自然の恵みを原料とするカゴメグループにとって、自然環境の保全は事業の継続のために必要不可欠です。
特に、気候変動への対応は優先度の高い課題として認識し、気候変動シナリオ分析を行い、その結果をもとに、地球温暖化への対応、水の保全及び持続可能な農業を重要課題として積極的に取り組んでいます。
下記のシナリオ分析結果、指標、目標等を踏まえて環境マネジメント計画を策定しています。
G20金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」より、最終報告書「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」が2017年6月に公表されました。カゴメはこれに従い、2019年に気候変動シナリオ分析を実施し、事業におけるリスク・機会を明確化しており、2020年から、「指標と目標」の見直しに着手しています。また、2022年4月にはTCFD提言への賛同を表明しました。
カゴメグループは事業の最大のリスクを原料調達の途絶と考えています。地球温暖化による異常気象は、原料産地に大きな被害を及ぼします。このリスクを回避すべく、温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化防止への取り組みを加速するため、2018年の取締役会で決議したCO2の中長期排出削減目標を2021年に見直しました。
ISO14001に則ったカゴメ環境マネジメントシステムにおいて、トップマネジメントとして気候変動を含む当社の全ての環境活動を統括しています。環境に関する方針を掲げ、年2回のマネジメントレビューを通して環境マネジメントシステムの有効性を評価し、その改善を指示する責任と権限を有しています。
気候変動の顕在化は農作物を原料とするカゴメグループにとって大きなリスクになるとともに、長年蓄積された技術を活用することで機会にもなりえます。下表はカゴメグループにおけるリスクとその対応策及び機会の一例です。
リスク項目 | 対応策及び機会 | |
短期・中期的 |
・異常気象、気象パターンの変化 ・水ストレスによる生産量減少 |
・気候変動に対応できる野菜品種の獲得・販売 ・最小の水で生産できるトマト栽培システムの開発と利用 |
---|---|---|
長期的 |
・炭素価格上昇 ・生活者の行動変化 ・生物多様性の損失 |
・CO2排出削減目標達成に向けた取り組み ・環境配慮商品や認証品の積極的な開発 ・生きものと共生する農業の提案と普及 |
リスク管理の統括機関として「リスクマネジメント統括委員会」を設置し、社長を議長として、リスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し迅速な意思決定を図っています。特定した気候変動に関するリスク及び機会は環境マネジメント計画の中で課題化し、全社で取り組んでいます。
2050年までにカゴメグループの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指して、2030年に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を策定し、2022年にSBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の認証を取得しました。
※企業の温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定が定める水準と整合していることを認定する国際的イニシアチブ
項目 | 目標(2020年対比) | 2020年度実績(t) |
Scope1及びScope2 |
2030年度までに温室効果ガスの排出量を42%削減 (1.5℃目標) |
143,524 |
---|---|---|
Scope3 | 2030年度までに温室効果ガスの排出量を13%削減 | 1,315,239 |
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から提供された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
カゴメはTCFDの提言に従い、2019年に気候変動シナリオ分析を実施しました。分析はカゴメグループで最も大きく気候変動の影響を受けると思われる調達と生産分野を中心に、2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と対応策を検討しました。その結果、2℃上昇時は炭素税の導入による原料、容器包材等の価格高騰が事業への大きなインパクトとなり、4℃上昇時は水価格の高騰や暴風雨など異常気象の激甚化が事業に大きく影響を及ぼすことがわかりました。今後は範囲を拡大し、気候変動による購買行動の変化など商品に関する影響も考慮に入れて分析を進める予定です。
リスク項目 | 事業インパクト | ||||
分類 | 大分類 | 小分類 | 指標 | 考察(例) | 評価 |
移行リスク | 政策/規制 | 炭素税の上昇 | 支出 | 炭素税の導入により、原料、容器・包材へ幅広く影響しコストが上昇 | 大 |
---|---|---|---|---|---|
各国のCO2排出量削減の政策強化 | 支出・資産 | 省エネ政策が強化され、製造設備の高効率機への更新が必要 | 中 | ||
評判 | 消費者の行動変化 | 収益 | 気候変動により環境負荷を考慮した購買行動が拡大 | 大 | |
投資家の評判変化 | 資本 | 気候変動への対策が不十分な場合、投資家の評判悪化、資金調達が困難となる | 小 | ||
物理的 リスク |
慢性 | 平均気温の上昇 | 支出・収益 | 作物の品質劣化や収量低下が発生 | 大 |
降水・気象パターンの変化 | 支出・収益 | 降水量の増加や干ばつは作物産地に悪影響を及ぼし、原料価格が高騰 | 大 | ||
生物多様性の減少 | 支出 | 昆虫の減少により植物の受粉が困難となり、調達不能な原料が発生 | 大 | ||
害虫発生による生産量の減少 | 支出・収益 | 病害虫の拡大により作物の生産量や品質が低下し、安定調達が困難 | 中 | ||
農業従事者の生産性の低下 | 支出・収益 | 気温上昇により農業従事者の労働生産性が低下し、調達コストが上昇 | 小 | ||
急性 | 水ストレスによる生産量の減少 | 支出・収益 | 水不足により水の確保が困難となり、価格が高騰 | 大 | |
異常気象の激甚化 | 支出・収益 | 暴風雨などの異常気象の頻発で、被害を受ける産地が多発 | 大 |
リスク項目 | リスク対応策 | 機会 |
炭素価格上昇 |
・2050年までにカゴメグループの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指して策定した温室効果ガス排出量の削減目標(2030年)の達成(省エネ・創エネ・買エネ) ・サプライヤーとの協働でのCO2削減 ・各商品の価格転嫁策の策定と実働 |
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消費者の行動変化 |
・消費者の購買行動の把握と的確な営業活動 ・環境配慮商品や認証品の積極的な開発 |
・異常気象事のニーズを捉えた商品開発と販売 |
平均気温上昇 | ・データ活用等のスマート農業での気温変動対応 | ・気候変動に対応できる野菜品種販売の世界展開 |
降水・気象パターンの変化 | ・気候変動に対応できる野菜品種の獲得(高温耐性、病虫害耐性) | |
生物多様性の減少 | ・生きものと共生する農業の提案と普及 | ・菜園でハチを使用しないトマト栽培の促進 |
水ストレスによる生産量減少 |
・工場での水のリサイクルや節水取り組み推進(膜処理等) ・最小の水で生産できるトマト栽培システムの開発と利用 ・資源循環型農業の推進(工場排水・雨水の農地利用) |
・最小の水で生産できるトマト栽培システムの世界展開 |
異常気象の激甚化 |
・調達戦略の高度化(産地見直し、分散) ・暴風雨時でも栽培可能なしくみづくり ・BCP対策の高度化(気候変動を想定) |
・コトビジネスへの転換(原価変動に左右されないサービス事業へ) |