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リコピンまたはβ-カロテンの摂取が 関節リウマチの発症を遅延させることを確認

2009年9月3日

 

 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、リコピンまたはβ-カロテンの摂取が関節リウマチの発症を遅延させる効果があることを、動物を用いた試験で確認しました。
 なお、本研究内容は日本食品科学工学会 第56回大会(9月10日〜12日、名城大学)において発表致します。

■カゴメ研究者のコメント

 人間に本来備わっている免疫のバランスが乱れると、異物を過剰に攻撃するアレルギー性疾患や、誤って自己を攻撃する自己免疫疾患になります。私達はこれまでに、リコピンまたはβ-カロテンの摂取が、若い人に多いアレルギー性疾患のアトピー性皮膚炎や気管支喘息を抑制する効果があることを明らかにしてきました。今回、リコピンやβ-カロテンの摂取が、高齢の人に多い自己免疫疾患である関節リウマチの発症を遅延させる効果があることがわかりました。
 リコピンを多く含むトマトや、β-カロテンを多く含むニンジンを日常的に摂取することで、免疫バランスを整えて、疾病予防に働くことが期待されます。

■研究の背景

 関節リウマチは、全身性の関節炎とそれに引続き起こる骨破壊を主症状とする自己免疫疾患のひとつです。また、自己免疫疾患の中で最も患者数の多い疾患で、日本では約70〜100万人が罹患していると言われています。発症する年齢は働き盛りである30〜50歳代であり、日常生活に支障をきたすため精神的にも経済的にも大きな負担となります。また、関節リウマチは加齢に伴い患者数が増えていく疾患であるため、今後の高齢化の進行に伴い患者数の増加が予想されています。
 関節リウマチと野菜摂取との関係については、関節リウマチ患者は緑黄色野菜に多く含まれているカロテノイドの血中濃度が低いことや、野菜や果物、オリーブオイルを豊富に使った地中海式食事の摂取が関節リウマチ症状を改善させることなどが報告されています。このことから、緑黄色野菜を多く摂取することで免疫バランスを整えて、関節リウマチを予防や症状を改善する可能性が高いと考えました。
 そこで、今回、トマトに多く含まれるリコピンまたはニンジンに多く含まれるβ-カロテンの摂取が関節リウマチの予防や改善に効果があるかを評価しました。

■研究概要

≪目的≫

 関節リウマチの原因は未だ明らかにされていませんが、何らかの原因で本来自分の身体を守るための免疫が異常をきたして、自分の身体を攻撃してしまうことから起こると考えられています。その結果として、関節炎や骨破壊などの症状があらわれます。
 今回、関節リウマチの動物モデルとして、1型コラーゲン(C2)を皮内に投与することで関節炎を誘導するコラーゲン誘導関節炎モデル(CIAモデル)を用いました。2型コラーゲンは、主に皮膚に存在する1型コラーゲンと異なり、主に関節軟骨に存在します。この2型コラーゲンを皮内投与することで、関節に存在している2型コラーゲンも異物として認識してしまうため、関節炎が起こります。
 今回、この動物モデルを用いて、リコピンまたはβ-カロテンが関節リウマチに与える影響について評価することを目的としました。

≪試験の方法≫

 本試験では、CIAモデルに用いられるDBA/1Jマウスを以下の3群に分けて評価を行ないました。

1.対照群:通常飼料を摂取させる群(n=10)

2.リコピン摂取群:リコピンを含む飼料を摂取させる群(n=9)

3.β-カロテン摂取群 :β-カロテンを含む飼料を摂取させる群(n=9)


 それぞれの飼料を2週間摂取させた後、C2を皮内投与し、また21日後に再度C2を投与して関節炎を誘導しました。21日目以降、定期的に関節炎スコアを測定し関節炎発症率を算出しました。

≪結果≫

 図1は、関節炎発症率の結果です。関節炎発症率とは、各群で関節炎を発症したマウスの割合で、図1には関節炎発症率の推移を示しています。対照群において、21日目の2回目のC2投与後、発症率が急激に上昇し、36日目には70%に達しました。一方、リコピン摂取群及びβ-カロテン摂取群では、対照群と比べて関節炎の発症が遅延する傾向が確認されました。

関節炎発症率に与える影響
図1.関節炎発症率に与える影響
(n=9-10、Fisher's exact test、vs.対照群)


 図2は、関節炎スコアの結果です。関節炎スコアとは、マウスの各足の関節炎重症度(足の腫脹)を0〜4点で評価し、4足の合計点を求めた値です。図2には、各群の関節炎スコアの平均点の推移を示しています。関節炎スコアは、対照群と比べてリコピン摂取群及びβ-カロテン摂取群ではスコアの上昇が遅延しており、リコピン摂取群では29日目において、β-カロテン摂取群では29日目と31日目において発症群と比べて、有意な差があることが確認されました。

関節炎スコアに与える影響
図2.関節炎スコアに与える影響
(平均+標準誤差、n=9-10、*P < 0.05、Mann-Whitney U-test、vs.対照群)


≪まとめ≫

 今回の研究から、リコピンまたはβ-カロテンの摂取が関節炎の発症を遅延させる効果があることが明らかになりました。この結果より、リコピンを多く含むトマトやβ-カロテンを多く含むニンジンの摂取が関節リウマチを予防することが期待されます。


■用語の説明

リコピン:
カロテノイドの1つで、トマトに多く含まれる赤色の色素。カロテノイドの中でも優れた抗酸化活性を有しており、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病の予防作用を示すことが期待されています。脂溶性であることから油と共に摂取すると吸収性が高まります。

β-カロテン:
カロテノイドの1つで、ニンジンに多く含まれる橙色の色素。体内においてビタミンAに変換されることから、以前よりプロビタミンAとしての重要性が認識されていたが、近年ではβ-カロテン自体の生理作用が着目されており、抗酸化作用に基づくと考えられる種々の疾病予防作用などが報告されています。

関節リウマチ:
関節リウマチは、本来自己を守るためにある免疫が誤って自己を攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつで、手足をはじめとする全身の関節で激しい痛みと腫れを特徴とする病気です。主な症状は関節炎と炎症の慢性化に伴う関節の骨破壊で、骨破壊が起こると関節が変形し生活に支障をきたします。30〜50歳代での発症が多く、日本では約70〜100万人が罹患していると言われています。加齢に伴い患者数が増えていく疾患で、高齢化にともない患者数が年々増加する傾向にあります。

2型コラーゲン(C2):
2型コラーゲンは、一般的にコラーゲンと言われ皮膚に多く含まれている1型コラーゲンと異なり、関節軟骨に含まれているコラーゲンです。CIAモデルでは、2型コラーゲンを異物として投与することで、関節軟骨に含まれる2型コラーゲンも異物であると誤認し攻撃させることで関節炎を誘導しています。


【資料】学会発表の要旨

リコピン及びβ-カロテンによる関節リウマチ発症遅延作用
○高橋慎吾,石川信吾,森啓信,稲熊隆博
(カゴメ(株)・総研)

【目的】トマトに含まれるリコピンやニンジンに含まれるβ-カロテンには免疫調節作用があることが明らかになっている。自己免疫疾患の一つである関節リウマチについては、疫学調査で血中カロテノイド濃度と関節リウマチの発症に負の関係が報告されていることから、カロテノイド摂取が関節リウマチを抑制することが期待された。そこで、本試験ではリコピン及びβ-カロテンの摂取が関節リウマチに与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】関節リウマチモデルとして2型コラーゲン(C2)誘導関節炎モデルを用いた。雄性DBA/1Jマウスを通常食を摂取させる対照群、リコピン含有飼料(リコピン130mg/100g)を摂取させるリコピン摂取群、β-カロテン含有飼料(β-カロテン130mg/100g)を摂取させるβ-カロテン摂取群の3群に分け、初回C2投与の14日前から試験終了まで各飼料を自由摂食させた。初回C2投与日を0日目とし、0日目及び21日目にC2投与を行い、関節炎を惹起させた。21日目以降、関節炎スコアを測定し関節炎発症率を算出した。49日目に採血と解剖を行い、血中IL-6と血中抗C2-IgGを測定した。
【結果】関節炎発症率は、対照群は21日目以降発症率が上昇したものの、リコピン摂取群及びβ-カロテン摂取群では発症率の上昇が遅延していた。関節炎スコアについても上昇の遅延が認められ、対照群と比べてリコピン摂取群では29日目、β-カロテン摂取群では29日目及び31日目で有意に低値であった。血中IL-6は、対照群と比べてリコピン摂取群及びβ-カロテン摂取群では有意に低値であった。血中抗C2-IgGについては、有意差は認められなかったものの、対照群と比べてリコピン摂取群及びβ-カロテン摂取群で低値であった。これらの結果より、リコピン及びβ-カロテンの摂取は関節炎の発症を遅延させることが明らかとなり、トマト及びニンジンの摂取に関節リウマチの予防作用があることが推察された。