トマトのおいしさをもたらす
「うまみ成分」や「うまみだし」など、
トマトのおいしさのヒミツを勉強します。
“うまみ”成分のヒミツとは?
トマトの数々の成分が
「おいしい」と感じさせます。
「おいしい」と思う感覚には個人差がありますが、多くの人にとって「おいしさ」を感じる大きな要因は、“うまみ”成分です。“うまみ”成分とは主に「グルタミン酸」と「イノシン酸」で、ほかにも30数種類の物質が確認されています。「グルタミン酸」は、タンパク質の構成成分である「アミノ酸」のひとつで、天然食品の「アミノ酸」の大部分を占めています。「イノシン酸」は細胞の核の中にある遺伝子の構成成分である「核酸」のひとつです。
日本人にとってなじみ深い食品でいえば、昆布の“うまみ”成分の約60%は「グルタミン酸」(残りは主に「アスパラギン酸」)、鰹節の“うまみ”成分は主に「イノシン酸」です。
“うまみ”成分は、結合した状態では“うまみ”はなく、「グルタミン酸」はタンパク質から分離すると“うまみ”として感じることができます。日本人の食事に欠かせない味噌、醤油は、大豆のタンパク質が発酵によって分解され、分離した「グルタミン酸」が生じるため、“うまみ”を感じることができます。
イタリアの家庭料理ではトマトがおふくろの味?
トマトソースが日本でいう味噌や醤油の
役割で活躍しています。
西洋には「トマトの時期には下手な料理はない」ということわざがあります。トマトは「うまみ成分」である「グルタミン酸」「アスパラギン酸」の宝庫です。
日本で昆布だしやかつおだしが、さまざまな料理に使われてきたように、南欧州の地中海沿岸地方では、18世紀頃からトマトが料理のベースとして親しまれてきました。その代表格がトマトソースです。
例えばイタリアでは、夏の終わりのトマトの値段が下がる時期に、各家庭で一年分のトマトソースを作ります。その作業には家族総出で2~3日も費やすほどで、できあがったトマトソースは消毒したビンなどに密封されて保管され、日々の料理のベースとして活躍します。イタリアの家庭のトマトソースは、まさに“イタリア版おふくろの味”で、トマトが日本における味噌・醤油の役割を果たしているのです。
トマトと味噌・醤油に共通するのは“うまみ”成分の「グルタミン酸」です。南欧州の地中海地方ではトマトから、日本(を含むアジア)では大豆からという違いはありますが、共に植物由来の「グルタミン酸」を上手に引き出し、様々な食材の味を引き立てる“うまみ”成分として活用しています。
カゴメは21世紀の新うまみだしとしてトマト、
トマト調味料の需要拡大を
図っていきます。
トマトの故郷は、南米ペルーを中心としたアンデス高原の太平洋側の地域という説が有力です。この野生種トマトは、人間や鳥によってメキシコに運ばれ、栽培され食用になったと考えられています。
メキシコで栽培されたトマトは、1492年のコロンブスによる新大陸発見後、欧州に広まりました。そして、そこでトマトを食べるようになったのは18世紀になってからといわれます。強烈な匂いやあまりに鮮やかな赤い色への抵抗感、さらにナス科の植物には麻酔作用や幻覚作用のある植物が多かったことから、トマトも有毒植物であると信じられ、200年間ほど食用としては敬遠されていたようです。
トマトはイタリアのサン・マルツァーノで、水分が少なく、糖分が多く、酸味が弱い、加工に適した品種に改良され、料理の味付け用トマトソースとして使われるようになり、現在のように、イタリア、ギリシャなどの南欧州の地中海沿岸地方では、料理に欠かせないものになりました。
トマトのおいしさは、「グルタミン酸」を基本に、酸味と甘みが調和しているのが特長です。味噌・醤油と同様に、植物由来の「グルタミン酸」が“うまみ”を醸し出すというなじみやすい要素と同時に、トマトならではの酸味と甘みがプラスαされるため、日本の食卓でも、従来の生食中心の消費から、料理の味付けベースなどに活用した新しいうまみだしとしての利用が増えるものとカゴメでは考えています。