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ホウレンソウはサプリメントよりも動脈硬化のリスク軽減が期待される
~カゴメ、静岡大学との共同研究~

2011年11月18日

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、静岡大学(静岡県静岡市)杉山公男教授との共同研究で、ホウレンソウ摂取が動脈硬化のリスク因子である血中ホモシステインを低減し、その効果はサプリメントに主に使用されている化学合成の葉酸 (モノグルタミン酸型葉酸) (以下、サプリメント) 単独摂取よりも強いことを動物試験において明らかにしました。 今回の研究成果により、ホウレンソウ摂取による効率的な動脈硬化の予防作用が期待できます。 なお、本研究内容はISNFF(国際機能性食品学会)2011年度大会(11月14日〜17日、ロイトン札幌)において発表致します。

共同研究者 静岡大学 杉山公男教授のコメント

動脈硬化は心疾患や脳血管疾患といった危険な疾患の原因となります。 本研究では、動脈硬化のリスクを高める因子として血中ホモシステインに着目しました。 血中ホモシステインが上昇する要因には、栄養的な要因が大きく関与しており、栄養バランスを考えた食事をすることが重要です。 今回、サプリメントに用いられる葉酸の単独摂取よりもホウレンソウ摂取の方が効率的に血中ホモシステインを低減できることを確認しました。 よって、葉酸やベタイン等の様々な栄養成分を含むホウレンソウ等の野菜を日常的に摂取することで、動脈硬化の予防効果が期待できます。

研究の背景

動脈硬化が原因となって発症する心疾患や脳血管疾患は、死亡原因のうち約3割近くを占めることから(平成20年 厚生労働省調べ)、その予防は重要です。 動脈硬化のリスクを高める因子として、一般的には血中コレステロールの増加や酸化が知られていますが、本研究では血管内皮を傷つけることで動脈の弾力性を失わせ、動脈硬化を促進すると考えられているホモシステインに着目しました。 ホモシステインはメチオニンという必須アミノ酸がシステインというアミノ酸に変換する中間で生成するアミノ酸の一種です。 過剰に発生したホモシステインはメチオニンに戻されますが、その過程においてビタミンB群の一種である葉酸やベタインが代謝を促す役割を担っており(図1)、葉酸やベタインが欠乏すると血中ホモシステインが上昇することが知られています。
一方、食品に含まれる葉酸はグルタミン酸が多数結合したポリグルタミン酸型葉酸であり、サプリメントに使用されている葉酸は、一般的に化学合成により製造され、グルタミン酸が1つしか結合していないモノグルタミン酸型葉酸です。 ポリグルタミン酸型葉酸の方が、比較して吸収が良くないとされています。
ホウレンソウは、葉酸とベタインを多く含む野菜として知られています。 ホウレンソウを摂取することで、サプリメントよりも効果が強いことが期待できます。 そこで、餌から葉酸を欠乏させることで血中ホモシステインを上昇させたラットを用いて、ホウレンソウ摂取量が血中ホモシステイン濃度に与える影響を調査し、更にサプリメントとの比較を行いました。

 

図1.葉酸およびベタインによるホモシステインからメチオニンへの代謝
図1.葉酸およびベタインによるホモシステインからメチオニンへの代謝
  

研究概要

試験1:ホウレンソウ摂取量が血中ホモシステインに与える影響

目的
葉酸欠乏により上昇する血中ホモシステインに対するホウレンソウ摂取の影響を明らかにするために、まず、葉酸を欠乏させたラットを用いてホウレンソウ摂取量が血中ホモシステインに与える影響を調査しました。

内容
ラットを、ホモシステインの上昇を誘導しない群(正常群)、ホモシステインの上昇を誘導させる群(対照群)、ホモシステインの上昇を誘導しホウレンソウの粉末を段階的に与える群(ホウレンソウ群?〜?)に群分けしました。 ホモシステインの上昇は、通常ラットを飼育する際に2mg/kg餌で添加する葉酸を添加しないことで誘導しました。 ラットの群分けを表に示しました。各群を28日間飼育した後、血中のホモシステイン濃度を測定しました。

表 試験1の群分
 
 
図2.ホウレンソウの摂取量が血中ホモシステインに与える影響
図2.ホウレンソウの摂取量が血中ホモシステインに与える影響

図2は各群の血中ホモシステインを示しています。対照群では正常群と比較して血中ホモシステインが顕著に上昇しましたが、ホウレンソウの摂取量を増やすことで血中ホモシステインが低減することがわかりました。

 

試験2:ホウレンソウとサプリメント摂取のホモシステイン低減効果の比較

目的
試験2では、効率的にホモシステインを低減させるために、サプリメントとホウレンソウとでどちらが有効であるか検討するため、葉酸欠乏の状態における血中ホモシステインの低減効果を、ホウレンソウとサプリメントとで比較しました。

内容
ラットを、血中ホモシステインの上昇を誘導させない群(正常群)、誘導させる群(対照群)、血中ホモシステインの上昇を誘導させ、小量のホウレンソウを与える群(ホウレンソウ群)、ホウレンソウ群と同じ葉酸濃度になるようにサプリメントを与えたサプリメント群、ホウレンソウ群と同じベタイン濃度になるようベタインを与えたベタイン群に分けました。 血中ホモシステインの上昇は試験1と同様に誘導しました。ラットの群分けを表に示しました。 各群を28日間飼育した後、血中のホモシステイン濃度を測定しました。

表 試験2の群分け
 
 
図3 ホウレンソウとサプリメント摂取のホモシステイン低減効果の比較
図3 ホウレンソウとサプリメント摂取のホモシステイン低減効果の比較

図3は、ホウレンソウとサプリメントとでホモシステイン低減効果を比較した結果を示しています。 対照群と比較してホウレンソウ群、サプリメント群およびベタイン群の血中ホモシステインが低減しましたが、その効果はホウレンソウ群が最も顕著でした。 よって、ホモシステインの低減効果においてサプリメント単独よりも、葉酸に加えベタインも含まれているホウレンソウを摂取した方がより効果的であることが考えられます。
 

まとめ
本研究では、ホウレンソウ摂取が血中ホモシステインに与える影響を検討しました。 その結果、ホウレンソウを多く摂取すると血中ホモシステインが低減し、その効果は吸収が良いといわれているサプリメントよりも強いことが明らかになりました。 ホウレンソウには葉酸に加え、ベタインが含まれるため、これらの複合的な作用が関与したと考えられます。本研究の結果より、ホウレンソウはサプリメント単独よりも効率的にホモシステインを低減し、動脈硬化を予防する効果が期待できます。

 

用語の説明

動脈硬化:
動脈の血管が肥厚し伸展性の低下を示す状態のことであり、心疾患や脳血管疾患の原因となります。 動脈硬化のリスクを高める因子として、脂質異常症(LDL-コレステロールの増加やHDL-コレステロールの減少)、糖尿病、高血圧、喫煙などがいわれてきました。 近年では、血中ホモシステインの増加が、独立した動脈硬化のリスク因子として広く認識されています。

メチオニン:
人が体内で作り出すことのできない9種類の必須アミノ酸の1つです。 メチオニンは、肝臓内に入ってきた毒素や老廃物の代謝を促進させ、また血中コレステロール等の脂質代謝をコントロールします。 肝臓中でいくつかの中間代謝物を経たのち、システインを生成します。

ホモシステイン:
メチオニンがシステインへ代謝されるときに中間代謝物のひとつとして生成します。 血中ホモシステインは動脈の細胞に傷害を与えることで動脈の弾力性を損失させ、徐々に血管を詰まらせたり、脆くすることで動脈硬化を促進すると考えられています。 血中ホモシステインの増加の原因として、喫煙、過度の飲酒、加齢、メチオニン代謝系酵素の遺伝的疾患、ビタミン(葉酸、B6、B12)の欠乏など様々な要因があります。

ベタイン:
ホモシステインからメチオニンへの代謝を促します。 野菜ではアカザ科のものに特異的に多く含まれています。 アカザ科の野菜として主なものにホウレンソウやビートがあります。

葉酸:
水溶性のビタミンB群の一種で、動脈硬化の他、貧血、アルツハイマー症などのリスクを低下させると言われています。 葉酸には様々な形態があり、形態によって吸収性が違うと言われています。 ホウレンソウ、ブロッコリー、アスパラガスなどの野菜に多く含まれています。

 

【資料】学会発表の要旨(国際機能性食品学会)

The effects of spinach intake on hyperhomocysteinemia in folate-deficient rat.
Tatsuya Miyashita1, Ying Liu2, Takahiro Inakuma1, Kimio Sugiyama3
1 Kagome Co. Ltd., Research Institute, 2 Gifu University, 3 Shizuoka University
 

Purpose: Plasma total homocysteine(tHcy) level is associated with increase of risk for cardiovascular disease and dementia. Spinach contains rich folate and betaine which are down-regulate tHcy. However, bioavailability of dietary folate is lower than that of folic acid (FA). In this study, we examined the effects of spinach intake on hyperhomocysteinemia in folate-deficient rat.
Method: After Wistar rats were fed a folate-deficient diet containing freeze-dried spinach (0 to 12.1 %) for 4 weeks, plasma tHcy was analyzed. Next, to compare the effects of spinach and FA for hyperhomocysteinemia, rats were fed a folate-deficient diet containing 3.02% freeze-dried spinach (folate = 0.50 mg/kg diet) or 0.50 mg/kg diet FA for 4 weeks, plasma tHcy and 5-methyltetrahydrofolate were analyzed.
Results: Spinach intake reduced plasma tHcy in a dose-dependent manner. Comparing to FA, spinach intake significantly reduced plasma tHcy. There was no deference between the effects of spinach and FA on plasma 5-methyltetrahydrofolate.