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トマト漿液に血糖値や血圧の上昇を抑制する効果を確認
~カゴメ、近畿大学との共同研究~

2011年6月9日

 

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、近畿大学農学部(奈良県奈良市)村上哲男教授との共同研究で、動物試験においてトマト漿液に、血糖値や血圧の上昇を抑制する効果があることを明らかにしました。 トマトにはリコピンというカロテノイドが含まれ、生活習慣病に対する予防効果が知られていましたが、リコピン以外の成分を含むトマト漿液にも疾患を 改善する効果が期待されます。 なお、本研究内容は第65回日本栄養・食糧学会大会(5月13日~15日、お茶の水女子大学)において発表致しました。

■ 共同研究者 近畿大学 村上哲男教授のコメント
トマト漿液には、水溶性成分であるクエン酸やアミノ酸などが豊富に含まれています。本研究では、トマト漿液の長期摂取が血圧や血糖値の上昇に与える影響について検討しました。その結果、トマト漿液により血圧の上昇が抑えられると共に、血糖値の上昇が抑えられました。 また、血糖値の上昇を抑制するにも関わらず、血中のインスリン濃度が低く抑えられていたことから、トマト漿液はインスリン抵抗性を改善することで血糖値の上昇を抑えていることが考えられました。トマト漿液の摂取により、インスリン抵抗性による糖尿病や高血圧を防ぐことが期待できます。

■ 研究の背景
平成20年度の国民健康・栄養調査によると,約2,410万人が糖尿病が強く疑われる人、もしくは糖尿病の予備群であると推定されています。糖尿病の患者は高血圧などの疾患を併発するリスクが高く、合併症により心血管障害などの進行を促進することが知られています。 糖尿病の主な原因として、血糖値を調節するホルモンであるインスリンの分泌が悪くなったり、インスリン抵抗性があることが挙げられます。 食品によってインスリンの分泌や、インスリン抵抗性を改善出来れば、糖尿病や高血圧などの疾患を防ぐことが出来ます。
トマト漿液は、トマトジュースをろ過し沈殿物を除去した液で、主にトマト中の水溶性の成分を含んでいます。 トマト漿液には、抗酸化成分であるリコピンは含まれていませんが、アミノ酸やクエン酸をはじめとする成分が含まれており、多くの機能性が期待できます。 本研究では、トマト漿液が高血圧や血糖値、血中インスリン濃度に与える影響を調べました。

■ 研究概要
≪目的≫
高血圧と糖代謝異常を併せ持つ脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いて、トマト漿液の血圧や血糖値、血中インスリン濃度への影響を検討しました。

≪実験方法≫
実験には5週齢の雄性SHRSPを用い、トマト漿液を含む飼料を摂取させる群(Tomato群)と、トマト漿液を含まない飼料を摂取させる群(Control群)の2群に分けました。各群とも17週齢まで飼育を行い、週に1回の血圧の測定を行いました。また、8、10、13、及び16週齢時には糖(グルコース)投与後の血糖値及び血漿インスリン濃度の変動を測定しました。

≪結果≫

1.血圧の変動及び生存率
Tomato群では、13週齢以降にControl群と比較して血圧が低くなる傾向が見られました(図1)。 また、Control群では15週齢以降に3匹のラットが死亡したのに対し、Tomato群では全てのラットが17週齢まで生存していました(図2)。
図1.試験期間中の血圧の変動図2.試験期間中のラットの生存率
図1.試験期間中の血圧の変動図2.試験期間中のラットの生存率


2.糖負荷後の血糖値、血中インスリン濃度の変動(16週齢時)
Control群と比較して、Tomato群で糖負荷後の血糖値の上昇が抑制されることが示されました(図3)。また、血糖値の上昇が抑制されたにも関わらず、血中インスリン濃度は低く抑えられていることが分かりました(図4)。トマト漿液の摂取によりインスリン抵抗性が改善されることで、血糖値の上昇を抑制していることが考えられました。
図3.糖負荷後の血糖値図4.糖負荷後の血中インスリン濃度
図3.糖負荷後の血糖値
(16週齢時)
 図4.糖負荷後の血中インスリン濃度
(16週齢時)


≪まとめ≫
トマト漿液の投与が血圧や血糖値の上昇を抑えることが明らかになりました。また、そのメカニズムとして、インスリン抵抗性の改善が示唆されました。トマト漿液を摂取することでインスリン抵抗性が改善し、高血圧や糖尿病などの疾患を予防することが期待できます。



■ 用語の説明

トマト漿液:
トマトジュースをろ過し沈殿物を除去した液で、主にトマトの水溶性成分であるアミノ酸やクエン酸などを含んでいます。

リコピン:
カロテノイドの一つで、トマトに多く含まれる赤い色素です。カロテノイドの中でも優れた抗酸化作用を有しており、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病の予防作用が期待されています。脂溶性であることから油とともに摂取すると吸収性が高まります。

インスリン:
血糖値を感知してすい臓より分泌されるホルモンで、血糖値の調節に重要な役割を果たしています。血糖値を低下させる働きがあるため、糖尿病の治療に使われることもあります。

インスリン抵抗性:
種々の原因でインスリンの効き目が悪くなっている状態を表しています。インスリン抵抗性があると血中のインスリン濃度が上昇し、その状態が続くと糖尿病、高血圧など生活習慣病に繋がる可能性があります。



【資料】学会発表の要旨(日本栄養・食糧学会)

トマト漿液の糖代謝改善作用について
○上西梢1、吉田和敬2、竹森久美子1、稲熊隆博2、村上哲男1
1近畿大・農・食品栄養 2カゴメ株式会社 総合研究所

【目的】トマト漿液は、トマトジュースをろ過し、沈殿物を除去した液である。 トマト漿液には、アミノ酸やクエン酸をはじめとする微量成分が含まれており、多くの機能性が期待できる。 これまでに,トマト漿液の機能性として血圧降下作用が認められている。 本研究では,高血圧と糖代謝異常を併せもつ脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いて糖代謝への影響を検討した。

【方法】<in vitro> α-グルコシダーゼ及びスクラーゼに対するトマト漿液の阻害活性を常法で測定した。 <in vivo>単回投与実験:11週齢のSHRSPに,トマト漿液の経口糖負荷試験を行った。 長期投与実験:5週齢のSHRSPを,トマト漿液飼料(トマト漿液濃度1.5% / 船橋SP飼料)で17週齢まで飼育した。 血圧は週1回Tail-Cuff法で測定した。この間, 8,10,13,16週齢に経口糖負荷試験を行い,血中グルコース濃度と血中インスリン濃度(ELISA法)を調べた。 17週齢で屠殺を行い,骨格筋の糖代謝関連因子のタンパク発現量をWestern blot法で調べた。

【結果】<in vitro>トマト漿液は,50 mg/mlの濃度においてα-グルコシダーゼを60%,スクラーゼを40%阻害した。 <in vivo> 1) 血圧は,Control群に比べTomato群では10週齢以降にやや抑制された。 2) 経口糖負荷試験において,単回投与実験では血中グルコース濃度はTomato群がControl群に比べやや上昇が抑制された。 長期投与を行った動物への経口糖負荷試験では,8,10,13週齢において血中グルコース濃度に両群間に差は見られなかったが,16週齢時においてTomato群はやや上昇が抑制された。 血中インスリン濃度は,8,13,16週齢でTomato群がControl群に比し低値であった。

【結論】トマト漿液は,α-グルコシダーゼ阻害やスクラーゼ阻害作用を示し,長期投与で耐糖能の改善も幾分か見られた。