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トマト摂取で疲労軽減効果が期待 ~ カゴメ、大阪市立大学との共同研究 ~

2010年9月6日

 

 カゴメ株式会社(社長:西秀訓)は、大阪市立大学医学部(大阪府大阪市)井上正康教授との共同研究で、動物試験においてトマトの摂取が、運動後の疲労の度合いの指標(疲労バイオマーカー)の増加を抑制することを明らかにしました。トマトを摂取することで疲労軽減効果が期待されます。
 なお、本研究内容は日本食品科学工学会第57回大会(9月1日~3日、東京農業大学)において発表致しました。

■共同研究者 大阪市立大学 井上正康教授のコメント

日本は疲労大国と言われており、多くの方が日常生活で疲労を感じています。食事は、日常生活で感じる疲労を抑制し、回復させる有効な手段の一つです。本研究では、トマトが運動後の疲労に与える影響について検討し、トマトが運動後の疲労バイオマーカーの増加を抑制することを明らかにしました。この効果は、トマトを5日間という短期間投与することでも見られました。これらの結果から、トマトやトマトを含む製品を摂取することで、運動時を始め日常生活で発生する疲労を軽減させる効果が期待できます。

■研究の背景

疲労は日本人の大きな関心事となっており、日本人の約6割の人が肉体的あるいは精神的疲労を感じていると言われています。トマトには抗酸化物質であるリコピンや疲労軽減作用があるクエン酸などが含まれており、トマトを摂取することで疲労が軽減すると考えられます。
各種疲労においては、生体内での炎症や疲労の伝達に関与する物質であるサイトカインやホルモンの増加との関連が知られています。これらの物質は、運動など肉体的な疲労の他、眼に強制的に光を当てるなどの精神的な疲労においても顕著に増加することが知られており、疲労バイオマーカーとされています。
そこで本研究では、トマトの摂取が運動後のサイトカインやホルモンといった疲労バイオマーカーの増加に与える影響について検討しました。

■研究概要

≪目的≫
本研究では、トマトの摂取が運動後の疲労に与える影響を明らかにすることを目的とし、マウスに一定期間トマトペースト凍結乾燥物やトマトペースト加水物を摂取させ、運動後のサイトカインやホルモンの濃度を測定しました。

≪内容≫
実験1:トマトペースト凍結乾燥物とリコピンの長期間摂取が運動後の疲労に与える影響の検討

表1.実験1の試験群
実験1:トマトペースト凍結乾燥物とリコピンの長期間摂取が運動後の疲労に与える影響の検討

マウスを表1の3群に分け、それぞれの飼料で12週間飼育しました。その後、ベルトコンベア状の走行装置(トレッドミル)で1時間走行運動させ、運動6時間後の血中のサイトカイン、ホルモンを測定しました。

図1.トマトペースト凍結乾燥物及びリコピンの長期間摂取が運動後の血中TGF-β濃度に与える影響
図1.トマトペースト凍結乾燥物及びリコピンの長期間摂取が
運動後の血中TGF-β濃度に与える影響
(Means±SD, n=6 mice, *p<0.05)


疲労バイオマーカーの一つであるサイトカインTGF-βの測定結果を示します(図1)。運動負荷後に、血中TGF-?濃度は顕著に増加しますが、トマト群ではその増加が抑制されました。一方、リコピン群では、血中TGF-β濃度の増加抑制は見られませんでした。この結果より、トマトを3ヶ月間の長期間摂取させることで、運動後の疲労が軽減されることが示唆されました。一方、リコピンにはそのような効果はないことが示唆されました。


実験2:トマトペースト加水物の短期間投与が運動後の疲労に与える影響の検討


表2.実験2の試験群
実験2:トマトペースト加水物の短期間投与が運動後の疲労に与える影響の検討

マウスを表2の3群に分け、それぞれの投与物を毎日1回5日間経口で投与しました。その後、実験1と同様に試験を行いました。

運動負荷前

図2.トマトペースト加水物及びその上清の短期間投与が
運動後の血中TGF-β濃度に与える影響
(Means±SD, n=5-8 mice, *p<0.05)


実験1と同様、TGF-βの結果を示します(図2)。トマト群及びトマト上清群の両方において、運動負荷後の血中TGF-β濃度の増加を抑えることが示されました。この結果より、トマトを5日間という短期間投与することでも運動後の疲労軽減効果があることが示唆されました。さらに、トマトの上清画分でその効果が強く見られることが示唆されました。

≪まとめ≫
本研究では、マウスを用いた試験によりトマトが運動後の疲労バイオマーカーの増加に与える影響を検討しました。その結果、トマトペースト凍結乾燥物を3ヶ月間の長期間摂取させることで、運動後のサイトカインやホルモンの増加を抑制する効果があることが明らかとなりました。さらに、5日間という短期間のトマトペースト加水物の投与、特に上清液の投与でその効果は強く見られることが明らかとなりました。本研究の結果より、トマトやトマトを含む製品を摂取することで、運動時始め日常生活で発生する疲労を軽減させる効果が期待できます。


■用語の説明

リコピン:
カロテノイドの一つで、トマトに多く含まれる赤い色素です。カロテノイドの中でも優れた抗酸化作用を有しており、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病の予防作用が期待されています。脂溶性であることから油とともに摂取すると吸収性が高まります。

サイトカイン:
免疫系の細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達をするものをいいます。多くの種類がありますが、免疫、炎症に関係したものが多くなっています。炎症に関連するサイトカインには、脳に作用して疲労や疲労感の原因となるものがいくつか知られています。

TGF-β:
サイトカインの一つで、疲労との関連が示唆されています。慢性疲労症候群の方では血中のTGF-?が上昇することが知られています。また動物実験では、マウスの脳にTGF-?を投与することでマウスの行動量が低下することが確認されています。


【資料】学会発表の要旨(日本食品科学工学会)

トマト摂取による運動疲労軽減作用
1吉田和敬、2佐藤英介、1池井崇大、1稲熊隆博、2井上正康
1カゴメ(株)・総研、2大阪市立大学・医

【目的】トマトには抗酸化物質であるリコピンや、疲労軽減作用があるクエン酸などが含まれており、運動の際にトマトジュースを摂取させることでパフォーマンスの向上や疲労感の軽減が期待できることを明らかにしてきた。運動時の疲労感の感知には、各種のサイトカインやホルモンなどの分泌が関与している。本研究では、トマトの摂取が運動時のサイトカインやホルモンの分泌に与える影響を明らかにすることを目的として試験を行った。

【方法】被検物及びその摂取期間を変え、以下の3つの試験を行った。
試験1:試験には9週齢ICRマウスを用いた。マウスに通常飼料、トマトペースト凍結乾燥物含有飼料、リコピン含有飼料をそれぞれ12週間摂取させた後、トレッドミルで25m/minの速度で1時間運動させた。運動後30分間マウスの行動量を解析すると共に、運動6時間後の血液中のサイトカインやホルモンをELISA法により測定した。
試験2:トマト摂取群に、トマトペースト加水物を遠心した際の上清及び沈殿の凍結乾燥物を含有した飼料を摂取させ上記と同様の試験を行った。
試験3:トマトペースト加水物及びその上清を液体として5日間経口投与させ、上記の試験を行った。


【結果】試験1では、トマトペースト凍結乾燥物含有飼料を摂取させた群において、運動により上昇した血中サイトカイン・ホルモン濃度が有意に抑制された。リコピン含有飼料群においてはその効果は確認されなかった。試験2では、上清、沈殿の凍結乾燥物を摂取させた群両方において、血中サイトカイン・ホルモン濃度の上昇抑制作用が確認された。さらに試験3では、トマト加水物及びその上清を経口投与させた群いずれも、上記と同様の効果が確認された。以上の結果より、トマトには、その水溶性画分、不溶性画分両方に運動時のサイトカイン・ホルモンの分泌増加を抑制する作用があり、液体で短期間の摂取でもその作用は見られることが明らかとなった。