
Agritechグループ マーケティングストラテジスト
AIが農業の未来を変える トマト生産者に寄り添って
AIを活用して加工用トマトの農場管理を支援する、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope(クロップスコープ)」。その本格的なサービスがついに開始されます。2015年からカゴメとともに研究開発を進めてきたNECの入江さんの目に、「農業×AI」の未来はどう見えているのでしょうか。 CropScopeは、加工用トマトの栽培に関わる加工会社や農家を主なターゲットとした農業支援のプラットフォームです。畑に設置したセンサーや衛星写真のデータに基づき、農地の水分状態や作物の生育状態を可視化して一元管理することで、毎日の業務をサポートします。農地に出向かず作物や畑の状態がわかるので、少ない人手で広大な農地を管理することも可能です。水や肥料の最適な量や投入時期のアドバイスを提供しているエンジンとなるAIには、それぞれの土地の気候や土壌を知り尽くした「匠の農家」の知見を多く取り込んでいます。これにより、加工トマト農家は栽培技術の巧拙に関わらず、収穫量の安定化と栽培コストの低減が期待できようになります。 近年は、日本でも異常気象が続いていますよね。北米やヨーロッパでも、大規模な干ばつによりトマトの生産にも大きく影響しています。こうした背景もあり、農家にとっては「より少ない資源の投入で、いかに多くの収穫を得るか」が切実な課題となっています。 当社の技術が支援しているのは、農業の現場だけではありません。この9月からは、子どもたちに野菜をおいしく楽しく食べてもらうためにカゴメと開発した「AI(愛)のプリン」の販売を開始します。カゴメの調査データとNECが収集した50万通りのレシピから、子どもが苦手な野菜をおいしく食べられる「素材の組み合わせ」をAIが抽出。さらにプリンの匠であるシェフの知恵をお借りして、「ほうれんそうとココナッツ」「とうもろこしとヨーグルト」など6種類のおいしいプリンができあがりました。農地の状況を可視化 営農の省力化を実現
現在ヨーロッパをはじめとするトマト加工会社に向けて、CropScopeサービスの提供を行っております。カスタマーサクセスチームが毎日の利用履歴を見ながら、センサーの設置場所を細かく変えたり、ユーザーがあまり使っていない機能の利便性について紹介したり、ハード/ソフト両面のサポートを続けた結果、ほぼ全てのトライアルユーザーに継続的にご利用いただいています。こうした実績の上に、22年6月にはNECとカゴメの合弁会社「DXAS Agricultural Technology」をポルトガルに設立することを発表しました。今後は提供地域を拡げてより多くの方々にCropScopeを活用した営農支援を提供していきます。異常気象、水資源の枯渇……農業の危機にAIができること
現在進めている実証実験のひとつが、AI営農アドバイスを活用し、最適な水肥料投入量を算出することにより水や肥料の投入量を節約する取り組みに挑戦しています。こうした挑戦を続けることで働く人の負担を減らしつつ、収穫効率を上げ、水資源を節約する。生産者、消費者、環境にやさしいそんな農業の未来を実現していけたらと思います。AIが見つけた意外な組み合わせ 苦手をおいしく、「AI(愛)のプリン」
このプリンのようなきっかけから子どもが野菜本来のおいしさに気づき、苦手意識をなくしてくれれば、家庭や学校での食品ロスを減らすことにも役立つでしょう。私たちの技術とカゴメの知見を生かして、農業や野菜の持つ「潜在能力」をもっと引き出していければと考えています。