CFO/CROメッセージ


Q1 2023年度の業績の振り返りをお願いします。

売上収益は、前年度比+9.3%となりました。全ての事業にて増収となりましたが、特に国際事業において、外食需要の高まりからトマト加工品を中心とした需要が好調であったこと、コスト上昇分の販売価格への転嫁が進められたこと、円安により邦貨への換算額が増加したことなどが要因となりました。
事業利益は、前年度比+52.1%となりました。国内加工食品事業において、原材料やエネルギーの価格高騰などによる大幅なコスト上昇があったものの、価格改定に加え、原価低減に積極的に取り組んだことにより、当初見込んでいた前年度からの減益幅を縮めることができました。また、国際事業の事業利益が売上収益同様、大きく増加しました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年度比+14.4%となりました。事業利益からの減少要因は、国内農事業において、固定資産の減損損失を計上したことによります。国内農事業は販売価格が市況の影響を大きく受ける構造です。今後のコスト上昇に対し、それを販売価格に十分に反映できるかが不透明であると判断したことが主な理由です。
事業環境の急激な変化がありましたが、2023年度は増収増益となり、株主様への配当も当初の目標を上回る形で実施することができました。また、こうした業績を背景に、ROIC※は13.2%と1.7point改善しました。これは、大幅な利益の増加が主因です。他方、投下資本においては、棚卸資産が前年度末比+176億円と大きく増加しました。これは、原材料価格の上昇などによるものです。原材料価格の上昇に対しては、販売価格への反映と原価低減努力により、投下資本と利益の循環が健全に保たれていると考えています。
※ ROIC :カゴメROICのこと。EBITDA÷投下資本で算出。

Q2 財務戦略について第3次中期経営計画前半の振り返りをお願いします。

当社グループは、成長投資と株主還元を両立することを財務戦略の基本方針としています。持続的な成長を支え、大きな変化に耐えるためには、財務基盤の安定維持が重要だと考えています。
第3次中期経営計画の前半である2022~2023年度は、事業環境が大きく変化する中で、業績面では売上収益・事業利益とも当初の中期経営計画目標を上回ることができました。これは、国際事業が想定を上回るスピードで業績を伸ばしたことによるものです。他方、国内加工食品事業においては原材料などの急激なコスト上昇に対して販売価格の見直しを図りました。当初は販売数量の減少がありましたが、2023年第4四半期では概ね前年度水準まで販売数量が回復しています。
同期間におけるキャッシュ・フローは右記の通りです。

●営業キャッシュ・フロー
営業キャッシュ・フローは92億円の純収入となりました。利益は順調に推移したものの、棚卸資産の増加によるキャッシュの減少が2年間で223億円あったことが主な要因です。

●投資キャッシュ・フロー
投資キャッシュ・フローは155億円の純支出となりました。これは営業キャッシュ・フロー悪化への対応として、不要不急の設備投資を控えたことなどによります。

●財務キャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フローは101億円の純収入となりました。これは主に2024年度以降の資金需要に対応するために、借入を行ったことによります。
財務指標は、自己資本比率※は49.8%、信用格付はシングルAとなっています。自己資本比率は、第3次中期経営計画の方針を若干下回りましたが、引き続き財務基盤は安定していると考えています。資本効率はROEが8.3%となりました。これは国内農事業における固定資産の減損による一時的な損失が影響しており、それを除くと目標とする9%の水準を達成しています。また株主還元は、前年度より1株当たり3円の増配を行うことができました。
※ 自己資本比率 :親会社所有者帰属持分比率

Q3 第3次中期経営計画期間後半における財務目標について教えてください。

第3次中期経営計画期間の後半となる2024~2025年度は、「国内事業の利益回復」「国際事業の成長加速」を基本方針とし、売上収益3,000億円、事業利益240億円を目標とします。これは2022年度に掲げた当初の目標を大きく上回るものとなります。
特に、インオーガニック成長については、2024年1月に持分法適用関連会社であるIngomarの出資持分を追加取得し、連結子会社化しました。これにより売上収益にて約500億円程度の増分を見込んでいます。なお、同社持分の追加取得約360億円は当社の事業投資として過去最大となります。本投資に必要となる資金は、一時的には借入金にて調達します。その結果、自己資本比率は50%を下回りますが、同社からの利益や自己株式の処分により第3次中期経営計画期間内に同借入金の返済を予定しており、50%を回復する見込みです。
これらを踏まえ 2025年度における財務指標は、基本方針を上回る見込みです。財務基盤の安定を維持するとともに資本効率を重視した成長を図ります。また、2024年度の配当は1株当たり10円の記念配当を加えた52円を見込むなど、中期経営計画期間における総還元性向40%以上を堅持しつつ、事業成長を反映した利益還元を実施していきます。

Q4 ROIC管理に取り組む意義について教えてください

当社は資本効率を高める取り組みとして、全社でのROIC管理を行っており、企業価値最大化を図る上でROEの向上を目指しています。
当社の財務構造において、ROE9%以上を達成するためには、ROIC11~12%を達成する必要があります。その観点から、事業別に、目指すべきROIC目標を設定し、KPIの設定と達成に向けたPDCAが図られるように仕組み化しています。
今後もこのPDCAを継続・進化させ、従業員一人ひとりの意識・行動につなげることで、資本効率の向上、企業価値の最大化を図っていきます。

Q5 リスクマネジメントに対するアプローチについて教えてください。

第3次中期経営計画期間におけるアクションの一つとして、当社は「グループ経営基盤の強化と挑戦する風土の醸成」を掲げています。リスクマネジメントは、この経営基盤を支える柱になると考えています。
当社のリスクマネジメントに対する取り組みは、会社の重点リスク課題から各組織のリスク課題までを、経営層から従業員一人ひとりに至るまで、それぞれが我がこととして取り組めるよう仕組み化しています。
先に掲げた定量目標を達成するためには、環境変化により生じる多様なリスクを、それぞれの立場で的確に把握し、適切な対応を図ることが重要だと考えています。

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