広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ、しまなみ海道、その真ん中に浮かぶ生口島。レモンの収穫期を迎え、あちこちに鮮やかなレモンイエローのドット模様で埋め尽くされています。
さっそく園地にお邪魔すると、樹の影から陽気な生産者さんの声が。生口島でお父さまの代から園地を受け継いでいるレモン農家の牧本さんです。
せっせと収穫しながら「元気なレモンの木は葉っぱの厚みが違うけんね」。
果実の表面を美しく仕上げるために、大きな葉を茂らせ、葉っぱのコートを着せるようにして育てるのが牧本さんのこだわりなのだそうです。
レモンの原産地は、インド・ヒマラヤの東部山麓。日本に本格的に伝えられたのは、明治の文明開化以降のことですからまだ140年くらいのおつきあい。
比較的新しいフルーツです。寒さに弱く、年間を通して温暖な瀬戸内海の気候が、レモン栽培にうってつけ。「レモン」生産量日本一の生口島を訪ねました。
レモンの花が咲くころは、他のみかんも花咲く季節。レモンの花は、つぼみのころは紫色かかっているのが、ほかの柑橘類とは違う特徴のようです。
柑橘類の香気成分(主にリモネン)は、 多くの果皮の「油胞」に存在しており、皮をむいたときに「油胞」が壊れて香気成分があふれ出すのです。
レモンは葉っぱや花びらにも「油胞」が存在しています。葉っぱを折ったり花びらをつぶすとレモンの香りがします。
「この時期は、洗濯物を干すと柑橘のにおいが洗濯物につくくらい、島中が柑橘のにおいよ」と笑う、牧村さん。
本当に、生口島のいたるところに柑橘の香りが満ちていて、島を歩いているだけで柑橘の香りに染まってしまいそうでした。
5月に花を咲かせたレモンは、じっくり半年かけて果実を育て、10月頃には、青いレモン(グリーンレモン)が収穫できるようになります。
黄色く色づいたレモン(イエローレモン)の収穫は、さらに2か月後の1月下旬~4月上旬です。
そんなレモンの大敵は「風」!レモンがかかりやすい「かいよう病」は、台風の風で伝染して、大きな被害をもたらすからです。
また、-3℃が8時間以上続くと枯れてしまうといわれるほど寒さにも弱いので、年間を通して温暖な瀬戸内海の気候が、レモン栽培にうってつけでした。
「陽当たりのいい斜面に畑をつくってくれて、ご先祖さまや先輩たちのおかげだね」と牧本さん。これが瀬戸内に「レモン産地」が大きな理由のひとつなのです。
瀬戸内のレモンには、かつて2度の大きな危機がありました。昭和39年(1964年)の「レモンの輸入自由化」と昭和51年(1976年)、56年(1981年)の大寒波によって、生産量は一気に半減。
レモン農家が、つくる気力を失うほどの、壊滅的な打撃でした。「ところが、10年で瀬戸田のレモンはよみがえったんよ!」と牧本さん。
「当時の農協の組合長さんがこれからのレモンは伸びるからと呼びかけて、みんなもう一度、植え始めたんだよね。先見の明と強い信念、それと度胸があった。」とのこと。
気候に恵まれていただけではありません。志の高い先輩たちの存在が、「レモン産地」を広げてきたんですね。
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