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カゴメ保有の乳酸菌「ラブレ菌」の
インフルエンザウイルスに対する防御効果を動物試験で確認
~日本食品免疫学会(10月17日-18日)にて本日発表~

2013年10月17日

カゴメ株式会社(社長:西秀訓)は、ニュージーランドのAgResearch(アグリサーチ)社(注1)との共同研究により、弊社保有のラブレ菌(ラクトバチルス・ブレビス・KB290)(以下、ラブレ菌と表記)が、さまざまな防御メカニズムを活性化させ、インフルエンザウイルス感染に対して防御効果を発揮することを動物試験で明らかにしました。なお、ラブレ菌(注2)は免疫力の高い乳酸菌として、ルイ・パストゥール医学研究センターの岸田博士によって京漬物の“すぐき”から発見された乳酸菌です。

本研究ではインフルエンザウイルスをマウスに感染させ、健康状態を評価しました。インフルエンザ感染の重さの指標となる体重減少及び健康状態スコアを調査した結果、ラブレ菌をあらかじめ摂取していたマウスでは体重減少が軽減され、健康状態スコア(注3)の悪化も緩和されました。また、ラブレ菌は、ウイルスから身を守るために私たちの体に備わっている3つの主な防御メカニズム(1.細胞傷害活性(注4)、2.インターフェロン(IFN) –α(注5)産生、3.抗体(注6)産生)を活性化し、免疫力(注7)を高めることがわかりました。(下図)。以上の研究結果より、ラブレ菌の摂取がインフルエンザウイルスに対して防御効果があることが明らかになりました。

なお、本研究成果は、本日から開催されている日本食品免疫学会第9回学術大会(2013年10月17日〜18日)で発表致します。

 

 

 

 

左図.ラブレ菌がインフルエンザウイルスに対し防御効果を発揮するメカニズム

ラブレ菌は、ウイルスから身を守るために私たちのからだが備えている防御メカニズムである、1.細胞傷害活性、2.IFN-α産生、3.抗体産生を活性化させました。

 

 

 

研究概要

1.背景および目的

ラブレ菌発見のきっかけは、「京都の男性は全国2位の長寿」である(当時)との新聞記事でした。この記事を読んだルイ・パストゥール医学研究センターの岸田博士は、京都人が好んで食べる漬物にその秘密があるのではないかと考え、様々な京都の漬物を調査し、とりわけ酸味のある“すぐき”の中から、免疫力を高める作用(以下、免疫賦活作用と表記)を持つ「ラブレ菌」を見出したのです。そして、その後の研究により、ラブレ菌の免疫賦活作用は確かなものであることが裏付けられてきました(図1)。

免疫力を高めることでさまざまな感染症の予防が期待できますが、今回は、ラブレ菌がインフルエンザウイルスに対して効果があるかどうか、動物試験にて確かめました。毎年多くの患者が出るインフルエンザの予防方法には予防接種やマスクの使用がありますが、予防接種の有効率は、特に小児や高齢者では必ずしも高くなく、食生活で免疫力を高めることができれば、効果的な予防に有効であると考えられます。


 

 

2.ラブレ菌がインフルエンザウイルス感染による症状に及ぼす影響

インフルエンザウイルス感染に対しラブレ菌がどのような影響を及ぼすかどうか、感染により引き起こされる症状を指標にして調べました。

実験にはメスの試験用マウス(BALB/c、1群10匹)を用い、ラブレ菌粉末(摂取量;10億個/日)、ないしはラブレ菌を含まない粉末を14日間摂取させました。その後、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)を感染させ、感染から7日目までの体重ならびに健康状態スコアを評価しました。

その結果、感染による体重減少ならびに健康状態スコアの悪化はいずれも、ラブレ菌をあらかじめ摂取させたマウスにおいて、摂取させなかったマウスに比べて改善されました(図2-A, B)。すなわち、ラブレ菌には、インフルエンザウイルスに対する防御効果があると考えられました。

 

 

 

3.ラブレ菌摂取によるインフルエンザウイルス感染防御効果のメカニズム

では、ラブレ菌はどのようにインフルエンザウイルスに対して防除効果を発揮しているのでしょうか。私たちの体が備えている、インフルエンザウイルスに対する主な防御メカニズムを図3に示しました。


 

 

これまで、ラブレ菌はヒトのインターフェロン(IFN)-αの産生能や、がん細胞や感染細胞を殺す力である細胞傷害活性を高める作用をもつことが報告されております。IFN-αや細胞傷害活性は、ウイルスに対する重要な防御メカニズムであることから、ラブレ菌のインフルエンザウイルス感染に対する効果も、この2つのメカニズムを介している可能性が考えられました。そこで、インフルエンザウイルス感染後3ならびに7日目に、ラブレ菌をあらかじめ摂取したマウスと摂取しなかったマウスとで、IFN-α量ならびに細胞傷害活性に違いがあるのかを調べました。あわせて、感染後7日目に、これら以外の重要な防御メカニズムであるウイルスに対する抗体の産生量も調べました。

その結果、ラブレ菌をあらかじめ摂取したマウスの血中のIFN-α量(図4-A)ならびに脾臓の細胞傷害活性(図4-B)は、ラブレ菌を摂取しなかったマウスに比べて高くなりました。さらに、肺におけるウイルスに対する抗体量の増加(図4-C)もみられました。すなわち、ラブレ菌は、私たちの体が備えている主な防御メカニズムであるIFN-αの産生、細胞傷害活性、ならびに抗体の産生を活性化することによってインフルエンザウイルスに対して防御効果を示していると考えられました。

 

  

 

 

 

 

 

《まとめ》

今回の一連の実験結果から、ラブレ菌には、インフルエンザウイルスに対する防御効果があることが判りました。さらにその効果は、私たちの体が備えているさまざまな防御メカニズムを活性化することで発揮されていると考えられました。今回の結果は動物試験で得られたものであり、実際にヒトがラブレ菌を摂取することでインフルエンザを予防できるか否かは今後の検討課題です。

 

 

 

 

 

 

 

■用語の説明

注1 AgResearch(アグリサーチ)社:

ニュージーランドにある、国が全株式を保有する研究機関です。特に農業や牧畜業の分野において最先端の研究機関であり続けることを目的としています。

 

注2 ラブレ菌:

学名・・・Lactobacillus brevis KB290 (ラクトバチルス・ブレビス・KB290)

通称・・・Labre (ラブレ)
京都の漬物「すぐき」から(財)ルイ・パストゥール医学研究センター(京都)で分離され、その整腸作用や免疫賦活作用が研究されてきました。

 

注3 健康状態スコア:

マウスにインフルエンザウイルスを感染させたときに特徴的に起こる症状を観察し、悪化の度合いによって健康状態を数値化したものです。症状が悪化するほどスコアは低くなります。

 

注4 細胞傷害活性:

がん細胞や感染細胞などを攻撃して殺す働きの強さを表し、免疫力の重要な指標となります。加齢やストレスによって低下することが知られており、細胞傷害活性を高めることにより感染症やがんの予防が期待されます。

 

注5 IFN-α:

ウイルスに感染したときに、その増殖を抑えるために生体内で作られるタンパク質です。

がんや肝炎の治療薬としても使われています。

 

注6 抗体:

病原体や異物(抗原)が体の外から侵入したときに産生されるたんぱく質です。抗体は抗原にくっつくことで、感染力や毒性を失わせたり、生体が抗原を排除するのを助けたりします。

 

注7 免疫力:

体の外から侵入しようとするウイルスや細菌、また体の中で発生するガンなどを異物として識別し、無害化することで体を守る力のことです。低下すると多くの病気を引き起こすと言われています。

 


 

 

 

 

学会発表の要旨

Lactobacillus brevis KB290摂取はインフルエンザウイルス感染による症状を緩和する

 

○脇 尚子, 矢嶋 信浩, 菅沼 大行

(カゴメ株式会社研究開発本部)

 

【目的】

Lactobacillus brevis KB290(以下、KB290)は京漬物「すぐき」より分離された植物性食品由来の乳酸菌である。KB290摂取により、ヒトにおいてインターフェロン(以下、IFN)-α産生能が亢進すること、マウスにおいて脾細胞の細胞傷害活性が上昇することが明らかとなっていることから、KB290摂取によるインフルエンザウイルス(以下、IFV)感染に対する防御効果が期待される。そこで本研究では、マウスを用いて、IFV感染に対するKB290の効果とその作用機序を評価した。

 

【方法】

7-8週齢の雌性BALB/cマウスをKB290群と対照群に分け、KB290群にはKB290菌末  (1×1011 CFU/g)を、対照群には菌末の賦形剤である馬鈴薯デンプンを、それぞれPBSに 10 mg懸濁したものを14日間毎日強制経口投与した(KB290群の個体の摂取菌数は1×109 CFU/日)。15日目に、両群にIFV(A/PR/8/34 (H1N1))を経鼻感染させ、感染後7日目まで毎日、体重測定と、被毛や行動観察による健康状態のスコアリングを行った。併せて、作用機序の評価のため、感染3日及び7日後の血清中IFN-α量と脾細胞の細胞傷害活性を、さらに感染7日後の気管支肺胞洗浄液(以下、BALF)中のIFV特異的IgA量を測定した。

 

【結果】

KB290群では対照群と比較し、感染後の体重減少及び健康状態スコアの悪化が抑制された。また、血清中IFN-α量及び脾細胞の細胞傷害活性は、感染3日と7日後のいずれにおいても、対照群と比較しKB290群で有意に上昇した。さらに、感染7日後のBALF中のIFV特異的IgA量が、対照群と比較しKB290群で有意に増加した。以上より、KB290はIFV感染による症状を緩和する作用を持つことが明らかとなった。さらに本作用には、IFN-α産生亢進や細胞傷害活性上昇作用に加え、IFV特異的IgA産生亢進が関与していることが示唆された。