ニュースリリース ニュースリリース

ホウレンソウに血中ホモシステインを低減させる作用を確認 ~動脈硬化の予防に期待~ カゴメ、静岡大学の共同研究

2008年11月17日



 カゴメ株式会社経営企画本部総合研究所(栃木県那須塩原市)は、静岡大学(静岡県静岡市) 杉山公男教授との共同研究で、ホウレンソウに血中ホモシステインを低減させる作用があることを、動物を用いた試験で確認しました。今回の研究成果により、ホウレンソウの摂取による動脈硬化の予防作用が期待できます。本研究内容は、第13回 日本フードファクター学会総会・学術集会(11月17〜18日 タワーホール船堀)において発表いたします。


■共同研究者 静岡大学 杉山公男教授のコメント
 動脈硬化の発症には様々な因子が関与していると考えられています。一般的に知られているのは、血中コレステロールの関与です。今回は、血中コレステロールとは別のメカニズムによって動脈硬化のリスクを高めるといわれている血中ホモシステインに着目致しました。その結果、ホウレンソウに血中ホモシステインを低減させる作用があることを確認しました。その作用物質は、ホウレンソウに豊富に含まれるベタインであると考えられます。血中ホモシステインは喫煙や過度の飲酒などによって増加するといわれています。ホウレンソウなど野菜をしっかりと摂る健康的な生活を心がけることで、危険な疾病へと繋がる動脈硬化を予防しましょう。


■研究の背景
 最近では、ガン、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病で亡くなられる方が約7割に達し、その中でも動脈硬化を中心とする循環器系疾患は大きな割合を占めています。ホモシステインは必須アミノ酸であるメチオニンの中間代謝物として生成しますが、ホモシステインの血中濃度が高まると高ホモシステイン血症となります。高ホモシステイン血症は、動脈硬化の独立したリスク因子と考えられています。一方で、ホウレンソウに多く含まれるベタインという物質は、ホモシステインからメチオニンへの代謝を促すことで、ホモシステインを低減させます。そこで高ホモシステイン血症を発症させたラットを用いて、ホウレンソウによる血中ホモシステイン濃度に与える影響について評価しました。


■研究概要

≪目的≫
 ホウレンソウの摂取による動脈硬化の予防作用を解明するために、高ホモシステイン血症を発症させたラットを用いて、ホウレンソウが血中ホモシステイン濃度に与える影響を評価しました。
≪内容≫
 ラットを、高ホモシステイン血症を発症させない群(正常群)、高ホモシステイン血症を発症させる群(対照群)、高ホモシステイン血症を発症させベタインやホウレンソウを与える群(ベタイン1〜3群、およびホウレンソウ1〜3群)に分けました。ホウレンソウ1〜3群は、ベタイン1〜3群と飼料中のベタイン濃度が同じ(0.05%、0.1%、0.2%)になるようホウレンソウを混合しました。高ホモシステイン血症はグアニジノ酢酸を用いて誘導しました。ラットの群分けと飼料中のベタイン濃度を表に示しました。各群を10日間飼育した後、血中のホモシステイン濃度を測定しました。また肝臓を摘出し、ベタイン濃度とベタイン-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ活性(以下、BHMT活性)を測定しました。



  

試験の結果、ベタインやホウレンソウの摂取によって、濃度依存的に血中ホモシステイン濃度が有意に低減しました(図1)。また、そのとき肝臓中のベタイン濃度は高くなり、BHMT活性が高まることを確認しました。よって、ホウレンソウ中に含まれるベタインが肝臓中に取り込まれ、BHMTの働きによりホモシステインからメチオニンへの代謝が促進されていることが示唆されました(図2)。また、ホウレンソウによる血中ホモシステインの低減作用は、ベタイン単独の場合より強い傾向がみとめられたため、ホウレンソウに含まれるベタイン以外の物質も血中ホモシステインの低減に寄与した可能性が考えられました。
一般的に、ホウレンソウには葉酸が多いことが知られており、葉酸も高ホモシステイン血症を予防する作用のあることが知られています。今回の結果より、ホウレンソウに含まれる葉酸だけでなく、ベタインも高ホモシステイン血症の予防に重要な役割を担っていると考えられます。
以上より、ホウレンソウの摂取は血中ホモシステインを低減させることによって、動脈硬化の予防に有用であることが期待できます。


■ 用語の説明

動脈硬化
動脈が狭くなることで血液の流れが悪くなったり、動脈の壁が堅くもろくなってしまう状態を言います。一般にLDL-コレステロールの増加やHDL-コレステロールの減少などが動脈硬化のリスク因子として知られています。それとは別に、ホモシステインの増加も独立した動脈硬化のリスク因子の1つといわれています。

メチオニン
人が体内で作り出すことのできない必須アミノ酸の1つです。肝臓中でいくつかの中間代謝物を経たのち、システインへと代謝されます。

ホモシステイン
メチオニンがシステインに代謝されるときに中間代謝物として生成します。血中濃度が高まる高ホモシステイン血症は、動脈硬化のリスク因子であるといわれています。

ベタイン
アミノ酸の一種であり、植物ではアカザ科に多く含まれます。アカザ科の野菜にはホウレンソウなどがあります。ベタインはメチル基を供与することによって、ホモシステインからメチオニンへの代謝を促します。

BHMT(ベタイン-ホモシステインS-メチルトランスフェラーゼ)
ベタインのメチル基をホモシステインに転移させる酵素です。肝臓中でホモシステインからメチオニンへの代謝を促します。



【資料】学会発表の要旨

ホウレンソウ摂取による高ホモシステイン血症の改善
○山本紗代1、劉軼群2、大内誠也2、稲熊隆博1、杉山公男2
1カゴメ総研、2静岡大・農

【目的】血漿ホモシステイン (Hcy) 濃度の上昇は動脈硬化の独立した危険因子として知られている1)。葉酸、ベタイン (Bet)、セリンなどHcy代謝に影響を及ぼす化合物は血漿Hcy濃度を低下させる。Betはアカザ科 (特にホレンソウ、ビートなど) の植物に豊富に含まれているが、個別の野菜摂取が血漿Hcy濃度を低下させることを示す実験結果は少ない。本研究では、ラットの高Hcy血症モデルを用い、血漿Hcy濃度に及ぼすホウレンソウ投与の影響を評価した。

【方法】Wistar系雄ラット (6週齢) を予備飼育したのち、25%カゼイン食 (25C)、25C + 0.5%グアニジノ酢酸 (GAA) (25CG)、25CG + Bet、25CG + ホウレンソウ粉末の各食餌を10日間自由摂取させた。食餌へのBetやホウレンソウ添加は、Bet含量として0.05、0.1、0.2%の3段階とした。飼育終了後、血漿Hcy濃度、肝臓のBet、S-アデノシルメチオニン (SAM)、S-アデノシルホモシステイン (SAH) 濃度、肝臓betaine-homocysteine S-methyltransferase(BHMT)活性などを測定した。なお、ホウレンソウは凍結乾燥したのち粉末化して用いた。

【結果・考察】GAA添加により血漿Hcy濃度は上昇し、moderate (> 30・M) な高Hcy血症が誘導された。また、GAA添加により肝臓SAM濃度の低下とSAH濃度の上昇、Bet濃度の低下が見られた。Betおよびホウレンソウ投与群では、食餌中のBet含量に依存して肝臓Bet濃度とBHMT活性は上昇し、逆に血漿Hcy濃度は低下した。ホウレンソウの血漿Hcy低下効果はBetの効果よりも有意に大きかった。以上の結果より、ホウレンソウ投与は実験的高Hcy血症を効果的に抑制しうること、ホウレンソウの効果は主にBetに依るが、Bet以外の成分も関与していることが示唆された。

1) Selhub J, Annu. Rev. Nutr., 19, 217-246 (1999)