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カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)は国際医療福祉大学(樋渡正夫教授)との共同研究により、運動の合間のトマトジュース飲用が、運動後の疲労を軽減する可能性があることを明らかにしました。 なお、本研究内容は第13回日本運動生理学会(7月30日〜31日、東京工業大学)において発表いたします。 | |||||
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■共同研究者 国際医療福祉大学 樋渡正夫教授のコメント | |||||
今回トマトジュースの飲用により、運動直後の疲労感が軽減された。乳酸の代謝がスムーズに行われたことにより、エネルギー源を有効に利用できたことが、原因の一つとして考えられる。クエン酸摂取による乳酸代謝促進の報告があるが、トマトジュースに含まれるクエン酸量は、それよりも少ない量であるため、クエン酸以外の成分が関与していると考えられる。今後、他のバイオマーカーの測定を行い、有効成分や詳細なメカニズムについて検討を行っていく。 | |||||
■研究の背景 | |||||
厚生労働省が推奨する「健康日本21」でも取り上げられているように、生活習慣病予防のためには、食生活と共に運動が重要です。しかし適切な運動が健康の保持に必要である一方で、過剰な酸化ストレスや疲労による障害を生じます。野菜にはビタミンやミネラル、有機酸などが含まれ、特に緑黄色野菜には抗酸化作用を有するカロテノイドが多く含有されています。そこで、運動される方が野菜を摂取することで、酸化ストレスや疲労の障害を軽減できるのではないかと考えました。 | |||||
■研究概要 | |||||
目的: トマトには、抗酸化作用を有するリコピンなどのカロテノイドや、有機酸、アミノ酸 が多く含まれており、トマトジュースの飲用が運動による障害を軽減することが期待 できるため、自覚的運動強度(RPE)や乳酸を指標にして、トマトジュース飲用が運 動疲労の軽減に与える影響について国際医療福祉大学と共同研究を行いました。 内容: 本研究に対して同意が得られた健康な成人10名を被験者とし、自転車エル ゴメーターを用いて、心拍数130程度の運動を1時間、前半と後半の2回に分けて 行い、その運動の合間にトマトジュースを320ml(又は対照として水を320ml)飲用 しました。 結果: ![]() (図1説明) 後半運動直後のRPE(自覚的運動強度)を示しています。RPEは、20段階で自分の体感した運動強度を数値化するもので、主観的な疲労感を表します。例えば、15 とすると「きつい」ということになります。水飲用群と比較した場合、トマトジュース飲用群は有意(*p<0.05,t-test)に疲労感が少ない結果となりました。 ![]() トマトジュース飲用により、運動後の疲労感が軽減する ![]() (図2説明) 乳酸値の推移を示したものです。運動直後は乳酸値が増加しますが、トマトジュース飲用群は、水飲用群よりも低い値を示しました。その後もトマトジュース飲用群では、 乳酸値が水飲用群よりも低く、緩やかに推移しました。 ![]() トマトジュース飲用により、乳酸の代謝が促進され、エネルギーとして利用されたと考えられる | |||||
■用語の説明 | |||||
【疲労】 長時間継続する活動により、細胞・組織・器官などの反応あるいは機能が低下する現象。全体としては、身体的・精神的疲労としてあらわれる。 【クエン酸】糖をエネルギーとして利用する際の調節酵素であるPFK(ホスホフルクトキナーゼ)を阻害することで、乳酸の代謝が促進されると考えられている。レモンや梅、ライムなどの果実に多く含まれているが、野菜の中では、トマトにも多く含まれている。 【カロテノイド】主に植物に存在する、赤・橙・黄色の色素で、カロテノイドのうちβ-カロテンなどは体内でビタミンAに変換される。トマトにはリコピン(赤色)、ニンジンにはβ-カロテン(橙色)、赤ピーマンにはカプサンチン(赤色)が特徴的に含まれる。最近は、抗酸化作用による疾病予防作用が注目されている。 【乳酸】運動時、糖の利用が高まる過程で発生する物質。乳酸が過度に蓄積すると組織が酸性になり、筋疲労などの原因になるといわれているが、最近では、乳酸がエネルギー源として利用されることに注目し、乳酸の代謝を高め、効率よく利用することが重要であると考えられている。 【バイオマーカー】生体内の情報を数値化する指標。今回の試験でいえば、乳酸がそれにあたる。 | |||||
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