ニュースリリース ニュースリリース

β-カロテンやリコピンにアトピー性皮膚炎を 抑制する効果が期待 ーカゴメ、広島大学との共同研究

2008年11月27日



 カゴメ株式会社経営企画本部総合研究所(栃木県那須塩原市)は、広島大学医歯薬学総合研究科(広島県広島市) 秀道広教授との共同研究で、β-カロテンやリコピンにアトピー性皮膚炎を抑制できる可能性があることを、動物を用いた試験で確認しました。
なお、本研究内容は第58回日本アレルギー学会秋季学術大会(11月27〜29日、東京国際フォーラム)において発表致します。

■共同研究者 広島大学 秀道広教授のコメント
 今回の結果は、β-カロテンやリコピンの摂取がアトピー性皮膚炎モデルマウスの角層水分量の低下を抑制し、皮膚の炎症細胞の増加を抑制する効果を示しており、β-カロテンを多く含むニンジンやリコピンを多く含むトマトの摂取がアトピー性皮膚炎の抑制につながることを期待させます。

■研究の背景
 アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥、かゆみ、湿疹などを特徴とする慢性的な皮膚の疾患であり、アレルギー性疾患のひとつです。2001年と2002年に行われた全国検診調査によると、小学生のアトピー性皮膚炎の有病率は約11%で、成人しても治らない例の増加が問題になっています。
 2008年にL.Chatziらによって、野菜摂取量が多い妊婦から生まれてくる子は、アトピー性皮膚炎の発症率が低いことが報告されました。このことから、野菜の摂取がアトピー性皮膚炎の発症リスクを低くする可能性が高いと考えられます。また、我々の研究においてニンジンジュースやトマトジュースの摂取が食物アレルギーや花粉症を抑制することを明らかにしており、その有効成分がβ-カロテンやリコピンなどのカロテノイドであることを立証しております。
 そこで今回、β-カロテンやリコピンの摂取が、花粉症や食物アレルギーと同じアレルギー性疾患のひとつであるアトピー性皮膚炎を抑制できるのではないかと考え、本研究を実施しました。

■研究概要
≪目的≫
 アトピー性皮膚炎の特徴として、皮膚の乾燥や炎症細胞の増加などが挙げられます。今回、β-カロテンやリコピンの摂取がアトピー性皮膚炎に与える影響を明らかにするために、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、β-カロテンやリコピンが角層水分量と皮膚の炎症細胞の数に与える影響を評価しました。


≪試験方法≫
 アトピー性皮膚炎モデルマウスであるHRー1マウスは、低ミネラル飼料を摂取させると6〜8週間でアトピー性皮膚炎様症状を発症することが知られています。本試験では、HRー1マウスを以下の4つの群に分けました。

 1)普通飼料を摂取する群(以下、非発症群)
 2)低ミネラル飼料を摂取する群(以下、皮膚炎発症群)
 3)β-カロテン0.1%を含む低ミネラル飼料を摂取する群(以下、β-カロテン摂取群)
 4)リコピン0.1%を含む低ミネラル飼料を摂取する群(以下、リコピン摂取群)

それぞれの飼料を8週間摂取させた後、アトピー性皮膚炎の症状に対するβ-カロテンやリコピンの影響を調べるために、皮膚の角層水分量と皮膚の炎症細胞の数を測定しました。


≪結果≫
 図1は、試験開始から8週間後の皮膚の角層水分量を測定した結果です。角層水分量は、アトピー性皮膚炎患者で低い数値を示すことが知られています。角層水分量は、非発症群に比べて皮膚炎発症群とβ-カロテン摂取群では有意に低値を示しており、アトピー性皮膚炎が誘導されていることがわかりました。一方、β-カロテン摂取群やリコピン摂取群では、皮膚炎発症群と比べて皮膚の角層水分量が有意に高値を示しました。このことから、β-カロテンやリコピンの摂取は、皮膚の角層水分量の低下を抑制することが明らかになりました。

図1.試験開始から8週後の皮膚の角層水分量
図1.試験開始から8週後の皮膚の角層水分量



 図2は、試験開始から8週間後の皮膚の炎症細胞の数を比較した結果です。アトピー性皮膚炎患者の皮膚では、炎症細胞が多くなっていることが知られています。皮膚の炎症細胞の数は、非発症群に比べて皮膚炎発症群、β-カロテン摂取群、リコピン摂取群で有意に高値を示しており、アトピー性皮膚炎の症状があらわれていることを示します。一方、β-カロテン摂取群やリコピン摂取群では、皮膚炎発症群と比べて皮膚の炎症細胞の数が有意に低値を示しました。このことから、β-カロテンやリコピンの摂取は、皮膚の炎症細胞の増加を抑制することが明らかになりました。

図2.試験開始から8週後の皮膚の炎症細胞数
図2.試験開始から8週後の皮膚の炎症細胞数


≪まとめ≫
 今回の研究から、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いた試験でβ-カロテンやリコピンの摂取は、角層水分量の低下抑制、皮膚の炎症細胞の増加抑制作用を示すことが明らかになりました。これらの結果は、β-カロテンを多く含むニンジンやリコピンを多く含むトマトの摂取がアトピー性皮膚炎の抑制につながることを期待させます。



■ 用語の説明

アトピー性皮膚炎:
アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥やかゆみ、湿疹を伴う慢性的な皮膚の疾患で、アレルギー反応を起こしやすい遺伝的体質と深い関わりがある。これまでアトピー性皮膚炎は乳幼児期に発症し、多くは成人までに自然に治るものが多かった。しかし、最近では成人になっても治らないことや、成人で突然発症するケースが報告されており、根本的な治療や予防が望まれている。

カロテノイド:
主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素。ニンジンにはβ-カロテン(橙色)、トマトにはリコピン(赤色)、赤ピーマンにはカプサンチン(赤色)が特徴的に含まれている。最近は、抗酸化作用による疾病予防作用が注目されている。

β-カロテン:
緑黄色野菜に多く含まれる橙色の色素。カロテノイドのひとつで、ニンジンに多く含まれる。体内においてビタミンAに変換されることから、以前よりプロビタミンAとしての重要性が認識されていたが、近年ではβ-カロテン自体の生理作用が着目されており、抗酸化作用に基づくと考えられる種々の疾病予防作用などが報告されている。

リコピン:
緑黄色野菜に多く含まれる赤色の色素。カロテノイドのひとつで、トマトに多く含まれる。カロテノイドの中でも優れた抗酸化活性を有しており、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病の予防作用を示すことが期待されている。脂溶性であることから油と共に摂取すると吸収性が高まる。

表皮:
表皮は、皮膚の最も外側にあり、紫外線や外気などの外的刺激にさらされている部分。表皮は表面から「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」から成る。

角層:
表皮の最も外側に位置し、角層細胞が重なった層。角層は、皮膚最外層で生体内外の境界としての役割があり、特に体内から水分が対外へ逃げるのを防ぐ角層バリアとして機能している。また外界の乾燥した環境でも角層中に水分を保つことができ、角層の柔軟性や表層のなめらかさを維持している。角層は肌のうるおいを保つ重要な役割を果たしている。



【資料】 学会発表の要旨

カロテノイドが皮膚アレルギー性炎症に与える影響の解明

○ 石川信吾、大瀬戸郁美*、稲熊隆博、三原祥嗣*、秀道広*
カゴメ株式会社経営企画本部総合研究所、*広島大学医歯薬学総合研究科皮膚科

【目的】我々は、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドが花粉症や気管支喘息等のアレルギー性疾患を抑制することを明らかにしてきた。今回、低ミネラル餌(HR餌)を投与するとアトピー性皮膚炎様症状を誘発するヘアレスマウスHR-1にカロテノイドを投与し、皮膚症状に与える影響を検討した。【方法】HR1マウスに普通餌(非発症群)、HR餌(発症群)、HR餌+β-カロテン(1mg/g)(β-カロテン摂取群)、またはHR餌+リコピン(1mg/g)(リコピン摂取群)を摂取させ、経時的に角層水分量、経表皮水分喪失量を測定し、皮膚の肉眼的観察とともにHE染色による組織学的観察を行った。【結果】β-カロテン摂取群及びリコピン摂取群は、発症群に比べて角層水分量が有意に高値を示し、経表皮水分喪失量の低下もみられなかった。また、皮膚の肉眼的観察では落屑やシワが軽度であり、HE染色では表皮肥厚の抑制と真皮へ浸潤した炎症細胞数の減少が確認された。【結論】β-カロテン及びリコピンは、角層機能の改善、表皮肥厚の抑制、炎症細胞浸潤の抑制作用を介して皮膚アレルギー性炎症を抑制する効果を持つことが示唆された。