研究・開発


野菜の品種・栽培技術の研究

2023年に新設した「グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター」は、国内外でのサステナブルな農業の実現を目指し、気候変動や人手不足などの農業課題や農業の領域における新事業の探索に挑んでいます。
同組織内の農業資源・技術開発部では、トマトをはじめとする野菜の品種・栽培技術の研究を行っています。トマトについては、7,500種類を超える収集遺伝資源を保有しており、最先端技術を活用して、機能性やおいしさなどの品質をはじめ、病虫害への抵抗性、あるいは環境への耐性を持った品種などを開発しています。開発した品種は、畑や栽培施設で実際に栽培試験を行い、その能力を詳細に評価しています。
同時に、栽培技術の開発も重要な役割です。生産現場への技術導入をスムーズに実現するために、加工用トマトについては露地圃場を活用して研究を行い、生鮮トマトは、敷地内にあるカゴメの生鮮トマト菜園と同じ環境制御ができる実験用温室を活用して研究を行っています。

  • トマト組織片の継代をしている様子

  • 生鮮トマトの生育や着果状況を調べている様子



機能性・行動変容研究

「食健康研究所」では、野菜や乳酸菌をより人の健康に役立てるために、トマトのリコピンやGABA、にんじんのβ―カロテン、スルフォラファン、植物性乳酸菌のラブレ菌などの機能性を研究しています。
また野菜摂取量を増加させるため、人々の行動変容を促す研究も進めています。その成果の一つが、推定野菜摂取量を測定できる「べジチェックR」の開発です。すでに計測回数は700万回を超え、イベントやスーパーマーケット店頭だけでなく、一部の自治体の集団健康診断に取り入れられるなど活用が進んでいます。さらに、新たな食の提案のアプローチも開始しました。日本人に多い高血圧の予防法として、ナトリウムの摂取を控え、野菜に多く含まれるカリウムを多く摂る『ナトカリ』の普及に取り組んでいます。他にも、機能性表示食品対応や官学一体となった野菜摂取啓発活動、海外でのオープンイノベーションを進めるなど、健康寿命の延伸に向けた取り組みを広げています。

  • 血中のカロテノイド濃度を分析している様子

  • 機能性成分を観察している様子

研究成果

発表日 内容
2023.12.12 ナトリウムとカリウムの摂取バランスを考慮した食事で 尿ナトリウム/カリウム比の改善を確認 ~女子栄養大学と共同で実施した健常者を対象とした試験結果~
2023.10.31 <カゴメ、エーテンラボ、神奈川県立保健福祉大学の3者共同研究>自分の健康行動で社会貢献にも寄与できる食生活改善プログラムが野菜摂取行動を促進させることを確認~第82回日本公衆衛生学会総会で発表~
2023.9.6 <カゴメ、町田市教育委員会、町田市公立小学校栄養教諭による3者共同開発> 野菜摂取量推定機『ベジチェックR』を活用した食育授業で児童の野菜摂取の改善を確認 ~ 2024年以降はさらに実施校を拡大 ~
2023.9.5 医薬基盤・健康・栄養研究所と食品企業7社が連携し 「食環境整備推進のための産学官連携共同研究プロジェクト」が始動 ~自然に続けられる健康でおいしい食生活の実現に向けて~
2023.5.19 第77回日本栄養・食糧学会大会にて “「ナトカリ」への期待と展望”と題したセミナーを実施
2023.5.12 一般社団法人 ナトカリ普及協会 を設立 ナトカリ比という指標、及びナトリウム(塩)と野菜や果物から摂取するカリウムのバランスの良い食生活を普及することで、おいしく、楽しく、健康増進や循環器疾患の予防に貢献

  • ベジチェックR

  • ナトカリマップR

ベジチェックR

LEDを搭載したセンサーに手のひらを押し当てて、約30秒で野菜摂取量を推定できる機器。皮膚に蓄積したカロテノイド量を測定して、画面に推定野菜摂取量を表示します。

ナトカリマップR

東北大学とカゴメによる共同開発。「ナトカリマップR」には、ナトリウムを控え、カリウムを多く摂ることに役立つ料理の例や献立作りのヒントが載っています。


商品開発

開発部門は野菜飲料や食品等の他、新たな食品素材や容器、加工技術の研究開発を担っています。開発の際は、「畑は第一の工場」や「よい商品=よい原料×よい技術」といったカゴメならではの考えを大切にして、野菜や果実が持つ本来のおいしさや栄養素を最大限に活かしたモノづくりを目指しています。
またお客様のニーズや時代の要請を捉えた食品素材・最終製品をスピーディーに市場導入することを目指して、流通や外食チェーン、食品メーカー各社の製品開発の課題に対応する専門組織を設置するなど、顧客の期待に応える開発体制を整えています。

野菜生活100

20種類の野菜と3種類の果実を使用。 主な原材料であるにんじんは、香り成分の検査を実施してイヤな香り成分のすくないものを厳選し、更に加工・調合技術によって特有の強い香りや青臭さ抑制しおいしさを引き出しています。
野菜生活100はこれまで、お客様の声を聞きながら、もっとおいしく、もっと飲みやすくするために、ブレンドする野菜の種類や配合割合を何度も何度も調整し続けてきました。野菜をもっと摂りたい大人から、野菜が嫌いなお子様でもみんながおいしく飲めることを目指して、これからもたゆまぬ改良を続けていきます。

カゴメにんじんジュース 高β―カロテン

ニュージーランドのミネラル豊富な雪解け水と、肥沃な大地で育った、雑味が少なく濃い味のにんじんを主原料として使用しています。
雑味を低減させるベジタブルリファイニング製法で処理したにんじん汁を絶妙な割合で配合することで、すっきりした味わいを実現しました。
また無菌充填技術によりレモンで加酸する必要がなくなり、にんじん100%で設計することが可能になったことで、にんじん本来のおいしさをお楽しみいただけるようになりました。

本格イタリアンパスタソース「アンナマンマ」

1999年から続くロングセラー商品である「アンナマンマ」シリーズは、愛情をかけてきちんと手作りする本格イタリアンのブランドです。
トマト&ガーリックは本場イタリアで修業を積んだカゴメコーポレートシェフ監修のもと、にんにくの香ばしさとうま味を引き出すため、工程での焙炒条件を繰り返し検証するなど、細やかな味へのこだわりが詰まっています。「イタリアン本来のおいしさ」と「今の味のトレンド」を加味して、よりおいしいパスタソースになるように進化させています。

自然解凍で使える「冷凍イタリア産グリル野菜」

地中海性気候で育った彩り豊かな複数のイタリア野菜をカット・グリル加工・冷凍し、ミックスした自然解凍で使える業務用冷凍商品です。自然解凍で使える品質実現にはハードルがありましたが、業務用ユーザーからのニーズに応えるため、数年かけて微生物規格を保証するためのプロセス管理を検証・構築し、実現しました。

環境配慮型ペットボトル「スマートecoボトル」

ボトル本体にリサイクルPET素材を100%使用した、環境にやさしいボトルです。胴部の厚みを薄くすることでプラスチック使用量の低減とつぶしやすさを実現しました。
「ラベルが剥がしにくい」と感じているお客様が、指先でラベルをめくる動作をしていることに着目して、シュリンクラベルを剥がす部分にくぼみをつけて、剥がしやすくしました。捨てる際に分別しやすくなりました。

株式会社TWOと協業 プラントベースエッグ「Ever Egg」

新たな成長領域としてプラントベースフードに注目しております。この領域ではオープンイノベーションを積極的に推進して、パートナーとの共同開発商品も展開しています。
「Ever Egg」は株式会社TWOと共同で生み出した独自技術「野菜半熟化製法」(国内特許出願中)を使い、原材料に野菜を使用したプラントベースエッグ。“ふわとろ”食感を追及するために、原材料には100 パターン以上の組み合わせの中から人参と白インゲン豆を選定しました。


商品品質・安全性評価

「商品開発本部 安全性評価技術開発部」では、食品安全にかかわる世の中の情報から商品への影響を判断する「リスク予見活動」と、それに基づく「原料の安全性評価」をおこなっています。使用する原料は、「プロセス管理」と「分析による検証」の両輪で評価することで、商品の安全性を保証しています。例えば、残留農薬は、農家へ適切な使用方法を指導したり、実際の原料を調達部門や品質保証部門等と連携して分析・評価しています。同時に、これらの取り組みの高度化に向けた分析技術の開発も行っています。また、お客さまからのご指摘に基づき、商品の異物や微生物の同定をスピーディかつ正確に行う役割も担っています。
さらに、試験・分析機関としての実力を判定する国際規格ISO17025の認定を取得し、分析精度のさらなる向上にも取り組んでいます。これらの取り組みを積み重ね、「畑は第一の工場」という考え方のもと、農から生み出される価値ある安全な商品をお客さまにお届けすることに努めています。

  • 微生物検査を行っている様子

  • 香り成分を分析している様子