ニュースリリース ニュースリリース

リコピンに血中アディポネクチンを増加させる作用を確認 ~メタボリックシンドロームの予防に期待~ カゴメ、北海道大学の共同研究

2008年11月17日



 カゴメ株式会社経営企画本部総合研究所(栃木県那須塩原市)は、北海道大学(北海道函館市) 宮下和夫教授との共同研究で、リコピンに血中アディポネクチンを増加させる作用があることを、動物を用いた試験で確認しました。今回の研究成果から、トマトの摂取によるメタボリックシンドロームの予防作用が期待できます。本研究内容は、第13回 日本フードファクター学会総会・学術集会(11月17〜18日 タワーホール船堀)において発表いたします。


■共同研究者 北海道大学 宮下和夫教授のコメント
 脂肪組織は単なるエネルギーの蓄積器官にとどまらず、様々なアディポサイトカインという生理活性タンパク質を分泌し、身体全体に影響を与えていることが分かってきました。内臓脂肪型肥満によって、脂肪細胞が過剰に肥大すると、これらアディポサイトカインの分泌に変化が生じます。善玉のアディポサイトカインといわれるアディポネクチンは減少し、メタボリックシンドロームが進行する原因となります。よって、アディポネクチンはメタボリックシンドロームの予防に重要な役割を担っていると考えられます。今回、トマトの色素であるリコピンに血中アディポネクチンを増加させる作用を確認しました。メタボリックシンドロームは様々な疾病リスクが高まる状態です。血中アディポネクチンの増加に寄与することは、疾病リスクを低下させるうえで重要だと考えられます。


■研究の背景
 最近、内臓脂肪型肥満が原因で高血糖、脂質異常症および高血圧の状態となるメタボリックシンドロームが問題となっています。厚生労働省の調査により、メタボリックシンドロームは予備群も含め、中高年世代で2000万人近いことが報告されています。この問題に対し、平成20年度からは特定健康診査・特定保健指導が開始されるなど、メタボリックシンドロームの予防は健康を保つために重要です。
 アディポネクチンは脂肪細胞でつくられるアディポサイトカインの一種であり、糖尿病や動脈硬化を予防・改善する作用があります。しかし、内臓脂肪型肥満になるとアディポネクチンは減少し、メタボリックシンドロームがさらに進行してしまいます。そこで、メタボリックシンドローム予防対策として血中アディポネクチン濃度に注目し、リコピンが血中アディポネクチン濃度に与える影響を評価しました。


■研究概要

≪目的≫
 リコピンがメタボリックシンドロームに与える影響を解明するために、糖尿病・肥満マウスを用いて、リコピンが血中アディポネクチン濃度に与える影響を評価しました。
≪方法≫
 試験には自然に糖尿病を発症して肥満するマウス(KK-Ayマウス)を用いました。KK-Ayマウスを通常飼料を与える群(対照)、リコピンを0.05%含む飼料を与える群(リコピン0.05%)、リコピンを0.2%含む飼料を与える群(リコピン0.2%)に分け、4週間飼育した後、血液と脂肪組織を採取しました。血液を用いて、ELISA法により血中アディポネクチン濃度を測定しました。また脂肪組織を用いて、組織中に蓄積したリコピン含量を測定しました。

≪結果・考察≫
 図は血中アディポネクチン濃度の測定結果を示しています。リコピンを0.05%および0.2%含む飼料を与えたマウス(リコピン0.05%、リコピン0.2%)では、リコピンを含まない飼料を与えたマウスに対して、いずれも血中アディポネクチン濃度が有意に増加しました。また、リコピンを含む飼料を与えることによって、脂肪組織中にリコピンが蓄積することを確認しました。
 以上の結果より、リコピンが脂肪組織に蓄積することによって、脂肪組織からのアディポネクチンの分泌に影響を与えた可能性が示唆されました。
 リコピンを多く含むトマトの摂取は、血中アディポネクチンを増加させることによってメタボリックシンドロームの予防に有用であることが期待できます。

図 リコピンの血中アディポネクチン濃度への影響
図 リコピンの血中アディポネクチン濃度への影響
■ 用語の説明

メタボリックシンドローム
内臓脂肪の蓄積がもとで、脳卒中や心筋梗塞などの疾病になりやすい状態を示します。内臓脂肪型肥満に加え、高血糖、脂質異常症、高血圧などのさまざまな疾患をあわせもつ状態です。40歳〜74歳の日本人では、予備群も含め、男性の2人に1人、女性の5人に1人はメタボリックシンドロームの疑いがあるといわれています(厚生労働省 平成16年国民健康・栄養調査より)。
メタボリックシンドロームの診断基準
(1) 腹囲(ウエストサイズ):男性85cm以上、女性90cm以上
(2) 血圧:上が130mmHg以上または下が85mmHg以上
(3) 血糖値:空腹時血糖値110mg以上(1dl当たり)
(4) 血中脂質:中性脂肪150mg以上(1dl当たり)
   またはHDL-コレステロールが40mg未満(1dl当たり)
(1) に加え、(2)〜(4)のうち2項目以上に該当する場合(治療薬を服用している場合を含む)

アディポサイトカイン
脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質の総称であり、アディポネクチン、レプチン、TNF-α(Tumor Necrosis Factor-α)、PAI-1(Plasminogen activator inhibitor-1)、HB-EGF(heparin binding-epidermal growth factor-like growth factor)などがあります。内臓脂肪型肥満によって脂肪細胞が肥大化すると、これらの分泌に変化が生じ、メタボリックシンドロームの進行を促します。

アディポネクチン
アディポサイトカインの一種であり、ヒト血中に5〜10μg/mlの濃度で存在します。糖尿病や動脈硬化を予防・改善する作用が報告されています。内臓脂肪型肥満の状態では血中濃度が減少します。

リコピン
カロテノイドの1つで、トマトに多く含まれる赤い色素です。カロテノイドの中でも優れた抗酸化活性を有しており、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病に予防効果を示すことが期待されています。脂溶性であることから油とともに摂取すると吸収性が高まります。



【資料】学会発表の要旨

リコピンの血漿アディポネクチン増加作用
山本紗代1、○宮下達也1、中井未歩2、細川雅史2、稲熊隆博1、宮下和夫2
1カゴメ総研、2北大院・水産

【目的】メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積により耐糖能異常、高血圧、高脂血症を併発し、心疾患や脳卒中、糖尿病合併症などのリスクが高まった状態であり、社会的にも注目されている。いくつかのカロテノイドにはメタボリックシンドローム予防に関する作用が報告されており、例えばワカメなどに含まれるフコキサンチンは抗肥満作用1)により、メタボリックシンドロームに有用であると考えられる。本研究ではトマトに豊富に含まれるリコピンについて、メタボリックシンドロームに対する影響を評価した。

【方法】糖尿病肥満モデルマウスKK-Ay(雄性、4週齢)に通常飼料もしくはリコピンを0.05%、0.2%混合した飼料を4週間自由摂取させた。投与終了後、エーテル麻酔下にて採血し、血漿中の脂質(総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール等)とアディポネクチンを測定した。また解剖時には、主要臓器、および褐色脂肪組織(BAT)、白色脂肪組織(WAT)を摘出して秤量した。WATについては、リコピン含量を測定した。

【結果・考察】各群とも体重、主要臓器、および脂肪組織(BAT、WAT)の重量、血漿中の脂質への影響は認められなかった。しかし、リコピンの摂取により、アディポネクチンが有意に増加することが分かった。また、リコピン摂取群ではWATへのリコピンの蓄積が認められた。アディポネクチンはWATで産生されることから、WATへ蓄積したリコピンがアディポネクチンの増加に影響を与えたと推察された。アディポネクチンが減少すると耐糖能異常や動脈硬化が促進し、メタボリックシンドロームが進行すると認識されている。リコピンはアディポネクチンを増加することで、メタボリックシンドロームに対して有用であると考えられた。

1) Maeda H et al., Biochem Biophys Res Commun, 332(2), 392-7 (2005)