテノイドの一種で、近年、その抗酸化作用が注目され、疾病予防を目的とした多くの研究が行なわれている。骨粗鬆症もそれら疾病の一つとして着目されており、これまでに、骨吸収の抑制及び破骨細胞形成の抑制作用等が報告されている。また、骨芽細胞様株細胞において、細胞増殖の促進や骨型アルカリフォスファターゼの活性化が報告されているが、現在のところ骨密度に対する作用については報告されてない。そこで、本研究では老年性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)を用いて、リコピンの骨密度に及ぼす影響を評価した。

[方法]
雄性SAMP6マウス24匹をコントロール群(SAMPCont群)、0.05%リコピン含有飼料飼育群(SAMPL0.05群)、リコピン0.25%含有飼料飼育群(SAMPL0.25群)の3群に分け、また同系のSAMR1マウスを対照とし(SAMR1群)(n=8)、全4群とした。動物の週齢はSAMP6マウスの骨密度が低下しはじめる18週齢を用いた。飼料はAIN-93Mを基本として8週間飼育した。大腿骨と脛骨を摘出し、DXA法にて骨密度を測定した。また、骨形態計測により、大腿骨近位部の単位骨量、骨梁幅、骨梁数、骨梁間隔を求めた。
[結果](1)試験終了後のSAMPCont群の大腿骨及び脛骨骨密度はSAMR1群に比べて有意に低値を示した。(2)SAMPL0.25群の脛骨骨密度は、SAMPCont群に比べて有意に高値を示した。また、リコピンの効果には用量依存性が認められた。(3)大腿骨近位部の骨形態計測において、SAMPL0.25群の単位骨梁、骨梁幅、骨梁数はSAMPCont群に比べて有意に高値を示し、SAMR1と同等もしくは高値を示した。
[結論]リコピンは老年性骨粗鬆症モデルマウスの海綿骨に作用して、大腿骨及び脛骨の骨密度の低下を抑制する可能性が考えられた。