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<日本農芸化学会(3月27日~3月30日)にて発表予定>
便秘はいくつかの栄養素の吸収効率を低下させるとともに、
老化・がんの原因となる酸化ストレスを高める可能性が明らかに
~女子大学生を対象に調査を実施~

2014年3月17日

カゴメ株式会社(社長:寺田直行)は、大妻女子大学(青江誠一郎教授)との共同研究により、便秘になることでいくつかの栄養素の吸収効率が低下する可能性が高いことを明らかにしました。

 

腸は、食品中に含まれる栄養素を体内へ吸収するという重要な役割を担っています。今回の研究により、腸の代表的なトラブルの一つである「便秘」になることでいくつかの栄養素が腸から体内へと吸収されにくくなることや、老化やがんの原因となる酸化ストレス(注1)の強さも増す可能性があることがわかりました。この内容は、便秘と栄養素の吸収効率及び酸化ストレスの強さの関係を明らかにした希少な研究結果です。

本研究では、大妻女子大学の女子大学生にご協力頂き、便秘傾向者と非便秘傾向者とで、各種栄養素の吸収効率の違いと、体が受ける酸化ストレスの強さの違いを比較しました。その結果、便秘傾向者では、栄養素の中でもビタミンB2、ビタミンB6、葉酸の吸収効率が低いことが示唆されました(注2、注3、注4)。また、便秘傾向者は非便秘傾向者と比べて強い酸化ストレスを受けていることもわかりました。

 

このように、便秘になることは体の栄養状態にも悪い影響を与える可能性があり、腸を正常に保つことは健康を維持する上でとても重要であると言えます。今後は、整腸作用が期待される弊社保有の植物性乳酸菌「ラブレ菌」を便秘傾向者に摂取して頂き、便通状態だけでなく、栄養素の吸収効率及び酸化ストレスが改善されるかどうかを検証する予定です。

なお、本研究成果は、3月27日〜3月30日に開催される日本農芸化学会2014年度大会で発表致します。

 

 

■共同研究者 大妻女子大学 青江誠一郎教授のコメント

便秘は、消化管を介して身体の様々な健康状態に関与すると考えられます。食事、ストレス、運動など生活習慣と密接に関係する便秘が、このたび栄養素の消化吸収や身体の酸化ストレスと関係していることを人で明らかにできたことは重要な意味があります。作用メカニズムの解明や、さらには、便秘の改善により栄養素の消化吸収性の向上や酸化ストレスの減少がもたらされるかも、今後の課題として興味あるところです。






 

1.背景および目的

腸は、食事として摂取した食べ物に含まれる栄養素を吸収するという重要な役割をもっています。その腸の最も身近なトラブルの一つが便秘です。便秘になると腸の動きが鈍り、便が滞るため、便秘は腸の調子が低下している状態と言えます。本研究は、便秘で腸の調子が低下している人は食べ物に含まれる栄養素もうまく吸収できていないのではないか、という当たり前のようで今まで確かめられていなかった疑問を明らかにするために実施しました。

具体的には、便秘傾向者と非便秘傾向者とで、栄養素の吸収効率と、体内の栄養状態が影響すると考えられる酸化ストレスの強さを比較しました。

 

 

2.試験にご協力いただいた被験者の分類

今回の試験では大妻女子大学の健康な学生65名に、被験者としてご協力いただきました。1週間あたりの排便回数が5回以下または硬い便の出現率が50%以上である便秘傾向者と、1週間あたりの排便回数が6回以上かつ硬い便の出現率が50%未満である非便秘傾向者とに分類しました。その結果、便秘傾向者は34名、非便秘傾向者は31名となりました(表1)。

 

3.便秘が栄養素の吸収効率に与える影響

便秘が栄養素の吸収効率に与える影響を調べるため、摂取した栄養素の量(被験者の食事内容から算出した)と、そのうち体内に吸収された栄養素の量(尿中の栄養素濃度を指標とした)とを比べました。尿中栄養素濃度を吸収の指標とした理由は、水溶性の栄養素の場合、尿中の濃度が高いほど体内に存在する量も多いと報告されているからです。

比較の結果、便秘傾向者は非便秘傾向者と比べて、各種栄養素の中でもビタミンB2、ビタミンB6、葉酸の吸収効率が低い可能性があることがわかりました。

 

 

4.便通が酸化ストレスの強さに与える影響

酸化ストレスは老化やがんなどの原因となりますが、酸化ストレスを抑える栄養素が十分に行き届いていないと、体が受ける酸化ストレスの強さは増加してしまうと考えられます。そこで、便秘傾向者と非便秘傾向者とが受ける酸化ストレスの強さを比較するため、酸化ストレスの強さを示す尿中の指標(イソプラスタン及び8-OHdG)の濃度を測定しました。

その結果、便秘傾向者では両方の指標について尿中濃度が有意に高く、酸化ストレスを強く受けていることがわかりました(図2)。この要因の1つとして、便秘傾向者では非便秘傾向者と比べ、酸化ストレスを抑制する効果がある抗酸化ビタミン(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE等)の栄養状態が良くない可能性が考えられます。

 

<まとめ>

今回の結果から、便秘傾向者はビタミンB2、ビタミンB6、葉酸の吸収効率が低い可能性があることがわかりました。また、老化やがんなどの原因となる酸化ストレスが強い傾向にあることも示唆されました。

今後は、整腸作用が期待される弊社保有の植物性乳酸菌「ラブレ菌」を便秘傾向者に摂取していただき、便通状態を改善することで、栄養素の吸収効率及び酸化ストレスの状態が改善されることを検証する予定です。



 

■用語説明

 

(1)酸化ストレス

体内で生じる活性酸素が細胞を傷つけることで体はストレスを受け、老化やがんなどの原因となります。

 

(2)ビタミンB2

ビタミンB2には、成長促進・皮膚や粘膜の保護といった働きがあり、不足すると成長障害・脂漏性皮膚炎・口内炎などを引き起こすことが知られています。

 

(3)ビタミンB6

タンパク質、脂質、炭水化物などの栄養素を代謝するための補酵素やホルモン調節因子などとして働いており、不足すると皮膚炎などが起こることが知られています。

 

(4)葉酸

体内でのタンパク質の生合成やビタミンの代謝に関与しています。不足すると動脈硬化の危険性が高まったり、貧血の原因となったりします。また、妊婦の方の葉酸摂取量が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まると報告されています。


 

 

■学会発表要旨

尿中・血中栄養素並びに尿中酸化ストレスマーカーと便通との関連性

 

○小林晃(1)、信田幸大(1)、菅沼大行(1)、青江誠一郎(2)

(1)カゴメ株式会社研究開発本部自然健康研究部、 (2)大妻女子大学家政学部

 

便通と腸内菌叢の状態とは密接に関連しており、便秘傾向者や便秘患者は、腸内菌叢が健常者とは異なると言われている。一方、近年、腸内菌叢の状態が宿主の栄養吸収に影響を与えるとの報告がなされていることから、便秘になると宿主の栄養状態に影響があると考えられる。しかしこれまでに便通と宿主の栄養状態との関連性を検証した研究は少ない。

そこで我々は、便通状態の悪化が栄養状態に与える影響を明らかにする研究を進めている。

 尿中・血中栄養素濃度は水溶性・脂溶性栄養素の栄養状態の指標となる。血中栄養素濃度を測定するためには採血が不可欠であるが、採血の実施は被験者への侵襲性が高い。血中にはカロテノイド、ビタミンCやEなど、抗酸化力を示す脂溶性栄養素が多く溶解しているため、被験者間での血中栄養素濃度を比較するための代替指標として尿中酸化ストレスマーカー濃度を用いられると考えた。2011年に実施した試験では、健常者と便秘傾向者との間で尿中栄養素濃度および酸化ストレス濃度を比較した。その結果、両者で食事からの摂取栄養素量に差が見られなかったにも関わらず、後者ではビタミンB2、B6、葉酸において摂取栄養素量と尿中栄養素濃度から算出した吸収効率が低下していること、また、尿中酸化ストレスマーカー(8-OHdG、イソプラスタン)の濃度が高いという結果が得られた。このことから、便通状態の悪化は水溶性栄養素の栄養状態だけでなく、脂溶性栄養素の栄養状態にも影響を与えている可能性が考えられた。

そこで、次に我々は健常者と便秘傾向者から採血を行い、各血中栄養素濃度を比較した。

具体的には、まず、被験者の排便回数並びに便性状を7日間調査し、それに基づき被験者を便秘傾向者と非便秘傾向者とに分類した。次に、調査7日目に採取した尿・血液を用い、尿中酸化ストレスマーカー濃度及び血中ビタミン、カロテノイド濃度を測定した。また、採尿・採血を実施する3日前から被験者の食事調査を行った。

 その結果、便秘傾向者では血中ビタミンA 及びEの濃度が有意に低く、上記の尿中酸化ストレスマーカー濃度が有意に高かった。便秘傾向者では摂取したレチノール当量及びαトコフェロール量が有意に少なかったことから、血中濃度の差にはこのことが影響していると考えられる。尿中酸化ストレスマーカー濃度に差が見られた原因を明らかにするため、抗酸化力をもつビタミンE、そして体内でビタミンAに変換され、かつ抗酸化力を持つカロテノイドを多く含む緑黄色野菜の摂取量を比較したところ、有意な差はみられなかった。また、血中カロテノイド濃 xにも有意な差は見られなかった。このため、便秘傾向者で酸化ストレス濃度が高かった原因は、便秘であることと血中ビタミンE濃度が低かったこととが影響していると予想される。ビタミンEが脂質酸化を抑制するという報告は多くなされているが、酸化ストレスによるDNA損傷を抑制するという報告は極めて少ない。このため、DNA損傷により発生する8-OHdGの尿中濃度の上昇には便通状態の悪化が影響している可能性が考えられた。

今後は便秘傾向者の便通状態を改善することで酸化ストレスマーカー濃度の数値が改善されるかどうかを検証する。