生産量日本一は、もちろん原産地?である宮崎県!宮崎市清武町の小高い丘陵地に広がるミカン畑・「十九の丘」
(「とくのおか」と読みます)は、昭和47年に、「十九の農家(とくのうか)」が集まって、ミカンづくりをスタートさせたことからの命名だそうです。
その中の一軒、阿萬さんは、お祖父さん~お父さんと受け継いできた1町3反(130a)の畑を、お母さん、奥さんと3人で管理しています。
「親父と一緒にミカンづくりを始めたのが15年前。野菜もやっとったけど、親父が8年前に亡くなり、自分だけになってミカンづくり一本に絞りました。
身近にすごい技術を持った先輩がいて、その日向夏を見たとき、どんげしたら、こんなミカンができるとやろ!?と、すごい衝撃を受けて、
一緒に勉強会をさせてもらったとです」。
肌の美しい日向夏をつくりたい!味を極めたい!その一心で、先輩に教えを乞い、水やり、肥料の葉面散布など工夫を重ね、
この2~3年は、ようやく納得できる日向夏ができるようになったとか。小学1年生が大学を卒業する歳月の長さ!阿萬さん、これからが正念場ですね!
江戸末期・文政年間、1820年ごろに、宮崎市内(旧赤江町)で偶然発見された柑橘です。明治時代になって「日向夏蜜柑」と名づけられました。
独特の爽やかな香気にはファンも多く、果実としてはもちろん、ジュースやスイーツに加工されて幅広く利用されています。
他の柑橘にはない特長は、黄色い表皮の下の白いフカフカした部分(アルベド)にほんのりした甘みがあること。
アルベドも一緒に食べるのが、地元の皆さんのおすすめだそうです。
5月のゴールデンウィークは、日向夏の花が満開になる季節。日向夏は蜂などの虫が媒介して受粉しますが、さらに受粉率を上げて確実に実らせるためには、
文旦や八朔など違う柑橘の花粉を人の手で受粉させてやる必要があります。しっかりと種が入ることで実のつき具合も良くなりますし、
大きな実に太らせることもできます!花が咲いている1週間から10日ぐらいに手際よく進めなければいけない、時間との勝負!の受粉作業です。
やがて実がつき、夏の陽射しが強くなったら、日焼け防止にネットをかぶせる作業。お盆明けぐらいからは、
大きくなり始めた実に袋を掛ける作業が10月末ぐらいまで続きます。開花から300日で完熟すると言われている日向夏、阿萬さんは十分に完熟するのを待って、
収穫は2月から、と決めているそうです。2~3月は収穫と出荷作業に追われ、ほっとする間もなく剪定作業。
それが終わるとすぐに花の時期が始まる・・・手を抜くことのできない、時間に追われる一年の繰り返しです。
「遠くに遊びに出かけるなんてことはもちろん、睡眠時間を削るしかない時もあるし、受粉や収穫のときはピリピリしとりますよ」。
日向夏ファースト!の生活なんですね~。
「親父が亡くなったとき、上の姉が、あんたが継がんやったら、私がやるよ!と、半ば脅すように尻を叩いてくれたんですが、
まあ、俺が頑張り始めた姿を見て、周囲の人に口コミでウチの日向夏を勧めてくれるようになったんです。
そしたら、美味しいと、リピーターが増え始めて・・・」とはにかむ笑顔の阿萬さん。ただし、徐々に指名買いが増えていることに自信を深めながらも、
手広くPRするつもりは、まだないそう。「全国に日向夏が知られるようになって欲しいという夢はありますが、今は手を広げるより、
自分の手の届く範囲で、ていねいな日向夏づくりを続けていきたいんです」。
より味のいいもの、美しい色合いのもの、少しでも種が少なくて食べやすいもの…いろいろ工夫して、お客さまの好みに合うものをつくっていきたい。
その情熱は、「十九の丘」の3代目としての誇りなのかもしれません。
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