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継続的な運動とトマトジュース摂取によって 生活習慣病予防(血圧低下作用)と運動能力向上の 効果が期待ーカゴメ、国際医療福祉大学の共同研究

年月日

 
 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は国際医療福祉大学(樋渡正夫教授)との共同研究により、継続的な運動とトマトジュースの飲用を組み合わせることによって、生活習慣病を予防し、運動能力を向上させる可能性があることを明らかにしました。
なお、本研究内容は第53回食品科学工学会(8月28日〜30日、日本大学)、およびIUFoST 13th World Congress of Food Science and Technology(9月17日〜21日、フランスナント)において発表いたします。
■共同研究者 国際医療福祉大学 樋渡正夫教授のコメント
 今回、継続的な軽度運動とトマトジュース摂取を組み合わせることにより、血圧低下作用や、運動時の心拍数上昇抑制作用がみられた。運動が生活習慣病予防やQOLの向上に良いことは以前から知られているが、そこに野菜摂取を組み合わせることでプラスに働くことが期待できる。ビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源としてだけでなく、野菜の新たな可能性を示す結果であり、今後は、今回の現象が、トマト中の一つの成分、それとも、複合的な作用によるものなのかを明らかにしていきたい。
■研究の背景
 厚生労働省が推奨する「健康日本21」でも取り上げられているように、生活習慣病予防のためには、食生活の改善と共に運動が重要です。実際、適度な運動を行っている人は肥満、虚血性疾患、高血圧などの罹患率が低いことが知られています。また、トマトには抗酸化作用を有するリコピンなどのカロテノイドや、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれているため、継続的に運動をする人がトマトジュースを飲用することで、さらに生活習慣病予防や運動能力向上が期待できると考えました。
■研究概要
≪目的≫
 継続的に適度な運動を行っている人は肥満、虚血性疾患、高血圧などの罹患率が低いことが知られています。トマトには抗酸化作用を有するリコピンなどのカロテノイドや、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれているため、血圧などへの影響、及び運動時の心拍数を指標にして、継続的な運動とトマトジュース摂取の組み合わせによる効果を国際医療福祉大学と共同で検討しました。

≪内容≫
  本研究に対して同意が得られた40〜59歳の健康な成人11名を被験者としました。被験者は、自転車エルゴメーターを用いて、心拍数100程度の運動を、週2回、20分以上で3ヶ月間継続しました。被験者のうち6名は、毎日トマトジュースを320g摂取しました。なお本試験は、ヘルシンキ宣言の精神に則り実施いたしました。
(図1説明)安静時の血中リコピン濃度の増加度を示しています。今回の試験で使用したトマト ジュースには10mg%の濃度でリコピンが含まれています。継続的にトマトジュースを摂取していた群は、試験前や非摂取群と比較して、有意に血中リコピン濃度が高まりました。
継続的なトマトジュース摂取により、血中リコピン濃度が高まる
(表1説明)運動とトマトジュース摂取を継続した群の、血圧が高めの方(収縮期血圧130以上または拡張期血圧85以上の方)の安静時の血圧を示しています。収縮期血圧と拡張期血圧が試験前と比較して、有意に低下しました。
継続的な運動とトマトジュース摂取により、血圧低下作用が期待できる
(図2説明)漸増負荷運動試験時の心拍数の推移を示したものです。1分毎の心拍数の測定結果から、近似式を求め、その傾きを比較しました。その結果、試験前と比較して、継続的に運動を実施しただけでも傾きが緩やかになりました(図2ー1)が、トマトジュースを摂取した群では、さらに緩やかな傾きを示しました(図2ー2)。
継続的な運動とトマトジュース摂取により、運動能力向上作用が期待できる
用語の説明
健康日本21:
生活習慣病予防の観点から、「食事」「運動」「休養」などの生活における目標値を厚生労働省が示したもの。

肥満:
日本肥満学会では、BMIが25以上を肥満と定義している。肥満になると、高血圧、糖尿病、高脂血症の発症頻度が高くなるといわれている。

虚血性疾患:
狭心症や心筋梗塞などの、冠状動脈の流れの悪化による血液不足から、心臓に起こる疾患。危険因子として、高血圧、喫煙、高脂血症が挙げられる。

高血圧:
収縮期血圧が140mmHg以上又は拡張期血圧が90mmHg以上を高血圧と定義されている。それ以下でも、収縮期血圧が130mmHg以上又は拡張期血圧が85mmHg以上の場合は正常高値血圧と分類される。高血圧は、心臓病、脳卒中、動脈硬化などの原因の一つであり、血圧低下のためには、運動習慣や減塩とともに、カリウム摂取も勧められている。

カロテノイド:
主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素で、カロテノイドのうちβ-カロテンなどは体内でビタミンAに変換される。トマトにはリコピン(赤色)、ニンジンには β-カロテン(橙色)、赤ピーマンにはカプサンチン(赤色)が特徴的に含まれる。最近は、抗酸化作用による疾病予防作用が注目されている。

漸増運動負荷試験:
負荷を段階的に上げていく運動試験。今回は、自転車エルゴ メーターを用いて、10Wの負荷から始め、1分毎に負荷を10Wずつ上げていった。ペダルの回転数は50rpmとし、10分間行った。

 

【資料】 学会発表の要旨
 
第53回日本食品科学工学会 発表要旨

継続的な運動におけるトマトジュース摂取の効果について


小泉一愉(カゴメ総研)、稲熊隆博(カゴメ総研)、勝井洋(国際医療福祉大)、樋渡正夫(国際医療福祉大)
 
【目的】継続的に適度な運動を行っている人は肥満、虚血性疾患、高血圧などの罹患率が低いことが知られている。また、トマトには抗酸化作用を有するリコピンなどのカロテノイドや、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれている。そこで、運動とトマトジュース摂取との組み合わせによるBMIや血圧などへの影響、及び運動時の心拍数の推移や運動能力への効果について検討を行った。
【方法】40歳〜59歳の健常な成人11名を対象とし、トマトジュース摂取群(無塩、320mL/日)6名と非摂取群5名に分けた。運動は自転車エルゴメーターを用い、心拍数を指標とした軽度な負荷で実施した。試験期間は3ヶ月とし、運動頻度は週2〜3回、運動時間は20分/回以上とした。1ヶ月に1度、BMI、血圧、体脂肪率および漸増運動負荷試験時の心拍数を測定した。さらに長座体前屈や握力など6種目の新体力テストを実施した。
【結果】トマトジュース摂取群、非摂取群とも3ヶ月間継続的な運動を実施することで、漸増運動負荷試験の心拍数の上昇が緩やかになった。トマトジュース摂取群では、体力テストの点数向上が認められ、また血圧が高めな対象者では、血圧の低下が認められた。以上の結果から、継続的な運動とトマトジュース摂取とを組み合わせることが、生活習慣病の発症予防と運動能力向上に有効であることが示唆された。