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ビートに動脈硬化の予防作用が期待 ~血中ホモシステインを低減させる作用を確認~ ーカゴメ、静岡大学の共同研究ー

2009年9月3日

 

 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、静岡大学(静岡県静岡市) 杉山公男教授との共同研究で、ビートに血中ホモシステインを低減させる作用があることを、動物を用いた試験で確認しました。今回の研究成果により、ビートの摂取による動脈硬化の予防作用が期待できます。
 なお、本研究内容は日本食品科学工学会 第56回大会(9月10〜12日、名城大学)において発表致します。

■研究の背景

 動脈硬化が原因となって発症する心疾患や脳血管疾患は、主な死亡原因のうち約3割近くを占め(平成20年 厚生労働省調べ)、動脈硬化の予防は重要視されています。動脈硬化のリスクを高める因子として、一般的には血中コレステロールの影響がよく知られています。本研究では、血中コレステロールとは別のメカニズムによって動脈硬化のリスクを高めるといわれている血中ホモシステインに着目しました。血中ホモシステインは血管内皮を傷つけることなどによって、動脈硬化を促進すると考えられています。一方で、ベタインはホモシステインからメチオニンへの代謝を促すことでホモシステインを低減させ(図1)、動脈硬化を予防することが期待できます。
 ベタインを多く含む野菜として、ホウレンソウやビートなどのアカザ科の野菜があげられます。特にビートは西洋料理では古くから利用されており、ロシアの赤いスープであるボルシチに用いる野菜として有名です。
 そこで、血中ホモシステインへの影響を評価することによって、ビートの摂取が動脈硬化の予防に有用であるか検討しました。
ホモシステインが、システインに代謝されない状態が続くと、血中濃度が高くなり血管を傷つける。しかし、ベタインにより、ホモシステインからメチオニンへの代謝を促進すれば、ホモシステインの増加を抑制でき、血中濃度を低下させることから、動脈硬化の予防につながると考えられます。
図1.ベタインによるホモシステインからメチオニンへの代謝


■共同研究者 静岡大学 杉山公男教授のコメント

 動脈硬化は心疾患や脳血管疾患といった危険な疾患の原因となります。本研究では、動脈硬化のリスクを高める因子として血中ホモシステインに着目しました。今までにホウレンソウに血中ホモシステインを低減させる作用を確認しており、今回ビートにも同様の作用があることを確認しました。その作用物質は、ビートやホウレンソウに豊富に含まれるベタインであると考えられます。ビートやホウレンソウなどの野菜を日常的に摂取することで、動脈硬化の予防に繋がることが期待されます。

■研究概要

≪目的≫

 血中ホモシステインの増加を誘導したラットを用いて、ビートの摂取が血中ホモシステインへ与える影響を評価しました。

≪試験の方法≫

 正常群には通常飼料を与え、その他の群にはグアニジノ酢酸(GAA)を加えた飼料を与えて血中ホモシステインの増加を誘導しました。群分けは、濃度の異なるベタイン純品を与えるベタイン1,2群、ビート粉末を与えるビート1,2群、そしてビートジュース群としました。飼料中のベタイン濃度は表に示しました。各群を10日間飼育した後、血中ホモシステイン濃度と肝臓中ベタイン濃度を測定しました。


表.ラットの群分けと飼料中のベタイン濃度
ラットの群分けと飼料中のベタイン濃度


ビートの摂取による血中ホモシステイン濃度への影響
図2.ビートの摂取による血中ホモシステイン濃度への影響
(平均±標準誤差、n=7-9、異符号間で有意差ありP<0.05 (Tukey-Kramer))


≪結果とまとめ≫

 血中ホモシステイン濃度は、対照群に対してベタイン群、ビート群、およびビートジュース群において飼料中のベタイン濃度に依存し有意に低下しました(図2)。このとき肝臓中のベタイン濃度は上昇しました。
 以上より、ビートの摂取は血中ホモシステインを低減させることによって、動脈硬化の予防に有用であることが期待できます。


■用語の説明

動脈硬化:
動脈の血管が肥厚し伸展性の低下を示す状態のことであり、心疾患や脳血管疾患の原因となります。動脈硬化のリスクを高める因子として、脂質異常症(LDL-コレステロールの増加やHDL-コレステロールの減少)、糖尿病、高血圧、喫煙などがいわれてきました。近年では、血中ホモシステインの増加も独立した動脈硬化のリスク因子として広く認識されています。

メチオニン:
人が体内で作り出すことのできない9種類の必須アミノ酸の1つです。生体内でメチル基供与体として重要なはたらきをし、脂肪肝の予防などに関わっています。また、肝臓中でいくつかの中間代謝物を経たのち、システインを生成します。

ホモシステイン:
メチオニンがシステインへ代謝されるときに中間代謝物として生成します。ヒトの血中濃度は通常5〜15μM程度です。血中ホモシステインは血管内皮を傷つけることなどによって、動脈硬化を促進すると考えられています。血中ホモシステインの増加の原因として、喫煙、過度の飲酒、加齢、メチオニン代謝系酵素の遺伝的疾患、ビタミン(葉酸、B6、B12)の欠乏などがあります。

ベタイン:
ホモシステインにメチル基を供与し、メチオニンへの代謝を促します。野菜ではアカザ科のものに特異的に多く含まれています。アカザ科の野菜として主なものにホウレンソウやビートがあります。


【資料】学会発表の要旨(食品科学工学会)

ビート摂取による高ホモシステイン血症の改善
○山本紗代、劉 軼群、稲熊隆博、杉山公男
(カゴメ(株)・総研、静岡大・農)

【目的】高ホモシステイン(Hcy)血症は動脈硬化の独立した危険因子として知られている。葉酸、ベタイン(Bet)、そしてセリンなどの化合物はHcy代謝に影響を及ぼし、血漿Hcy濃度が低下する。Betはビートやホウレンソウなどのアカザ科の植物に多く含まれるため、これらの野菜摂取による高Hcy血症の予防が期待できる。本研究ではラットの高Hcy血症モデルにおけるビート摂取の影響を評価した。
【方法】Wistar系雄性ラットに、以下の各食餌を10日間自由摂取させた。群分けは25%カゼイン食(25C)の正常群、25Cに0.5%グアニジノ酢酸(GAA)を添加した対照群、対照群にBetを加えたBet摂取群、同様にビートを加えたビート摂取群とした。ビートは凍結乾燥粉末もしくはジュースを用いた。飼育終了後、血漿Hcy濃度、肝臓Bet濃度、そして肝臓ベタイン‐ホモシステイン S‐メチル転移酵素(BHMT)活性を測定した。このGAAで誘導した高Hcy血症モデルでの評価に加え、Betの前駆体となるコリンを欠乏させて誘導した高Hcy血症モデルにおいても同様の評価を行った。
【結果】GAA誘導により血漿Hcy濃度は上昇したが、Betおよびビート摂取群では食餌中のBet含量に依存して血漿Hcy濃度の上昇を有意に抑制した。同群において、肝臓Bet濃度とBHMT活性は上昇した。また、コリン欠乏誘導モデルにおいても同様にBetやビートの摂取による血漿Hcy濃度の有意な上昇抑制が認められた。以上の結果より、ビートの摂取によってBetがHcyからメチオニンへの再メチル化を促進し、高Hcy血症の予防に有効であると考えられた。