社外取締役座談会


「持続的に成長できる強い企業」として
進むべき道をより鮮明にしていきます

カゴメは、「持続的に成長できる強い企業」を目指しています。その道筋をより鮮明にし、具体的なアクション
に落とし込むためには様々な視点が欠かせません。カゴメが持続的な成長を果たすために挑戦すべき課題を、
多様な専門性・経験を持つ社外取締役の皆様に外部視点から語っていただきました。

Q.「持続的に成長できる強い企業」の実現に向けて、社外取締役として意識している視点をお聞かせください。

山神
カゴメは、野菜摂取を促進し健康寿命の延伸への貢献を目指すなど、事業そのものがマテリアリティに掲げた社会課題の解決に直結しており、また従業員の働きやすさ・働きがいにも配慮されたとても良い会社だと思います。一方で、ただ良い会社であるだけではなく、社外取締役としては、カゴメへの投資に対するリターンという視点を持ちながら経営をモニタリングし、リターンの不足は指摘していく必要があります。社会へ価値を提供し続けていくためには、利益の成長が大前提です。

佐藤
会社に長くいると、自分たちがしてきたことの延長にある仕事を守るという発想になってしまうことが多くあります。そのため、社外取締役として、非連続な全く異なる視点を投げかけたり、後押ししたりすることがとても重要な役割になります。

荒金
カゴメは、資本コストや資本効率に対する意識のさらなる醸成が望まれていると感じています。食という必要不可欠な領域でビジネスを展開しており、日本でシェアNo.1の商品を持っていることも関係しているのかもしれません。社会に必要とされることや役立つことに真摯に取り組んでいれば企業として生き残れるという意識が根底にあるようにも感じます。しかし、カゴメを取り巻く環境は大きく変わってきており、食や健康は大きな社会課題の一つでもあるため、数多くのプレーヤーが様々なアプローチで事業展開を進めています。「持続的に成長できる強い企業」を目指すためには、カゴメの強みを活かした事業戦略が必要ですが、そのためにはどこに投資をして、どれだけの収益を上げて成長につなげていくのか、各事業部門が資本効率への意識を高めていかなければなりません。「持続的に成長できる強い企業」という目標を、中長期的な収益力を強化できる事業戦略へ具体的に落とし込んでいくために、多面的な視点を伝えていくことが私たちの責務であると考え、経営に対して提言を行っています。

Q.2023年度は国際事業の成長により、過去最高の業績を達成しました。社外の視点からカゴメの国際事業について今後の成長見込み、課題をどのように見ていますか。

遠藤
2023年11月にインドの子会社「Kagome Foods India Pvt. Ltd(. 以下、KFI)」を視察しました。KFIは、加工用トマトの栽培から関与し、製造したピザソースを大手ピザチェーンなどに販売しており、カゴメが得意とするバリューチェーンを築きつつあります。これから成長が期待できるインド事業を直接視察できたことで、国際事業の成長可能性を肌感覚で理解することができました。

佐藤
国や地域によって食文化や抱える課題は異なっています。インドでは加工用トマトの色調に課題があることから、カゴメは種子事業を行うインド子会社「United Genetics India Pvt Ltd.」でグローバルスタンダード水準の色の赤いトマトの品種改良を進めています。それぞれの地域の食生活や課題に合ったソリューションを提供することにより、国際事業の成長余地は大きいと考えています。

荒金
国や地域によって市場の特徴や課題があります。それに対し、子会社だけで提供できる価値もあれば、カゴメグループの知見や資源を活用することによって実現できることも多いと考えます。2023年10月には国際事業本部を「カゴメ・フード・インターナショナルカンパニー」に改組しました。社内カンパニー化することで権限の委譲を進め、グローバル戦略を加速させています。またカンパニー内での連携を密にすることによって、各個社単位ではなく、カゴメグループとしてのグローバルビジネス戦略がさらに進展することを期待しています。

山神
海外拠点の視察を通じて、国際事業が今日の成長に至るまでの経緯や、それにより培われた知見を直接伺う機会がありました。カゴメグループの中では、そのような知見の共有がこれまで必ずしも十分ではなかったように見えます。カンパニーの知見は、国内事業と連携して互いに成長するためにも、またカゴメグループとして海外市場を視野に入れた戦略を検討するためにも、貴重な情報です。このような観点から、カンパニーがその独立性を活かしつつも、そこで培われたグローバルビジネス戦略の知見によりカゴメグループ全体に刺激を与えることができるよう、人材や知見の交流という面においてはグループに向けて開かれた存在であることもまた大切なのではないかと思います。

Q.グループ基盤の強化として「挑戦する風土」を掲げています。組織、人の観点からカゴメをどのように見られていますか。

遠藤
山口社長が就任して以来、心理的安全性を確保しフラットに発言できる組織へ変革していかなければならないという危機意識のもと、組織風土の変革に取り組み、その効果が着実に出てきていることを体感しています。硬直的な縦割り組織や上下関係などを打破し、全社で共通の目標に向かって、一人ひとりの能力を最大限に活かしていかなければイノベーションを起こすことができないというメッセージを社長が発信し続けているからだと思います。

佐藤
今のカゴメは、従業員の協調性が高く、フラットな組織という印象を持っています。社内では、役職ではなく、さん付けで呼ぶ文化も浸透しています。心理的安全性の意味合いは正しく理解する必要がありますが、山口社長が心理的安全性の浸透に注力したことにより、どんなことでも提案できる、たとえ失敗してもそれを糧にできる、そうした組織風土が醸成されつつあるのではないでしょうか。

山神
私も心理的安全性の意識が従業員に浸透し始めていることを実感しています。心理的安全性を確保することで、従業員一人ひとりの多様な考えや経験を活かし挑戦する風土を醸成します。これをイノベーションの創出につなげていくためには、特に管理職において、このような心理的安全性確保の目的を理解し、そのための行動変容ができるよう、外部の知見も取り入れつつ気づきの機会を提供し続けることが大切です。また今後に向けては、組織風土づくりを評価の要素に取り入れることも重要になると思います。

遠藤
経営戦略の推進に即した人材開発や、全社戦略の進捗を従業員個人の評価にまで落とし込める評価制度を構築していくことは、非常に時間がかかり、難しいテーマだと思います。カゴメの人材戦略はまだ多くの課題が残されていますが、方向性は間違っておらず、着実に前進していると思います。

荒金
国内の既存事業に従事するカゴメの従業員は、専門性を高めながらマネジメントスキルも習得しており、現場力は高いと感じています。一方、社会環境が大きく変わっていく中で、これからは国内でも新しいカゴメの姿を考えなければなりません。既存事業の発展・拡大だけではなく、世の中がどういう方向に向かっているかを考え、一人ひとりの行動変容によって、今までにやったことがない挑戦や、ビジネスモデルの変革やポートフォリオの変化を促すイノベーションの創出につなげていくことが肝要だと考えます。

遠藤
今後、国際事業の成長を加速させていくには、経営・現場ともに相応のスキルやリーダーシップが必要です。国内市場との違いは大きく、国や地域でも求められるスキルが異なることから、どのような人材が不足しているのか、どのように育成していくのか、成果につなげていくにはどうしたらいいのかを継続して議論していくことが必要です。

Q.ビジョンとして「トマトの会社から、野菜の会社に」を掲げています。「野菜の会社」に進化していくカゴメへの期待や課題をお聞かせください。

佐藤
2025年までの長期ビジョン「トマトの会社から、野菜の会社に」を掲げた2016年以前のカゴメは、トマトケチャップやトマトジュースなどのトマトを中心とした事業領域のイメージでしたが、「野菜の会社」を標榜したことで、対象となる事業領域が広がっています。拡大し続ける事業領域と、カゴメの特徴(商品開発だけでなく、育種・新品種開発から栽培、加工、野菜の価値を伝える活動まで、川上から川下までの全ての工程が含まれている)をうまく組み合わせていくことが今後の成長につながると考えます。

遠藤
カゴメは健康寿命の延伸に資する会社を目指しています。1日の野菜摂取量350gが推奨される中、現在の日本人の平均摂取量は300gに満たない水準です。カゴメはそこに貢献していくべく、「野菜をとろうキャンペーン」やベジチェックRなどを展開することで、広く生活者に、野菜を摂取することが健康の増進にいかに役立つかという啓発活動を続けています。こうした活動を重ねていく中で、国民の野菜摂取に対する理解を深めるための旗振り役として、「野菜の会社」の明確な評価基準を作ろうとしています。現時点では、その活動はまだ日本にとどまっている印象ですが、今後、国や地域の特性を見極めた上で、海外でも野菜摂取を推進する役割を担うことで、成長につなげていくことができると感じています。

荒金
「野菜の会社」になるというビジョンを掲げたのは、より大きな市場で成長していく、より多くの価値を提供していくという意思の表れと理解しています。しかし、それを事業に落とし込んだ、カゴメの強みを活かした成長戦略までは描き 切れていないように感じます。現状は試行錯誤を繰り返しながら、成長の方向性を模索している段階と捉えています。「野菜の会社」としての説得力のある事業ポートフォリオを具体的に描き、実現していくことで、成長が伴った「野菜の会社」へ進化することにつながります。また、気候変動や人口問題などグロールでの食の課題解決が求められる中、「野菜のカゴメ」が果たせる役割はますます大きくなっていくと思っています。

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