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リコピンで骨の破壊抑制が期待
~カゴメ、東京農工大学との共同研究~

2011年11月18日

カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、東京農工大学工学部(東京都府中市)宮浦千里教授らとの共同研究で、リコピンが骨の破壊を抑制すること、そしてそのメカニズムを、細胞試験において明らかにしました。 なお、本研究内容はISNFF(国際機能性食品学会)2011年度大会(11月14日〜17日、ロイトン札幌)において発表致します。

共同研究者 東京農工大学 宮浦千里教授のコメント

骨粗鬆症や歯周病など炎症が関連する骨の疾病は、高齢化が進んでいるため社会的影響も大きくなり、その予防は重要な課題です。 炎症を伴う骨の破壊(以下骨吸収という)はインターロイキンー1(IL-1)などの炎症関連因子によって、骨吸収を司る破骨細胞の数が増加することに起因しますが、本研究では、リコピンがIL-1による破骨細胞数の増加を抑制することを明らかにしました。 従ってリコピンは、骨の疾病を予防する効果が期待できます。

研究の背景

全ての骨は古くなった部分を壊し、破壊された部分を新しく再生すること(以下骨形成という)で、必要な強さやしなやかさを保っています。 骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨吸収が急激に進むと骨粗鬆症状態になることが知られています。
骨吸収には活性酸素が深く関係していることが、さまざまな研究により明らかになっています。 また、トマトに含まれる赤い色素であるリコピンは、優れた活性酸素消去能を有しているため、骨吸収の抑制効果が期待されます。 そこで本研究では、リコピンが破骨細胞形成に与える影響とRANKL(破骨細胞形成誘導因子)発現に与える影響について検討しました。

研究概要

試験1:リコピンが破骨細胞形成に与える影響の把握

目的
骨吸収を担当しているのは破骨細胞であり、その数と骨吸収量は大きく関わっています。 そこで試験1では、リコピンが破骨細胞の形成に与える影響を明らかにすることを目的としました。

内容
試験にはマウスの骨芽細胞と骨髄細胞を用いました。 表1のとおり、破骨細胞形成を誘導しない群(正常群)、破骨細胞形成を誘導させる群(対照群)、破骨細胞形成を誘導しリコピンを添加する群(リコピン群?〜?)に群分けしました。破骨細胞形成は、細胞にIL-1を直接添加することで誘導しました。 リコピンもIL-1と同様、細胞に直接添加しました。各群を7日間培養した後、破骨細胞に特異的な染色を施し、形成された破骨細胞数を確認しました。

表1 試験1の群分け

 
図1 リコピンが破骨細胞数に与える影響
 
図1は、破骨細胞数を示しています。破骨細胞の形成を誘導する、IL-1添加により、破骨細胞数が顕著に増加しました。しかしリコピンの添加により、破骨細胞数の増加は抑制されました。また、添加するリコピンの量を増加させると、形成される破骨細胞数が少なくなることが確認されました。リコピンは破骨細胞数の増加を抑制することで、骨吸収を抑制していると考えられます。
 

試験2:リコピンがRANKL(破骨細胞形成誘導因子)発現に与える影響の把握

目的
リコピンの破骨細胞形成抑制メカニズムについての試験を行いました。 破骨細胞は、破骨細胞前駆細胞と破骨細胞形成誘導因子(RANKL)が結合することで、形成が始まるといわれています。 そこで試験2では、リコピンがRANKLの発現に与える影響を明らかにすることを目的としました。

内容
試験にはマウスの骨芽細胞を用いました。 表2のとおり、破骨細胞形成を誘導せずリコピンも添加しない群(?)、破骨細胞形成を誘導せずリコピンを添加する群(?)、破骨細胞形成を誘導しリコピンを添加しない群(?)、破骨細胞形成を誘導しリコピンを添加する群(?)に群分けしました。 破骨細胞形成は細胞にIL-1を直接添加することで誘導しました。 その後7日間培養し、リコピンを4μMとなるように細胞に直接添加しました。 さらに24時間後細胞より遺伝子を抽出し、リアルタイムPCR法にてRANKLの遺伝子発現を確認しました。

表2:試験1の群分け
 
 
図2.リコピンがRANKL発現に与える影響
 
 図2は、RANKLの発現数を示しています。RANKLの形成を誘導するIL-1添加により、RANKLの発現数が増加しました。しかしリコピンの添加により、RANKLの発現数増加は抑制されました。リコピンはRANKLの発現を抑制することで、破骨細胞の形成を抑制していると考えられます。

 まとめ
本研究では、細胞を用いた試験によりリコピンが骨吸収に与える影響を検討しました。その結果、リコピンを添加することで、破骨細胞数の増加を抑制し、骨吸収を抑制することが明らかとなりました。さらに、そのメカニズムとして、リコピンは骨芽細胞に働きかけ、RANKLの発現を抑制することが明らかとなりました。本研究の結果より、リコピンには骨吸収が進み、骨量が低下することにより発生する、骨粗鬆症や歯周病を予防する効果が期待できます。

 

 

用語の説明

リコピン:
カロテノイドのひとつで、トマトに多く含まれる赤い色素です。 カロテノイドの中でも抗酸化作用が非常に高く、活性酸素が原因と考えられる様々な疾病の予防作用が期待されています。 脂溶性であることから油とともに摂取すると吸収性が高まります。

骨芽細胞:
骨組織の表面に存在し、新しい骨を作る働きを持つ細胞です。骨形成を担当しています。

破骨細胞:
骨の代謝において、骨基質を溶かして破壊する役割である骨吸収を担当しています。 破骨細胞は、破骨細胞前駆細胞と骨芽細胞にある破骨細胞形成誘導因子(RANKL)が結合することで形成が始まるといわれています。 5〜20個(あるいはそれ以上)の核を持っている多核細胞です。

インターロイキンー1(IL-1):
生理活性物質の一種で、炎症反応に深く関与しています。破骨細胞形成を促進する作用を持っています。

RANKL:
骨芽細胞から発現する破骨細胞形成誘導因子のことです。RANKLの合図をきっかけに、破骨細胞は形成されます。

リアルタイムPCR
PCRとは、Polymerase chain reactionの略です。 遺伝子の発現量が少ないため、ポリメラーゼ(遺伝子を結合する酵素)を連鎖反応させて、対象遺伝子を増幅させ、経時的(リアルタイム)に定量解析する方法です。

 

【資料】学会発表の要旨(国際機能性食品学会)

Lycopene inhibits IL-1-indued osteoclast formation by suppressing RANKL expression in osteoblasts.
Ayako Kitajima1, Masataka Yamane1, Tsukasa Tominari3, Chiho Matsumoto3, Masaki Inada2, Takahiro Inakuma1 and Chisato Miyaura2,3
1 Kagome Co. Ltd., Research Institute, 2

Purpose: Osteoclast induces bone resorption and the production of reactive oxygen species (ROS) in inflammatory bone diseases including periodontitis. Lycopene, a typical tomato-derived carotenoid, is known to exhibit potent antioxidant capacity, but the effects of the lycopene on bone metabolism are not known. In this study, we examined the effects of lycopene on osteoclast formation induced by interleukin-1 (IL-1).
Material and Method: Mouse bone marrow cells were cocultured with osteoblasts for 7 days, and multinucleated osteoclasts formed were detected by tartrate-resistant acid phosphatase (TRAP) staining. Using mouse osteoblasts, the mRNA expression of receptor activator of NFkB ligand (RANKL) was analyzed by RT-PCR.
Result: Lycopene suppressed IL-1-induced osteoclast formation in the cocultures of bone marrow cells and osteoblasts in dose-dependent manner. IL-1 is known to stimulate osteoclast formation by expressing RANKL in osteoblasts. Lycopene clearly suppressed the IL-1-induced RANKL expression in osteoblasts. Therefore, lycopene may inhibit osteoclastic bone resorption by suppressing RANKL in osteoblasts.