青森りんご農家 青森県・成田さん

豊穣の秋!津軽平野をあざやかに彩るりんご豊穣の秋!津軽平野をあざやかに彩るりんご
野生種のりんごは小さくて、食べてもあまりおいしくなかったとか。現在のように大きくて甘いりんごは、主に17世紀以降アメリカで品種改良されたもので明治4~6年、いくつかの欧米品種が日本にも導入されました。いまや全国の半分以上の生産高を誇る青森県。日本一の「りんご王国」では、明治8年の栽培スタート以来、数多くの品種が育てられています。岩木山が薄っすら雪化粧を始めるころ、赤や黄色に色づいたりんごが紅葉と競うように、津軽平野を、それはそれはあざやかに彩ります!
岩木山・ふじ・つがる…津軽人の心の風景!
岩木山・ふじ・つがる…津軽人の心の風景!
津軽平野に点在するりんご畑。そのどこからでも霊峰・岩木山が望めます。「春には白やピンクのりんごの花が満開になって岩木山を包み、秋は赤や黄に色づいたりんごの実が岩木山を縁取ってるみたいでさぁ。写真を取りにくるカメラマンも多いよ」と自慢するのはりんご農家5代目の成田さん。高台に建つご自宅の庭先から、ゆるやかな傾斜が岩木山に向かって広がる成田さんの畑は、まさに絶好の撮影ポイント!朝に夕に、岩木山を拝みながら、りんごの樹を一本一本見回るのが健康の秘訣!だそうです。代表的な品種「ふじ」は地元(藤崎町)にあった園芸試験場が交配を重ねて育成した品種。また「つがる」はその名が示すように青森県りんご試験場が育成した品種。まさに郷土の誇りの≪りんごと岩木山≫、津軽人の心のど真ん中にある風景なんですね!
冬の間も手間は惜しみません!
冬の剪定作業が、一年の収穫を左右する。
冬の剪定作業が、一年の収穫を左右する。
冬のりんご園地は、どっぷり1メートルほどの雪に埋もれます。真っ白な雪原、厳しい寒さにじっと耐えているようなりんごの樹…でもじつは、この雪、りんごの樹を休ませ、花芽をつける力をぐぐっと蓄えさせてくれるフカフカのベッドの役割も果たしているのです。冬の間、天気のいい日を見計らって行う剪定作業は、美味しいりんごを育てる原点。この剪定によって一年の収穫が左右されると言っても過言ではありません。「どの枝を切り、どの枝を残して伸ばすか、長年の経験と知恵を総動員する」と成田さん。夏の間、なるべく太陽をいっぱい浴びられるように枝と枝の間の空間を広げ、実なりが良くなるような枝を選びます。まっすぐ天に向かって伸びた枝は切り落として、横に伸びそうな枝を選ぶのが基本ルールだとか。もう一つ大事なのが「農業人としてのセンス!」。それはもう、言葉では表現できなくて「やっぱりセンスだとしか 言えない(笑)」のだそうです。
選び抜いた実に、たっぷりの太陽を浴びさせて育てる。
津軽の春は、一気にやってきます! 4月末に桜が咲いて、その1週間~10日後ぐらいにりんごの花が咲き始めます。品種によって咲き出す時期は少しずつ違いますが、5月のゴールデンウィーク頃、津軽平野はりんごの花で、まさに春爛漫!でもすべての花を実らせてしまうと、樹に負担がかかりすぎます。そこで「摘花」という作業をします。ひとつの花芽から咲く7~8個の花のうち、1~2個だけ残して摘み取ってしまいます。最終的には、その中からひとつの実だけを育てるように「摘果(花だけでなく果実のときにも摘むんですよ!)」して仕上げます。夏、秋に向かってりんごの色づきを進めるために、陰をつくる余分な葉をもいだり、鳥よけのネットを張ったり…収穫まで気を抜く暇もありません。「今年はよくできた!と楽しみにしている矢先、台風が来たりするとヤキモキするなあ」とのこと。せっかく実った果実が風で落ちてしまったり、傷がつくと商品価値がなくなってしまうからです。「ごく美味!自家用!」では、ガックリですものね。
真っ赤なりんごの実がびっしり!
たわわに実ったりんごの樹は生命力のシンボル。
たわわに実ったりんごの樹は生命力のシンボル。
早生種の「つがる」の収穫が9月中旬ごろ始まり、晩生種の「王林」や「ふじ」は10月中旬~下旬ごろが収穫時期。家族総出で朝4時・夜明けとともに畑に行き、夕方まで実をもぎ取る毎日が、1ヵ月以上続きます。「いちばん大変だけど、いちばん面白いのが収穫時期!一年分の苦労が報われるんだもんな」と成田さん。収穫箱ひとつが約20kg!このひと月で、いったい何百個の収穫箱を軽トラの荷台に運び、積み上げることでしょうか?体力・気力の勝負ですね!びっしりと赤い実をつけたりんごの樹は、クリスマスツリーのようにも見えます。じつは、クリスマスツリーにぶら下げる赤い玉飾りはりんごがルーツとも言われているんですよ。北欧では、冬枯れの季節に真っ赤な実をたわわにつけるりんごは、豊穣・生命力のシンボルでもあります。そう言えば、ヨーロッパには、こんな古いことわざが…。「一日一個のりんごは医者を遠ざける」…ちょっと試してみたくなりますね!
青森のりんごをご堪能ください!