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Lactobacillus brevis KB290(ラブレ菌)を含む乳酸菌飲料による高齢慢性便秘患者の下剤使用量低減効果を確認~カゴメ総合研究所と松生クリニックが日本乳酸菌学会2009年度大会(7月6-7日開催)にて発表~

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 カゴメ株式会社総合研究所(栃木県那須塩原市)と松生クリニック(東京都立川市)は、Lactobacillus brevis KB290(以下、ラブレ菌)の整腸作用についての研究を進めております。今回、高齢慢性便秘患者30名を被験者として試験を行い、ラブレ菌を含む乳酸菌飲料の高齢慢性便秘患者の下剤使用量への効果を調査しました。本研究内容を、2009年7月6-7日に甲府市のベルクラシックで開催される日本乳酸菌学会2009年度大会にて発表いたします。


■ 共同研究者 松生クリニック 松生 恒夫院長のコメント
 腸は栄養素を吸収するのと同時に、体内の老廃物の7割以上を便として排泄する、生命維持に不可欠な役割を担う器官です。このような大切な腸の働きが低下すると、健康に様々な悪影響を与えます。腸の働きを表すバロメーターのひとつとして、排便状況がありますが、日本では便秘に悩む人は500万人にも上るといわれており、特に60歳以上の方では女性だけでなく男性でも便秘を自覚する方が増えるという調査結果もあります。さらに問題なのは、最近では市販の便秘薬を安易に服用し、下剤を飲まなければ排便できない「下剤依存症」に陥っている人が増えていることです。「下剤依存症」は下剤を飲めば飲むほど腸の働きが低下するという悪循環で、どんどん悪化してしまいます。
 便秘の治療は、適切な下剤の投与と食事や運動といった生活習慣の指導によって行いますが、通常、便秘が解消するまでには時間がかかるものです。プロバイオティクスといわれる乳酸菌は、これを摂取すると、腸内に共生する細菌のバランスが改善され、腸の働きを活発にすることから、便秘の改善が期待されています。
 今回、ラブレ菌を含む乳酸菌飲料を高齢慢性便秘患者に摂取していただいたところ、下剤の使用回数と使用量の両方が低減しました。この結果から、ラブレ菌を含む乳酸菌飲料を食事に取り入れることが、高齢慢性便秘患者の排便を下剤に頼ったものから自然なものに改善する一助になると考えられます。今後も、ラブレ菌を含む食品の効果をさらに検討して行きたいと考えています。


■研究の背景
 ラブレ菌は便秘傾向者を対象とした試験により、生きて腸まで到達し、善玉菌であるビフィズス菌の占有率や乳酸桿菌の数を増加させること(第61回日本栄養・食糧学会大会発表)、排便回数と排便量を増加させること(日本農芸化学会2008年度大会発表)、また慢性便秘患者を対象とした試験により、下剤使用量を低減させること(日本乳酸菌学会2008年度大会)が明らかとなっています。これらの結果からラブレ菌は、腸内菌叢を改善することによりお腹の調子を整えるプロバイオティクスとしての効果が示されています。
 今回は、ラブレ菌を含む乳酸菌飲料の高齢慢性便秘患者(65歳以上)の下剤使用量への効果を検討するために、高齢慢性便秘患者30人に、ラブレ菌を含む乳酸菌飲料130mLを1日1本4週間摂取していただき、下剤使用回数と下剤使用総量の変化を調査しました。


■研究概要

【試験方法】
 通院治療中の高齢慢性便秘患者(65〜80歳、30名)を募集し、同意を得られた方を対象に、 まず、2週間前観察を行いました(摂取前期間)。次に、ラブレ菌を含む乳酸菌飲料130mLを1日1本4週間毎日摂取していただきました(摂取期間)。その後、2週間後観察を行いました(摂取後期間)。摂取前期間、摂取期間及び摂取後期間中毎日アンケートを記入していただき、下剤使用回数と下剤使用量を調査しました。試験を完了した30名の高齢慢性便秘患者について、アンケートの結果から下剤使用回数、下剤使用総量を解析しました。

【結果】
 摂取前期間と比べて摂取期間及び摂取後期間中の下剤使用回数は2.1から1.6及び1.6回/日に(図1)、下剤使用総量は2.9から2.3及び2.3錠/日になり(図2)、有意に低い値を示しました。

図1;下剤使用回数の変化 摂取前期間と比較して統計学的に有意差あり(*:p < 0.05、n=30)


図2;下剤使用総量の変化 摂取前期間と比較して統計学的に有意差あり(*:p < 0.05、n=30)


【結論】
 以上のことより、ラブレ菌を含む乳酸菌飲料の摂取は高齢慢性便秘患者の下剤使用回数や下剤使用量の低減に効果があり、摂取後も2週間は持続することが示唆されました。高齢慢性便秘患者の薬剤に頼った排便が自然な排便に改善される一助になる可能性が考えられました。今後もラブレ菌の機能性を科学的に検証し、その価値を明らかにしていく予定です。

■用語説明
≪ラブレ菌≫
学名 Lactobacillus brevis KB290 → 通称、Labre (ラブレ菌)
京都の漬物「すぐき」から(財)ルイ・パストゥール医学研究センター(京都)で分離され、その整腸作用や免疫賦活作用が研究されてきました。

≪整腸作用≫
排便状況(排便回数、便性状)の改善および排便状況改善のメカニズムである腸内菌叢バランスの改善作用を整腸作用といいます。

≪便秘傾向≫
便秘の定義は明確に定められておらず、研究者によって定義が異なりますが、一般的に排便の間隔が不規則な場合、毎日排便がある場合でも排便に苦痛を伴う場合を指します。便秘傾向とは、これらの症状を示しますが、加療には至っていない場合で、排便が2週間で4〜10回の状態としました。

≪高齢慢性便秘患者≫
便秘の定義は明確に定められておらず、今回は通院治療を行っている方で65歳以上の人を高齢慢性便秘患者としました。

≪下剤使用回数≫
1日に慢性便秘患者の方が下剤(内服薬と座薬)を使用した回数を下剤使用回数としました。

≪下剤使用量≫
本研究の被験者である高齢慢性便秘患者の方に用いているマグミットとレシカルボン座薬の量を下剤使用量としました。