CFO/CROメッセージ


厳しい経営局面だからこそ、財務戦略の重要性が高まっています。
企業価値向上のために適切な資金調達と投資を実行します。

① 2022年の振り返り

売上収益は、前年度比+8.4%となりました。国際事業において、コロナの鎮静化に伴いトマト加工品を中心とした需要が回復基調であったこと、コスト上昇分の販売価格への転嫁が進められたこと、円安により邦貨への換算額が増加したことなどによります。
事業利益は、前年度比△9.4%となりました。国内加工食品事業において、原材料やエネルギーの価格高騰は、当初の想定を上回るものでした。同事業の事業利益は悪化しましたが、国際事業の事業利益が売上収益同様増加しました。
CFOに就任してからの1年間、急激な事業環境の変化に対応するため、マネジメント・関連部門・国内外のグループ会社と連携し、各事業、子会社のタイムリーな経営成績と財政状態の把握及びその対応に努めました。増収減益という厳しい結果になりましたが、2022年度の配当は、公表した予想通り実施することができました。
財政状況は、信用格付の評価、財務指標などから、その健全性が保たれていると考えています。資本効率は、2021年度から経営指標にROICによる管理を導入し、その向上への取り組みを進めています。しかしながら、2022年度は、同指標は前年度比1.6point悪化しました。これは、利益の減少に加えて、棚卸資産が前年度末比+22.1%と大きく増加したことが主因です。棚卸資産の増加は、原材料価格の上昇と数量の確保によるものです。当社は、世界的に原材料需給が逼迫する中で、安定的な調達量を確保することを第一に考えました。ROICの指標には悪影響となりましたが、これは、当社が長年築いてきたグローバルな調達ネットワーク力により、安定的に原料を調達できていることの結果ともいえます。単に数値の良し悪しだけではなく、経営環境における優先順位とその合理性の検証、またそれらの説明責任を果たしていきます。

② 成長投資とそれを支える財務基盤

社長の山口のメッセージにもある通り、第3次中期経営計画における「ありたい姿」に変更はありません。定量目標値については、経営環境の激変を受けその見直しが必要ですが、事業成長には、これまで以上に、第3次中期経営計画の基本戦略を推し進めることが重要だと考えています。
特に事業利益率の改善は急務です。既存領域における利益率の回復に加えて、M&Aなどによるインオーガニック成長がより重要となります。2022年に発表した第3次中期経営計画期間中のインオーガニック成長のための投資は、300~500億円と従来にない規模でした。現時点にて、この投資枠の変更は予定していません。事業成長を加速するための積極的な投資は不可欠であることに加えて、それを支える財務基盤は毀損していないという認識によるためです。2022年度末の当社の自己資本比率は52.8%です。
なお、2022年度中にインオーガニック成長投資のための自社株買いも完了しており、2022年度末の自己株式は225億円となります。
厳しい事業環境だからこそ、将来の成長に向けた投資を進めていくことが重要だと考えています。同時に、それを支える財務基盤を維持していくことが重要であり、その実現に全力を尽くします。

③ 健全な事業成長のためのガバナンスの推進

健全な事業成長のためには、適切な財務経理ガバナンスが大切になります。これは、品質と並びカゴメの事業の礎となっています。こうしたことは、当社の企業理念の一つである「開かれた企業」をその根幹としています。良いことも悪いことも、ステークホルダーの皆様に対してタイムリーに分かりやすく発信するという企業風土は、当社の財務経理ガバナンスを強く支える基盤になっています。今後も財務経理ガバナンスの維持・向上に努めてまいります。

2022年度 経営成績の分析

① 売上収益

売上収益は、2,056億18百万円となり、前連結会計年度の1,896億52百万円に比べ、159億65百万円の増加(8.4%増)となりました。
国内加工食品事業は、主力の野菜飲料が下期に好調だったことや、食品他カテゴリーにおける外食需要の回復などにより、増収となりました。国際事業においても、トマト一次加工の需要増や、米国のフードサービス企業向け販売が堅調に推移したほか、価格改定の効果や円安の影響もあり、増収となりました。

② 事業利益

事業利益は、128億8百万円となり、前連結会計年度の141億38百万円に比べ、13億29百万円の減少(9.4%減)となりました。
国際事業は前述のトマト一次加工の需要増などで増益となりましたが、国内加工食品事業において、価格改定を上回る原材料価格の高騰や販売促進費の増加などがあり、減益となりました。

③ 営業利益

営業利益は、127億57百万円となり、前連結会計年度の140億10百万円に比べ、12億53百万円の減少(8.9%減)となりました。
事業利益の減益に伴い減益となりました。

④ 親会社の所有者に帰属する当期利益

親会社の所有者に帰属する当期利益は、91億16百万円となり、前連結会計年度の97億63百万円に比べ6億47百万円の減少(6.6%減)となりました。
低税率の海外子会社の増益や各国税制優遇措置などにより実効税率が低下し、営業利益と比べて減益幅は縮小しました。

以上により、当連結会計年度の売上収益は、前期比8.4%増の2,056億18百万円、事業利益は前期比9.4%減の128億8百万円、営業利益は前期比8.9%減の127億57百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比6.6%減の91億16百万円となりました。

2022年度 財務分析

当連結会計年度末は、資産合計につきましては、前期末に比べ101億63百万円増加いたしました。
流動資産につきましては、前期末に比べ56億77百万円増加いたしました。
これは、主に「現金及び現金同等物」が、固定資産の取得や、自己株式の取得などにより98億40百万円減少したものの、原材料価格の高騰に備えた在庫の積み増しにより「棚卸資産」が104億15百万円、「営業債権及びその他の債権」が38億29百万円増加したことによります。
非流動資産につきましては、前期末に比べ44億86百万円増加いたしました。
これは主に、海外子会社における製造設備の更新などにより「有形固定資産」が15億85百万円増加、当社子会社であるKAGOME INC.(米国)の持分法適用会社であるIngomar Packing Company, LLCの利益が増加したことなどにより「持分法で会計処理されている投資」が12億67百万円増加、主に円安によるデリバティブ資産の時価増加や、プラントベースフードのスタートアップ企業である株式会社TWOへの出資などにより「その他の金融資産」が9億90百万円増加したことによります。
負債につきましては、前期末に比べ79億13百万円増加いたしました。
これは、主に運転資金の増加に伴い「借入金」が81億68百万円増加したことによります。
資本につきましては、前期末に比べ22億49百万円増加いたしました。これは、主に「自己株式」の取得及び処分により77億32百万円減少、「利益剰余金」が配当により32億77百万円減少した一方で、「親会社の所有者に帰属する当期利益」により91億16百万円増加、「その他の資本の構成要素」が主に主要通貨に対する円安が進行したことにより27億28百万円増加したことによります。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は52.8%、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,383円50銭となりました。

2022年度 キャッシュ・フロー分析

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、213億90百万円となり、前期末に比べ98億40百万円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、46億35百万円の純収入(前期は147億96百万円の純収入)となりました。この主要因は、税引前利益が125億57百万円となったこと、減価償却費及び償却費が82億82百万円となったこと(以上、キャッシュの純収入)、棚卸資産の増加により75億75百万円、法人所得税等の支払いにより42億60百万円支出したこと(以上、キャッシュの純支出)によります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、94億57百万円の純支出(前期は141億62百万円の純支出)となりました。この主要因は、前述の製造設備の更新などによる、有形固定資産及び無形資産の取得(投資不動産含む)により98億78百万円支出(前期は148億23百万円支出)したことによります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、55億12百万円の純支出(前期は276億52百万円の純支出)となりました。この主要因は、先述の通り短期借入金の増加により63億19百万円の収入がありましたが、自己株式の純増加により77億86百万円、配当金の支払いにより32億78百万円、それぞれ支出があったことによります。

第3次中期経営計画の財務戦略

① 財務戦略の基本方針

当社グループは、安定した財務体質のもと、成長投資と利益還元を両立することを財務戦略の基本方針としています。持続的な成長を支え、大きな変化に耐えうるには、財務基盤の安定維持が前提となります。2022年度末の自己資本比率は52.8%、信用格付はシングルAを維持しており、財務基盤は安定しています。しかしながら、世界的なトマト原材料不足や原材料費をはじめとする各種コストの高騰など、当社グループを取り巻く事業環境は厳しさを増しています。
足元の環境下、当社はお客様へ商品を安定供給するための戦略的な原材料在庫の積み増し、コスト抑制や販売価格の見直しなどの取り組みを進めています。この過程において、今後、一時的な業績の落ち込みや在庫を含めた必要運転資本の増加による資金需要への対応は、基本的に金融機関からの借入金で賄いつつ、「デジタル特典付き社債」などの新しい資金調達手法も取り入れます。
そのため、第3次中期経営計画期間においては、当社グループにおける財務基盤の安定性の目安である自己資本比率50%以上、信用格付シングルAの維持が難しい局面が一時的に発生することも予想されます。当社は、直面している厳しい環境を打開するために収益性の早期回復はもちろん、M&Aを含むインオーガニック成長を実現していくことが極めて重要と考えています。
第3次中期経営計画期間のインオーガニック成長投資は、300~500億円を想定していますが、自己株式や金融機関のコミットメントライン・当座貸越枠によりその準備資金を確保しています。オーガニック領域における収益性回復とインオーガニック成長の達成により、一時的に落ち込む財務基盤をより安定した盤石なものとし、中長期的な成長につなげていきます。なお、財務基盤の安定とともに、グループ全社でのROIC管理や投資管理の徹底など、資本効率を重視した成長を図っていきます。 加えて、第3次中期経営計画においては、配当及び自社株買いを含め総還元性向が40%以上となるよう安定的・継続的に株主還元を行う予定です。また、第3次中期経営計画期間における配当計画については、38円以上を安定的に配当することとしています。

② 効率的な投資を実行するための体制

設備や事業への投資においては、社内専門部署の選抜メンバーで構成される投資委員会により、各部署から起案された投資について採算性やリスク評価を踏まえた審査を経て決定されており、投資後のモニタリングを実施し、その効果を確認しています。同委員会の確認を受けた議案が経営会議や取締役会へ上程され、正式な審議を受けています。

投資のモニタリング体制
●執行後5年間を対象
●年1回の取締役会・経営会議にて報告

③ 資本効率を高める取り組み

当社は、利益を獲得するだけではなく、投下した資本の適切性や効率性を測定するため、2021年度よりカゴメROIC※による管理を導入しています。カゴメROICは、獲得したEBITDAに対して投下した資本の効率性を測定し、貸借対照表項目を各要素に分解することで、改善すべき課題を明確にすることを目的としています。
2022年度の目標と実績については、以下の表の通りです。
2022年度は、国際事業の売上収益が大幅に増加した一方、原料・エネルギー価格等の高騰により国内加工食品事業の利益が減少した結果、EBITDAマージンが減少しました。また、棚卸資産が大幅に増加したことにより、投下資本回転日数が増加しました。これは、原材料の高騰など外部環境の変化とそれに伴う対策として在庫確保を戦略的に進めたことによります。その結果、2022年度のROICは、目標から1.1point悪化し、11.5%となりました。
※ カゴメROIC:EBITDA÷投下資本

(ROICツリー展開)
当社においては、ROICツリーを資本効率向上のためのコントロールドライバーとして活用しています。ROICツリーの展開により、ROICからブレイクダウンしたBS指標を各部門のKPIに落とし込むことで、これに基づくアクションプランを各社・各部門にて設定し、自律的にPDCAを回すことで指標の改善を図っています。その上で、各社・各部門にて効率を意識した改善活動を行い、最適なサプライチェーン体制の構築をはじめとした取り組みを進めます。

資金調達×成長 双方の実現

2023年は新しい資金調達手法に挑戦し、デジタル特典付き社債「愛称:カゴメ日本の野菜で健康応援債」を10億円発行しました。このデジタル特典付き社債は、ブロックチェーン技術によるみずほフィナンシャルホールディングスのデジタルエンゲージメントプラットフォームを通して売買され、従来の社債とは異なる特徴を有しています。一口当たりの購入単価が低いこと、社債発行者様の情報についてご本人同意の元に発行体が入手できること、カゴメ商品を特典として提供できることなどが特徴です。
現在、当社は約19万人の“ファン株主”の皆様に支えていただいており、本社債購入者様にも“ファン貸主”になって頂きたいと考えています。金融商品を通じて当社商品のご理解を深めていただき、商品を手に取っていただく、そういった関係を作っていきたいと考えています。

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