サステナビリティストーリー

カゴメとNEC、AI を活用して加工用トマトの営農支援を行う新会社を設立
環境に優しく収益性の高い営農を促進し、持続可能な農業への貢献を目指す

2022年9月、カゴメ株式会社(以下カゴメ)と日本電気株式会社(以下NEC)は、AI を活用して加工用トマトの営農支援を行う合弁会社「DXAS Agricultural Technology(以下DXAS)」をポルトガルに設立しました。社名の「DXAS」は、DX=Digital transformationで、A=Agricultureを、S=Sustainableに、というこの会社が目指す姿を表したものです。
DXASはカゴメのアグロノミーとNECのテクノロジーの融合により農業革新を起こし、環境に優しく収益性の高い営農を促進することで、世界各国での持続可能な農業に貢献します。

設立背景 -加工用トマト栽培の課題解決と事業の持続的な成長を目指してー

加工用トマトの需要は新興国を中心とした人口増加や経済成長に伴い今後も拡大が見込まれますが、一方、持続可能な加工用トマト栽培には、生産者減少への対応や環境負荷低減など様々な課題に取り組む必要があります。
カゴメにとって加工用トマトは、将来にわたり成長を続けるうえで、極めて重要な原材料であるため、持続可能な栽培を重要課題としています。この課題にむけた取り組みとして、2015年より NECと共同で環境に優しく収益性の高い営農の実現を目指して、AIを活用した営農アドバイスの技術開発や事業検証を行い、ポルトガル、スペイン、オーストラリア、アメリカで実証試験を重ねてきました。2020年4月には、両社は戦略的パートナーシップ契約を締結し、カゴメ内に新設した「スマートアグリ事業部」が中心となり、NECの農業 ICTプラットフォーム「CropScope(クロップスコープ)」を利用して、更なる営農アドバイスの機能・品質の向上を図るとともに、営農支援事業のマーケティングと将来の可能性を研究してきました。
そして、2022年9月、営農支援事業における技術開発のさらなる加速や営業活動の強化を目的に新会社による事業を開始することとしました。

新会社のビジョン・目指す姿 「DX ソリューションで、世界の農業に革新を。」

熟練の営農技術を AI に取り込んで作った最適なソリューションをそれぞれの畑にお届けすることで、誰もが、正確かつ効率的に農業を行える時代へ。
DXASは、気候変動に適応するサステナブル農業、Low input high output、生産効率の向上を実現する新しい農業の確立を目指します。

核となるサービス 「CropScope」の機能と提供価値

AIを活用した営業アドバイスサービス 圃場可視化サービス
(センサーや衛生写真を活用)
農家
(トマト生産者)
熟練者のノウハウを習得したAIが、環境に優しく収益性の高い営農を促進。
また技術継承が容易となり、新規就農者を増やすことが期待できる。
広大な圃場の状況を「見える化」できることで、速やかに異常に気づくことができ、栽培リスクを低減できる。
営農指導者 形式知化された営農支援ノウハウを利用することで、生産者への指導や営農指導者の育成に要する時間を減らすことができる。 圃場が広大であっても、異常が発生している箇所を的確に特定し、正確なデータに基づく指導ができる。
トマト加工会社 調達リスクの低減や投入資源の最小化が期待できる。 客観的なデータに基づいた全体最適な収穫調整により、生産性向上を図ることができる。

DXASが展開する水不足問題に対応する新サービス
AI営農アドバイスに加え、少量多頻度灌漑に対応した自動灌漑制御サービス

「CropScope(クロップスコープ)」に、少量多頻度灌漑(※1)に対応した AI 営農アドバイスと自動灌漑制御機能(※2)を加えたサービスの展開を2023 年 4 月から開始しました。
これにより、営農現場の水不足問題に対応することで、より環境に優しく収益性の高い営農を促進し、世界各国での持続可能な農業に貢献します。
(※1)作物が必要とする量の水や肥料を多数回に分けて少しずつ与え、作物にとって最適な土壌水分量を保つ栽培手法のこと。
(※2)灌漑設備と連携し、水や肥料をリモート・自動で制御する機能のこと。

開発背景

昨今、温暖化による気候変動の悪影響、農業資材の高騰など、農業生産者には大変厳しい環境が続いています。特に、ここ数年世界各地で発生している干ばつは農作物の栽培に大きな打撃を与えており、持続可能な農業を実現していく上で、水不足への対策は喫緊の課題となっています。
従来、少量多頻度灌漑は最適な土壌水分量を保ち消費する水の量を削減する栽培手法として一般的に知られていますが、本栽培方法は、刻々と変化する最適な水分量を判断することが難しく、また、広大かつ複数の圃場をもつ生産者にとっては管理が複雑で作業負荷が大きいことから普及が進んでいません。
そこで、カゴメとNECは、この課題を解決するために、「CropScope」で提供している水や肥料の AI 営農アドバイスを用いた少量多頻度灌漑の実証試験を、2022年 4 月よりポルトガルで実施しました。その結果、「CropScope」を活用していない圃場と比較し、約 15%少ない灌漑量で収穫量が約 20%増え、通常よりも少ない水の量で収穫量を増やすことに成功しました。本実証試験で得られた成果を踏まえ、少量多頻度灌漑に対応し、かつ、作業負荷の軽減につながる自動灌漑制御機能を加えたサービスを展開することとしました。

AI営農アドバイスと少量多頻度灌漑に対応した自動灌漑制御サービスのイメージ

少量多頻度灌漑のイメージ
通常の灌漑の場合、水過剰ストレスあるいは水欠乏ストレスが植物にかかってしまうが、少量多頻度灌漑では水ストレスのない状態を維持できる

自動灌漑設備の導入によって灌漑や施肥などの AI 営農アドバイスを自動で制御可能となり、煩雑で手間のかかる手動での作業が不要になる。

今後の展開

主に欧州、米州、オーストラリアの加工用トマト市場への普及を目指します。
水不足問題に対応することで、より環境に優しく収益性の高い営農を促進し、持続可能な農業に貢献していきます。