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野菜ジュースを活用した野菜摂取により 青年期における生活習慣病のリスク低減に期待 ~カゴメ、兵庫県健康財団の共同研究~

年月日

 

カゴメ株式会社(社長:西秀訓)は、財団法人兵庫県健康財団(会長:家森幸男)との共同研究で、青年期における生活習慣病のリスクは血中カロテノイド濃度が関連しており、野菜摂取の方法として野菜ジュースを活用することで、血中カロテノイド濃度が上昇し、LDLコレステロールや腹囲が減少することを確認しました。青年期において野菜摂取の方法として野菜ジュースの活用により、生活習慣病のリスクの低減が期待できます。
なお、本研究内容は2009年10月に壮年~老年期を対象とした研究結果(2009年11月12日にリリース発信済み)と併せて、第14回国際SHRシンポジウム(9月24日~25日、カナダ・モントリオール)において発表しました。

■共同研究者 兵庫県健康財団 家森幸男会長のコメント
生活習慣病を防ぐ要因の一つとして、食習慣を見直すことがあげられ、その中でも野菜摂取量を増やすことは大変重要なことです。本研究では、野菜が不足している青年期の方により多くの野菜を摂取してもらう方法として、野菜ジュースの活用を調査しました。その結果、野菜摂取の指標である血中カロテノイド濃度が上昇し、生活習慣病のリスクの軽減が認められました。青年期にいろいろな手段を用いてより多くの野菜を摂取することは、生活習慣病のリスクの軽減に繋がります。無理せずに長期的に野菜をより多く摂取する方法として、野菜ジュースを上手に活用しましょう。

■研究の背景
高血圧症・高脂血症・糖尿病などは、生活習慣に関与していることが多いことから、生活習慣病と呼ばれています。2002年の厚生労働省の調査では、人口の47%がこの3つのいずれかに該当しており、社会問題となっています。生活習慣病の要因の一つに不適切な食習慣があり、なかでも野菜の摂取不足があげられます。野菜にはビタミンやミネラルなどの栄養素があり、また、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドには、活性酸素を消去する作用があり、生活習慣病のリスクの軽減に有効と考えられます。
しかし、日本人の野菜摂取量は健康日本21で提唱されている目標値350グラム以上に対して、実際の摂取量は約295グラム(2008年 国民健康・栄養調査調べ)と大きく不足しています。特に、生活習慣病の予防に重要な時期である青年期において、野菜摂取の不足が指摘されています。この現状を踏まえ、野菜の摂取方法のひとつとして野菜ジュースを活用することにより青年期の生活習慣病のリスクの軽減が期待できると考え、本研究を実施しました。

■研究概要
≪目的≫
本研究では以下の2つを目的に試験を行いました。
1.青年期における血中カロテノイド濃度と生活習慣病関連マーカーとの相関を解析し、血中カロテノイド濃度と生活習慣病のリスク軽減との関連性を明らかにする。
2.青年期における野菜ジュースを利用した野菜摂取が血中カロテノイド濃度と生活習慣病関連マーカーに与える影響について明らかにする。

≪試験の方法≫
被験者は兵庫県に在住の大学生で、試験参加の同意を得られた18歳~22歳の49名です。食事バランスガイドを利用した野菜摂取の推奨の指導を全員に実施後、野菜ジュースを1日1本2ヶ月間摂取する群24名(摂取群)と、摂取しない群25名(非摂取群)に分けました。なお、試験には野菜ジュースとして、カゴメ株式会社製『野菜一日これ一本』 200mlを用いました。試験期間の前後で採血、問診を行い、血中カロテノイド濃度と生活習慣病のリスクに大きく関与する血圧、糖、脂質等の生活習慣病関連マーカーを測定しました。そして、血中カロテノイド濃度と生活習慣病関連マーカーとの相関を解析し、さらに試験前後の血中カロテノイド濃度と生活習慣病関連マーカーを比較しました。

[生活習慣病関連マーカー]
血圧マーカー: 収縮期血圧、拡張期血圧
糖マーカー : 空腹時血糖、HOMA-IR
脂質マーカー : 中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロール
血中カロテノイド濃度 : α-カロテン、β-カロテン、リコピン、ルテイン、β-クリプトキサンチン
その他マーカー : 腹囲

≪結果≫
野菜ジュース摂取前における血中カロテノイド濃度と生活習慣病関連マーカーとの相関を解析した結果、様々な血中カロテノイド濃度と、生活習慣病関連マーカーのうちHDLコレステロール、腹囲、空腹時血糖との間にそれぞれ有意な相関を確認しました。
なお、青年期の方と過去に調査しました壮年~老年期の方との血中カロテノイド濃度を比較したところ、青年期では約半分と顕著に低く、実際に本試験で行った簡易食事調査でも、約120gと低い値でした。これまでどおり、青年期は、野菜摂取が不足していることが示唆されました。
次に、試験前後の血中カロテノイド濃度を測定した結果、摂取群と非摂取群において血中カロテノイド濃度が上昇しましたが、摂取群は非摂取群よりも有意に血中カロテノイド濃度の上昇を確認いたしました(図1)。

図1 血中カロテノイドの変化、血中総カロテノイド濃度

図1 血中カロテノイドの変化
(平均±標準誤差, *:p<0.05(ANOVA)


また、試験前後の生活習慣病関連マーカーを比較したところ、有意な差があった生活習慣病関連マーカーのうち、腹囲は摂取群と非摂取群の両方で改善が認められましたが、LDLコレステロールでは摂取群のみが有意に減少しました(図2)。
なお、摂取群の低血圧の方は、有意に正常な値になりました。


図2. 試験前後のLDLコレステロールの変化、LDLコレステロール

図2. 試験前後のLDLコレステロールの変化
(*:p<0.05 (pared t-test)


≪まとめ≫
青年期は野菜摂取量が少なく、将来生活習慣病に繋がることが考えられました。野菜摂取不足の改善方法として、野菜ジュースの活用も一つの手段であることが示されました。



■用語の説明
カロテノイド:
主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素です。ニンジンにはβ-カロテン(橙色)、トマトにはリコピン(赤色)が特徴的に含まれています。最近は、抗酸化作用による疾病予防作用が注目されています。

HOMA-IR(Homeostasis model assessment insulin reistance index):
空腹時血糖値とインスリン値から算出するインスリン抵抗性の疫学指標です。
計算式:HOMA-IR=空腹時血糖値×インスリン値÷405

食事バランスガイド:
望ましい食生活についてのメッセージを示した「食生活指針」を具体的な行動に結びつけるものとして、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストで示したものです。厚生労働省と農林水産省により2005年6月に決定されました。「食事の基本」を身につけるための望ましい食事のとり方やおおよその量をわかりやすく示しています。



【資料】 学会発表の要旨
Carotenoids and Cardiovascular Disease Risks in Japanese Elderly
and AdolescentsーImplication for Risk Reduction

T. Miyashita 1), S. Murakami, 2) T. Inakuma 1), C. Hayashi 3), M.Mori 4), Y. Yamori 2,4)


1) KAGOME Co.,Ltd Research Institute,
2) Hyogo Prefecture Health Promotion Association,
3) Kobe University Graduate School of Medicine,
4) Mukogawa Women's University Institute for World Health Development

Background: Various antioxidants were proven in 1990's to prevent stroke in SHRSP, which showed increased urinary 8-OHdG excretion as oxidative stress markers. Concomitantly WHO-coordinated CARDIAC Study demonstrated increased 24 hour urinary (24U) 8-OHdG excretion in hypertensive and /or diabetic Africans without medication, indicating the involvement of oxidative stress in the pathogenesis of lifestyle-related diseases.

Design: To prove the association of antioxidants with cardiovascular diseases (CVD) risks, health survey similar to CARDIAC Study was conducted in 43 male and female Japanese elderly aged 56-83 and 49 male and female adolescents aged 18-22 and total carotenoids (TC) including lutein, beta-cryptoxanthin, alpha and beta-carotene and lycopene in the blood were assayed .Elderly and adolescents were randomized into 2 groups, recommended to eat vegetables with or without 200ml of vegetable juice daily for 2 months.

Results: Baseline CVD risks such as systolic blood pressure, triglycerides, insulin resistance (HOMA-IR) were significantly inversely related with TC in the elderly and significantly positively related with HDL in the adolescents. Two month intervention significantly increased TC particularly in vegetable juice plus groups in the elderly and adolescents, and significantly decreased CVD risks in the elderly with higher baselines of triglycerides and HOMA-IR, and significantly reduced LDL cholesterol and abdominal circumference in the adolescents.

Conclusion: Blood TC was significantly associated with CVD risks in Japanese elderly and adolescents, and 2 month interventions to increase vegetables with or without vegetable juice significantly increased TC, concomitantly with significant CVD risk reduction.