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六条大麦を原料とした麦茶の香りにリラックス効果が期待!! ーカゴメ、杏林大学との共同研究ー

2007年5月16日



カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は、杏林大学医学部(古賀良彦教授)との共同研究により、 六条大麦(※1)を原料とした麦茶の香りに、リラックス効果が期待できることを明らかにしました。
なお、本研究内容は第61回日本栄養・食糧学会大会(5月17日〜20日、国立京都国際会館)において発表いたします。

■ 共同研究者 杏林大学医学部 古賀良彦教授のコメント
α波(※2)とは、脳が円滑に機能していることを反映することから、リラックス度の指標とされる脳波成分です。我々の研究グループは、これまでに、コーヒーやワインの香りに、α波出現量を増加させるものがあること、また香りの脳機能に与える影響は、同じ嗜好飲料の中でも種類や濃度によって異なることを明らかにしてきました。麦茶には焙煎香を特徴とするアルキルピラジン(※3)類をはじめ、多くの香気成分が含まれています。その香気成分の種類や含有量は、原料麦や焙煎、ドリップなどの製造条件によって差異が生じ、異なる香りを呈するようになります。今回、六条大麦を原料とした麦茶の香りに注目して評価を行ったところ、α波の出現量が増え、心理的評価の結果からリラックスしていることがわかり、六条大麦を原料とした麦茶の香りには、リラックス効果が期待できました。

■ 研究の背景
古くは江戸時代から、麦茶は、のどの渇きを癒し、水分補給のために好んで摂取される飲料として知られています。これまでにカゴメは、香り成分の一つであるアルキルピラジン類の多い麦茶が、血液の流動性を向上させることを明らかにしています。今回、アンケート調査から、麦茶を飲むと多くの人たちが、「ほっとする」と感じていることがわかりました。一方、最近の研究で、食品に含まれる香り成分の持つリラックス効果が報告されていることから、香ばしい麦茶の香りにも、リラックス効果が期待できるのではないかと考えました。

■ 研究概要
目的
麦茶には、飲用すると「ほっとする」といったアンケート調査がありますが、科学的に立証できるデータは存在しておりません。そこで、六条大麦を原料とした香ばしい麦茶の香りに着目し、α波の出現量や心理的評価を指標にしたリラックス効果について、杏林大学と共同で検討しました。

内容
本研究はヘルシンキ宣言に則って実施し、研究に同意が得られた平均年齢37.8歳の右手利きの健康な女性12名を、被験者としました。試料は六条大麦を原料とした市販の麦茶、その希釈液 (蒸留水で希釈した麦茶)および濃縮液(濃くドリップした麦茶)とし、蒸留水(無臭対照)と比較を行いました。それぞれの試料5mLを試験管に採り、目を閉じて座った状態の被験者の鼻前3cmに呈示しました。被験者には、その状態で3分間香りをかいでいただきました。試料呈示中は、リラックスの指標の一つであるα波の出現量を測定しました。また、心理的評価として、提示した試料をかいでいる間の香りの好み、気分、リラックス度などについて、VAS法(※4)により、測定を行いました。

結果

図1.心理的評価の結果
(平均値+S.D. 異なる文字間に有意差あり,p<0.05ANOVA)

香りをかぎ終わった時の「香りの好み」、「気分」、「リラックス度」を、図1に示しました。六条大麦を原料とした麦茶の香りをかいだ時が、「香りの好み」が最も高く、同じように「気分」と「リラックス度」も最も高値を示しました。六条大麦を原料とした麦茶の濃縮品も高値を示しましたが、「リラックス度」においては、蒸留水やその希釈品と比較して、有意な差はみられませんでした。

図2.α波の出現量
(平均値+S.D. **p<0.01 vs蒸留水ANOVA )

香りをかいでいる間の、頭頂部におけるα波 (8.0〜10.5Hzの領域)の出現量を、図2に示しました。蒸留水と比較して、六条大麦を原料とした麦茶の香りをかいだ時にのみ、有意にα波の出現量が増加しました。


図3.特徴的なα波の分布を示した例

香りをかいだ時のα波(11.0〜11.9Hz)の特徴的な例を図3に示しました。最も優勢にα波が出現するといわれている後頭部においても、六条大麦を原料とした麦茶の香りをかいだ時は、α波の出現量が増える傾向がみられました。

 これらの結果から、六条大麦を原料とした麦茶の香りには、リラックス効果が期待できることが明らかとなりました。

■用語の説明
※1 六条大麦
大麦は大別すると、穂先に六列の種子が並ぶ「六条大麦」と二列の種子が並ぶ「二条大麦」に分けられる。「二条大麦」と比較して、「六条大麦」にはタンパク質が多く含まれている。麦茶においては、焙煎時の加熱によって、主にこのタンパク質から麦茶独特の香り成分が生成する。

※2 α波
脳波を構成する成分中、周波数が8〜13Hzの帯域に属するもの。安静時においては、他の脳波構成成分より多く出現しているため、リラックスの指標として利用されている。食品においてはこれまで、コーヒーやワインなどの香りをかぐことでも、α波が増加することが知られている。


※3 アルキルピラジン
ピラジンとは、二つの窒素を含む、右図のような六員環構造をもった化合物である。このうち、2 3 5 6位の水素が、 メチル基やエチル基といった、アルキル基によって置換されたものをアルキルピラジンと呼び、麦茶の香り成分の一つである。 カゴメは、アルキルピラジンを多く含む麦茶が、血液流動性を向上させることを明らかにしてきた。

※4 VAS法
Visual AnalogScaleの略。下図のように、左端を最も悪い状態、右端を最も良い状態として、100mmのスケール上に、評価項目(香りの好み、気分、リラックス度など)の状態をチェックする心理的評価方法。今回は左端を0とし、チェックされた位置までの距離(mm)を数値化した。



【資料】学会発表の要旨

第61回日本栄養・食糧学会大会 発表要旨

麦茶の香りが脳機能に与える影響の脳波分析による評価
○小長井ちづる1)3)、森啓信2)、古賀良彦3)
1)日本女子大・食物、2)カゴメ・総合研究所、3)杏林大・医 精神神経科


【目的】 麦茶には焙煎香を特徴とするアルキルピラジン類をはじめ、多くの香気成分が含まれる嗜好飲料である。香気成分の種類や含有量は、その原料麦、焙煎、抽出などの製造条件によって差異が生じ、異なる香りを呈するようになる。われわれの研究グループは、これまでに、嗜好飲料であるコーヒーやワインの香りには、α波出現量を増加させるものがあること、また香りの脳機能に与える影響は、同じ嗜好飲料の中でも種類や濃度によって異なることを示してきた。α波とは、脳が円滑に機能していることを反映することから、リラックス度の指標とされる脳波成分である。そこで本研究では、麦茶の香りが脳機能に与える効果ならびに濃度による効果の差異を明らかにすることを目的として、濃度の異なる麦茶を試料とし、それらの香りの脳波基礎活動への影響につき検討した。
【方法】 被験者は、インフォームド・コンセントを得た37.8±6.0歳の右手利き健常女性12例とした。試料は市販の麦茶飲料A原液、その濃縮液および希釈液、Aとは製造条件の異なる麦茶飲料B原液、蒸留水(無臭対照)の計5種とし、それぞれ5mlを試験管に採り被験者の鼻前3cmに呈示した。脳波は、国際10ー20法に基づき連結両耳朶を基準とし、頭皮上19部位より閉眼坐位状態で3分間導出記録した。また、匂いの好み、匂いの強さ、試料呈示中の気分、リラックス度、覚醒度の項目につき、VAS法により内省報告を得た。
【結果・考察】 α波周波数帯域の脳波成分につき、パワースペクトル値を算出し試料間の比較をおこなったところ、比較的低い周波数帯域のα波については、試料濃度の差異が顕著であった。特に、麦茶飲料Aの原液および希釈液は、その濃縮液に比べて有意にα波量が多かった。すなわち、通常のものに比し香気の強い麦茶については、α波の出現が抑制されることが示唆された。また、A原液ならびに希釈液は、蒸留水と比較しα波の増加がみられた。以上より、麦茶は濃度の違いによる香りの相違によって、脳機能に対し相反する影響があることが示された。