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野菜飲料と牛乳の同時摂取がカロテノイドの吸収性を高める作用を確認

年月日

 
 カゴメ株式会社総合研究所 (栃木県那須塩原市)は、野菜飲料(トマトジュース、キャロットジュース)と牛乳を同時に摂取した場合のカロテノイドの吸収性に関する検討を行ない、ヒトでの評価において野菜飲料と牛乳との同時摂取によりカロテノイドの吸収性が高まることを明らかにしました。本研究内容は、平成18年度 第49回 果汁技術研究発表会 において発表いたします。
■研究者のコメント
 野菜に含まれるカロテノイドの吸収性を向上させる方法として、油と同時に摂取する方法が報告されております。さまざまな調理方法や食べ合わせなど、食べ方を工夫することで、これら有用成分を効率よく吸収できるのではないかと考え、今回は牛乳との同時摂取による吸収性への影響について評価を行ないました。その結果、野菜飲料と牛乳の同時摂取でカロテノイドの吸収性が高まることを見出しました。
 野菜の摂取量は厚生労働省が推奨する350gに達していないのが現状ですが、今回の研究で、食べ方を工夫することで効率良く有用成分を吸収できる一例を示すことができたと思います。もちろん、野菜の摂取量を増やすことは重要ですが、調理や食べ合わせに工夫をし、賢く野菜を食べることをお奨めいたします。
■研究の背景
 近年、生活習慣病予防の観点から、食生活の改善が重要視されており、特に野菜の摂取は注目されている項目です。厚生労働省が発表した21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21」では、野菜を一日350g摂取することを目標としています。しかし、平成15年の「国民健康・栄養調査」結果では、野菜摂取量の平均は288.5gで、「健康日本21」が定める目標値に対し大きく不足しています。
  野菜にはさまざまな健康に寄与する成分が含まれていることが近年の研究で明らかになってきていますが、その中でカロテノイドは高い抗酸化能を有しており、生活習慣病の予防に重要な成分といわれております。
 カロテノイドの吸収性は、食品に含まれるさまざまな成分やその加工形態の影響を受けることが知られております。例えば、トマトと油を一緒に摂取することでカロテノイドの吸収率が上昇することが報告されています。効率よくカロテノイドを吸収できれば、野菜不足によるカロテノイド摂取の低下を補うことができると考えられます。
 そこで、カロテノイドの吸収率を向上させる方法として、日常的に摂取されており、かつ脂質を含む飲料である牛乳に着目し、トマトジュースまたはキャロットジュースとの同時摂取がカロテノイドの吸収性に及ぼす影響を検討しました。
■研究概要
≪目的≫
 野菜飲料と牛乳の同時摂取がカロテノイドの吸収性に及ぼす影響を解明する目的で、吸収性の指標として血中のカイロミクロン中のカロテノイドの濃度の測定を行ないました。すなわち、野菜飲料と牛乳を同時に摂取し、その後のカイロミクロン中のリコピンやβ-カロテン濃度の変化を評価いたしました。

≪内容≫
  健康なボランティア(トマトジュース5名、キャロットジュース7名)に野菜飲料(300g)、または野菜飲料(300g)と牛乳(300g)を摂取して頂きました。摂取前と摂取6時間後に採血を行い、カイロミクロン中のリコピンまたはβ-カロテン濃度を測定しました。
 その結果、牛乳と同時に飲用することで、トマトジュースだけのときに比べカイロミクロン中のリコピン濃度は約3倍、β-カロテンの濃度は約3倍に上昇しました(図1)。また、キャロットジュースにおいても、牛乳との同時に飲用することにより、カイロミクロン中のβ-カロテン濃度が約2倍上昇しました(図2)。
 よって、両飲料とも牛乳と同時に摂取することでカロテノイドの吸収性が高まることがわかりました。
用語の説明
カロテノイド:
野菜・果物やカニやエビなどの水産物などに含まれている赤・橙・黄色の脂溶性色素で、現在では600種類以上の存在が知られています。トマトに含まれるリコピン、ニンジンのβ-カロテン、赤ピーマンのカプサンチンが有名です。

リコピン:
カロテノイドの一種で、トマトに多く含まれる赤色色素です。強い抗酸化能を示すとともに、前立腺がんなど、種々の疾病に対する予防作用が報告されています。

β-カロテン:
カロテノイドの一種で、緑黄色野菜に多く含まれる橙色色素です。体内において2分子のビタミンAに変換されることから、以前よりプロビタミンAとしての重要性が認識されていましたが、近年ではβ-カロテン自体の生理作用が着目されており、抗酸化作用に基づくと考えられる種々の生活習慣病予防作用や紫外線(日焼け)障害に対する予防作用などが報告されています。また、我々の研究により、コレステロールを下げる働きがあることも明らかになってきました。

カイロミクロン:
カイロミクロンは、血液中の脂質の輸送体のことです。脂質は水に溶けないので、タンパク質と結合した状態で血液中を循環しています。脂溶性物質であるカロテノイドやビタミンEなどは、カイロミクロンに結合して吸収されます。

 

【資料】 学会発表の要旨
 
野菜飲料と牛乳の同時摂取が カロテノイドの吸収性に及ぼす影響

カゴメ株式会社 総合研究所
○ 佐々木啓乃、稲熊隆博、林宏紀
 
 近年、生活習慣病予防の観点より、食生活の改善が重要視されている。特に、野菜の摂取は注目されている項目である。「健康日本21」では、野菜を一日350g摂取することを目標としている。しかし、平成15年の「国民健康・栄養調査」結果では、野菜摂取量の平均は288.5gで、健康日本21が定める目標値に対し不足している。
 野菜には様々な健康に寄与する成分が含まれていることが近年の研究で明らかになってきているが、その中でカロテノイドは高い抗酸化能を有しており、生活習慣病の予防に重要な成分である。
 カロテノイドの吸収性は、様々な食品中の因子やその加工形態の影響を受ける。例えば、トマトと油を一緒に摂取することで吸収率が上昇することが報告されている。効率よくカロテノイドを吸収できれば、野菜不足によるカロテノイド摂取の低下を補うことができると考えられる。
 そこで、カロテノイドの吸収率を向上させる方法として、本報告では日常的に摂取されており、かつカロテノイドは含んでいないが、脂質を含む飲料である牛乳に着目し、トマトジュースまたはキャロットジュースとの同時摂取がカロテノイドの吸収性に及ぼす影響を検討した。

<実験の方法>
 本摂取試験は、健康なボランティア(トマトジュース5名、キャロットジュース7名)を対照に行なった。カロテノイドの吸収性の指標として、試験飲料摂取後のカイロミクロン中のリコピンまたはβ-カロテン濃度を測定した。
 被験者全員に試験飲料または試験飲料と牛乳を摂取してもらった。試験はすべて早朝空腹時に試験飲料を摂取し、摂取前と摂取6時間後にそれぞれ採血を行った。採取した血液はTerpstraの方法にて分画し、カイロミクロン画分を得た。得られたカイロミクロン画分よりカロテノイドを有機溶媒を用いて抽出し、HPLCにてカロテノイド含量を定量した。

<実験の結果>
 Fig.1にトマトジュースまたはトマトジュースと牛乳の同時摂取後のカイロミクロン中のリコピン及びβ-カロテン濃度を示した。牛乳と同時摂取することでトマトジュースだけのときと比べて、リコピンのカイロミクロン中の濃度は約3倍、βーカロテン濃度は約3倍に上昇した。



 同様にキャロットジュースにおいても牛乳との同時摂取により、カイロミクロン中のβ-カロテン濃度の上昇が確認された(約2倍)。
 両飲料とも牛乳との同時摂取によりカロテノイドの吸収性の上昇が認められた。よって、野菜飲料中のカロテノイドを効率よく摂取するためには、牛乳との同時摂取が有効であると考えられる。